2度目。ーー帰国命令が出た皆様と見送る私。・5
お待たせしました。
「アレジ」
「はい」
「帰国する際、お父様にお手紙をお願いしたいの。頼める?」
「かしこまりました」
「えー。お嬢、なんで俺じゃなくてアレジに頼んだのー」
アリシャの所から戻って来て早速手紙を認めた私は、アレジに手紙を託す。途端にガリアから不満の声が上がった。
「この前ジュストの件をガリアに調べてもらったから、アレジにお願いしたのよ」
ガリアの抗議に説明すると不満そうではあるけれど、それ以上は何も言わなかった。そんなわけでアレジに手紙を託して一段落ついたところで、私はふぅっと息をついた。
「温泉入りたい」
「お嬢っ! 何それ!」
私の独り言にすかさずガリアが食いつく。
「前世の日本はね。温泉大国って言われていて。土を掘ればお湯が湧き出す国だったの。といっても人力で土をちょっと掘っただけじゃ無理だったけど」
「えっ。お湯って水を沸かさないと無理じゃん! なんで土を掘って湧くのさ」
まぁそうなるよねぇ。さて、どう説明しようかなぁ……。あ、そうだわ。
「ガリアは火山は知ってるでしょ?」
「ベラ火山なら」
タータント国の近くにある国の火山ね。
「その火山ってどうして火山って言うのか知ってる?」
「確か山の中に火を溜め込んでいて、それが一気に溢れ出すとかなんとか」
「そうそう。日本では、その溜め込まれた火をマグマって呼んでいたの。そのマグマが山の天辺から全てが噴き出すわけじゃないのよ。噴き出さなかったマグマが山の中のずっとずっと奥深くにあって。マグマの上には土があって。沢山の土でマグマを抑えていた。そこに雨が降って土に水が染み込んだら?」
「マグマとやらで染み込んだ水が温まる?」
「そう。それが土の下に溜まったから。掘ればお湯が湧き出すというわけ」
「成る程なぁ。で、そのオンセンがなんなの?」
「自然のお湯に浸かるとね、腰痛に効くとか肌がツルツルになるとか。そういう効果があったのよ。尤も、今の私は温泉入って疲れた身体を労ってあげたいのよ」
「それは疲労にも効果がある、と?」
黙って私とガリアのやり取りを聞いていたクルスが横から質問をしてきた。
「そう言われているわね」
「自然のお湯にそんな力が……」
「そうね。日本は物凄く昔、湯治って言葉があったわ」
「トウジ?」
「お湯に浸かって疲れや病気を治すって意味の言葉よ」
「病気も治すお湯⁉︎」
「お風呂に入ると身体が温まるでしょう? そうすると全身が温かくなるから冷えていた身体が温まる。そうなると身体が軽くなった感覚がするから。結果的に体調が良くなるわけ」
自然のお湯の効果の凄さは異世界でもすごいと思われるものでした。そこから何故かベラ火山の話になって。
いつの間にか。
「よし、お嬢。俺が必ずベラ火山にオンセンがあるか調べて来る!」
とガリアが息巻いていた。調べるのは良いけど、いつ行くのよ。行く日なんて無いわ。そうは思っても私のためを思っての発言なので、気持ちは受け取っておこう。
「楽しみに待っているわ」
そんな私の励ましがあったから、なのか。ガリアが温泉を求めてしまったからなのか。数年以内にベラ火山まで足を運ぶ。という夢みたいな現実になるなど、私は知らなかった。
ちなみにもちろん温泉をたっぷりと堪能しました。
お読み頂きましてありがとうございました。




