2度目。ーー現実を知るということは、悔やむだけでなく省みること。・6
「分かった。だが、大掛かりな魔法故に直ぐには不可能だ。今日のところは帰っていい。悪いが魔法を使用するまでは、監視は解けないから許せよ」
魔術師団長がそう言えば、2人は了承してそれからぎこちない空気でありながらも、帰って行く。きちんと皇宮から馬車が出るはずなので無事に帰れるだろう。
「さて。待たせたな。あの2人について、こちらでの処遇は終わった」
魔術師団長の言葉に私は気になっていたことを尋ねた。
「シオン帝国の皇帝や中枢部の偉い方達の許可を得ているのですか」
「無論だ。私に委ねるとのことだったので私が決断した」
まぁそうだろうとは思っていました。魔術師団長などという大層な位に就いているのに、何も許可を得ずに行動をおこしていたなら……と思うとゾッとします。
「こちらはこれで手打ちにするが」
「タータント国はまだなんとも判断出来ないですね。タータント国によるロズベルさんの処罰はどうなるのか、私にも分かりませんが、おそらく重めの処罰になると思われます」
「そうか。そうだな」
タータント国に帰国する事は問題にはならないでしょうが、タータント国内に留まらず国外でも騒がせた事は罪です。隣国もシオン帝国も今回の件をあまり問題視しないとのこと。下手をすれば外交問題になりかねない、爆弾娘でしたから、それも処罰の対象ですね。
「では、我等の事を話そうか」
魔術師団長・シーシオ伯父様が顔つきを変えて切り出しました。この件については、ジュストもドミーもタニアさんも他人だから、ということで退室命令を出されましたから、この部屋に居るのは2人だけです。
「伯父様、とお呼び致しますね」
「ああそうだな。姪か……。こうして会えたのは奇跡かもしれぬ」
伯父様は感慨深そうにそう切り出して、話が始まりました。
「元々セイスルート家はタータント王家が国を興すよりも前から存在する家だった」
「はい」
「実はな。タータント王家の前にあった王家の血筋が、セイスルート家だった」
「……は?」
おそらく淑女のお面は取れてしまっただろう。だが、それくらい衝撃的な事をサラリと言われてしまえば、淑女のお面など取れてもおかしくない。
「セイスルート家はタータント王家の前の王家さ」
私が理解していない、と判断したようで伯父様はもう一度同じ事を仰いました。
「嘘ですよね?」
「いや、嘘ではない。冗談でもない。セイスルート家は元王家。まぁ数百年は前の事を言われても理解し難いだろうな」
「何をやらかして王家は王家でなくなった、と?」
「何をやらかしたわけではなく、偶々互いの王家……いや、王家と臣下に争う理由があった。だから戦になった。そしてセイスルート家は負けて、辺境に。辺境地を立て直す事がタータント王家からの命だったよ」
そう。だから私達は辺境地を守る守護者になったわけですか。
「セイスルート家の血筋には魔力を持つ者が時折現れる。私のように、な。タータント王家にも魔力を持つ者が現れる事がある。その頃も互いの当主に魔力持ちはいなかったが、互いの子ども達に魔力持ちがいて。それ故に戦に発展した。ここまでは理解出来たか?」
私はまさかのセイスルート家の歴史を教えられて、パニックになりかけながらゆっくりと自分の中で消化させていった。
「なんとか理解しました」
肯定すれば、また色々とタータント王家との関係を話されて困惑する。しかし、タータント王家にも関係するのであれば、聞かないわけにもいかない。私は歴史を教えてもらっていくつもりで話に聞き入る事にした。




