2度目。ーー現実を知るということは、悔やむだけでなく省みること。・4
本日の更新は遅くなってばかりですみません。
前話、誤字と文の訂正をしましたが、話は変わりません。
「ロズベルという平民の少女の妄想癖だと思っていた部分が多かったのだが。それにしてはやけに具体的な話も有ったから、様子を見る傍らロズベルという平民の少女の生まれる前の家族構成から調査していたのだが」
魔術師団長のゆっくりとした語り口に、私を含めて皆が聞き入る。
「調査を続けている間にケイトリン・セイスルートの存在が浮き彫りになって来た。ロズベルという平民の少女を探している事もおかしな話だが、その裏にタータント国の王子が居る事もおかしい。それで更なる調査を行った。そもそもにおいて、ロズベルはタータント国の第二王子と結婚すると妄言を吐いていた。妄言だと思っていたがタータント国の王子がケイトリン・セイスルートを通じてロズベルを探している、と判れば話が変わってくる。つまり、ロズベルの話が真実味を帯びる。故にロズベルは研究対象と見做された。ここまではいいか?」
あー……そういうことか。ロズベルさんが言っていた事は妄言だと思って監視は付けていたものの、ほぼ放置していたのにヴィジェスト殿下の意を汲んだ私が帝国に……いえタータント国から隣国にそして帝国に来る動きを察知して、ロズベルさんの話が妄言では無くなったと判断したわけか。それで本格的に接触を開始した、と。
「では、つい最近本格的に研究対象にした、と?」
「そうなる」
あー。厄介な存在を引き寄せたのは、こちらでしたかー。
「それで?」
「調査開始当初はやはり妄言としか思えなかった。タータント国で起こる出来事を予測していたが、時期がズレる事もあり、前世の話とやらも2度目のロズベルの人生を送っているという話も信用出来ずにいた。だが」
「私がロズベルさんと接触した前回で真実味で帯びた、と」
「そうなるな」
故に私も研究対象ですか。まぁ前世云々はともかく私が2度目の人生を歩んでいる事は、ロズベルさんとの会話を記録していた監視役(元)からの報告で理解したのでしょうし。
「それにしても。前世とやらの話は本当か? 世界が一つではないというのは……」
「両方真実ですが、それを証明するものが無い以上は戯言だと思って下さい。また、前世の話も世界がいくつもある話も、あくまでも話かもしれませんよ? 何しろ魔法の痕跡など見つけられようはずがないでしょうから、前世だのなんだのという話を魔法で証明しようと思っても無理でしょう」
私はアッサリと肯定したが証明は出来ない事も告げておく。もう色々面倒くさい。人生が2度目なのを隠す事も前世の記憶の事も何もかも。どうせ肯定したって信じない人は信じないし、変人扱いする人はするし、頭のオカシな人扱いする人はする。
それなら、積極的に話す事はなくても、必要ならば肯定していくのが一番楽だ。どうでもいい事に時間を費やしている場合じゃない。
「成る程な。そうか。物理的な証明も魔法での証明も出来ない以上、あくまでも噂ならば致し方あるまい。だがケイトリン・セイスルートとロズベルの話は一致点も垣間見えることから真実ではあるのだろう。証明出来ない以上認められない話ではあるが」
「証明出来たとしても、ではどうやってその別の世界からこの世界に来たのか、なんてそれこそ説明など出来ません。私が思うにおそらくは人ならざるモノの介在でしょうから」
「人ならざるモノ……。なれば人の身ではアレコレと探る事は叶わぬ、か」
魔術師団長は大きな溜め息を吐き出して諦めたようですね。私の機嫌を伺っていることになりますが、こればかりは仕方ない。時間が巻き戻ったのなら、そういった魔法が有る事を知っている以上伝える事も義務です。義務ですが。まぁ黙っていても問題ないでしょうね。誰に黙っているのかは存じませんけど。さて。沈黙がおりる。
この沈黙の中でそれぞれ一体何を考えているのか。それは私も今はまだ分かりません。
お読み頂きまして、ありがとうございました。明日の更新はいつもの時刻の予定です。




