表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
成る程。では、お互い不干渉といきましょう。  作者: 夏月 海桜
2度目の人生を送る事の原因と意味と結果。
322/400

2度目。ーー帰国命令が出た皆様と見送る私。・3

その知らせを齎したのは、ジュストだった。


「ケイトリン」


「どうかした?」


「帰国命令が下った」


ロズベルさんが見つかった今、有るだろう事は分かっていたから動揺はしない。


「いつまでに?」


「こちらを1ヶ月以内に出発しろ、と」


「妥当ね。学園を退学する手続きにロズベルさんを受け入れる準備や連れ帰る準備などやる事はあるもの」


「ケイトリンは……」


「私は夏期休暇で一旦帰国するわ。お父様に伯父様の話もしたいし、この魔法学園は3年制。更に上を目指すなら上学園を目指さなくてはならないし」


シオン帝国の魔法学園は基本が3年制。つまり私達は3年目で転入してこのまま卒園を迎える。たった1年だ。更に上を目指すならこの魔法学園内にある上学園を目指さなくてはならない。日本で言うなら学園が高校なら上学園は大学といったところ。


上学園を目指す者は夏期休暇で保護者と話し合い、保護者の許可を得て夏期休暇明けの後半期で上学園に向けた試験勉強をする必要がある。合格した者だけが上学園に入れる。まぁ当たり前の事だけど。


「上学園を目指すのか?」


「何とも言えないわ。私は辺境伯当主を目指しているもの。そのために上学園の勉強が必要だ、と私が判断すれば行くかもしれないし、不要なら学園を卒園して帰国するし。どのみち卒園まではこちらに居るわ。伯父様が気になるもの」


「そうか。お前……あの男はどうするんだ?」


「ドミトラル様のこと? きちんと話し合うわ。私達、簡単に切れない絆を持っているもの」


「そうか」


ジュストは何か言いたそうな顔をしているので、促してみたけれど、首を左右に振られて話を終えた。……一体何だったのかしら。寮の外で話した私は寮の部屋に戻り、デボラに帰国命令の件を話す。


「やはり出ましたか」


「そうね。後は伯父様にロズベルさんがひと月以内に帰国する事を伝えないとね。クルスお願い出来る?」


「はっ」


姿を見せず声だけ。でもクルスの気配はもうない。あ、そうだ。ガリアとアレジも呼ぼう。


「ガリア・アレジ」


「はいはーい、お嬢」


「お嬢、なんですか?」


はいはーいと手を上げてガリアが現れ、のんびりとアレジが問いかけてくる。


「あなた達、皆の護衛を頼むわ」


「それって俺たちに帰国命令が出た人達を守れって?」


私の命にガリアが唇を尖らせて確認してくるので頷けば、アレジがちょっと眉間に皺を寄せて「必要ないと思いますけど」と断ってくる。……あなた達、影なのに随分と私の前では表情豊かね? しかも、私を主人と認めたんじゃなかったかしら?


「必要ないとは思うけれど、万が一を考えるとお願いしたいのよ。特に伯父様に改めて記憶を植え付けられるロズベルさんと、そんなロズベルさんを見守るマリベルさんを」


「あー、まぁ護衛も何も居ない女性2人を守るためなのは分かりますけど。ロズベルってお嬢に対して酷い態度だったわけでしょ? それなのに守るの?」


ガリアが不承不承という顔で確認してくる。


「彼女がきちんと罪悪感を持って生きることが、一番の償いだと思うのよ。寧ろ何かあって生きることを諦められたらそっちの方が私にとって痛手だわ」


「そう言われるとそうかもしれませんけど」


不満だ、と顔中にアリアリと浮かべてアレジが頷く。……あなた達、結構私の事が好きだったのね? 気付かなくてごめん。そんなに不満丸出しでロズベルさんを守るのが嫌って私に対する言動を知っているから、だものね。そこまで好かれている事を知らなかったわ。


「お願いよ。ちゃんと償わせる事があの子にも私を含めた前回の記憶を持つ人達にとっても良いの」


2人は「お嬢の頼みじゃ仕方ないかー」とか「お嬢がお願いって言ってくるなら聞きますよ」とか言っているけど、その表情は口元が嬉しそうに緩んでて、全然嫌々に見えない。チラッとデボラを見れば、「お嬢様にお願いされるなんて、頼りにされるなんて、嬉しそうね」と突っつかれている。そんな事ないし、とか言っているけど、あれか? ツンデレか?


「じゃあよろしくね」


敢えて突っ込まずに2人に了承させた。あくまでも渋々といった態で受け入れているから、もう何も言うまい。そうしているうちにクルスが戻って来た。


「どうしたの?」


クルスが少しだけピリッとした空気感を醸し出しているから尋ねれば、息をついてから口を開いた。


「どうやら普通の記憶改竄魔法と違うらしく、手間取っているようで……」


「間に合わない可能性がある、ということ?」


「……はい」


「そう。わかったわ」


正直、魔法については何の力にもなれない私。伯父様がそう仰るという事は難しい魔法なのかもしれない。記憶改竄魔法が使えるなら記憶を作った魔法を植え付けられるのかもしれない、なんて気軽に考えていた自分の甘さを知る。それでも「難しいならやめてください」とは言えない。


最後の最後まで、ロズベルさんが出立するギリギリまで伯父様には頑張って欲しいと身勝手だけど思ってしまっていた。そして。ドミーとタニアさんの兄弟は、国王陛下から帰国命令が出たのかしら。ジュストの方はヴィジェスト殿下の紋章の封蝋が押された封筒だったから、ヴィジェスト殿下からの帰国命令だというのは理解出来た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ