表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
成る程。では、お互い不干渉といきましょう。  作者: 夏月 海桜
2度目の人生を送る事の原因と意味と結果。
309/400

2度目。ーー残酷な現実を突きつけるのは、悪役令嬢。・2

「あのね、アカリちゃんだっけ? 悪いけど。俺らの会社ではバーチャル型ゲームなんて制作した事が無いんだよね。乙女ゲームを含めてさ。そんで、バーチャル型ゲームが出来る会社とかにこの乙女ゲームをバーチャルにしてくれってお願いした事もない。解るかな」


タニアさんの雰囲気がロズベルさんの前世が12歳の少女だと解った瞬間から柔らかく優しいものに変わった。まぁそうなるよね。寧ろ……全く会話についていけてない、ジュスト・マリベルさん・監視役はさておき……ドミーは未だに雰囲気が変わらない。彼の事が全て解るわけじゃないけれど。それでも何となく理解出来る事がある。多分、ドミーは……今までロズベルさんがやらかした事の責任を取らせたいのだと、思う。


「バーチャル型ゲームじゃないんですか? オンライン配信で人気が出たから、バーチャル化されたんじゃないんですか?」


ドミーの事を考えていた私の耳に、ロズベルさん……いえ、アカリさんの焦る声が届く。ずっとバーチャル型ゲームだと思い込んでいたのだろう。それが違う、と言われたなら。では現状はなんなのか、と思うのも無理はない。


「バーチャル化されてないよ。確かに、この乙女ゲームは人気がそれなりに出たから続編を制作したけど。アイドル育成ゲームとか物を擬人化した戦闘ゲームとか程人気があったわけじゃないから。グッズもそこそこは売れたけど、どこかのメーカーとコラボって程人気も無かったし。声優さんにお願いしてキャラソンも制作したけど、爆発的に売れたわけじゃ無かったから。続編でおしまい」


タニアさん……切実な事情をどうもありがとう。そこそこだったよ。って一言で終わらない辺り色々思う事が有ったとみて間違いなさそうです。敢えて突っ込みませんけどね。さて。もう一度私が現実を教える番ですね。


「この世界がゲームじゃない事は解ったよね。だから。ヴィジェスト殿下とハッピーエンドになっても日本には帰れない事も解ったよね?」


「じ、じゃあなんで時が戻ったの? ゲーム仕様だからじゃないの?」


今のロズベルさんの実年齢は私の2歳上なのに、外見は10歳くらい年を取っているように見える。だからといって、この世界の20代の女性のように大人の女性というわけじゃない。日本人の頃とは違って20歳そこそこ辺りまでに結婚してしまう女性が多いからか、20代半ば〜後半の女性は既に子どもを数人産んで、大人の女性として大輪の華を咲かせている雰囲気がある。


でも。ロズベルさんの場合は、言動がおかしい事を差し引いても子どもっぽい(実際に子どもなんだけど)言動と老けた(としか言いようがない)外見のアンバランスさが際立って、異様としか表現出来ない。そんなロズベルさんを、私はなんていうか。同情というか憐憫というかそんな感情を持ってしまう。そんな複雑な心境ながら、私はまたロズベルさんの願望を砕く。


「時間が巻き戻ったのは、ゲームとは関係ない事なの。詳しくは話せないけれど。魔法が扱える人の願い、だと思って」


「魔法……」


「ええ。残念ながら、私に魔法は使えないし、誰が使えるのかは知らない。ただ。時間が巻き戻った理由を調べていたら魔法が使える人が時間を巻き戻したって結論になったのよ」


さすがにタータント国王陛下が使用したとは言えないから、私はそんな言葉で誤魔化す。でもなんだかロズベルさんはきちんと聞いているように思えないんだけど。大丈夫かしら? 話の内容を理解出来ているのかしら。なんだか嫌な予感がするんだけど。そう思った時だった。


ロズベルさんの後ろに居た監視役を、ロズベルさんはグルリと音がしそうな勢いで振り向く。というか。今更ながら、此処にはマリベルさんの監視役しか居ないんだけど、ロズベルさんの監視役はいないのでしょうか。


「ねぇ、あなた!」


私がそんな風に気を逸らしている間に、ロズベルさんは監視役の両肩を掴んで鬼気迫った雰囲気。


「な、なんだ」


「あなた魔法使いなんでしょ⁉︎」


魔法使い……。ああ、うん。間違っていないんだけど。魔術師って呼んであげて。


「魔法は使えるが」


「じゃあ、時間を戻せるの⁉︎ そしたら異世界にも行けないの⁉︎」


あ。そういう風に考えたのか。もしかしたらどちらかなら出来るのかもしれないけど。両方は無理だと思う。そもそも別の世界に行くって考えは、世界が一つではない。って考えが出来る人じゃないと無理だよね。世界が幾つもあるって考えが出来るならば、別世界に行くために魔法の技術が発展するかもしれないけど。この世界の人達にその発想があるのかどうか……。


それならまだ時間を戻すって考えの方が出来たから、巻き戻しの魔法が出来たんだと思うんだけど。ロズベルさんにそういった事を説明しても理解出来るでしょうか。なんだか簡単に「じゃあ世界は沢山あるから異世界に行く方法を考えて」とか言いそうなんですよね。


仮にそれで異世界がある事を認めたとして。じゃあ別世界に行く方法を考えましょう。と決まったとして。そこからその魔法が出来るまでにどれだけの時間がかかるのか……って話ですし。ロズベルさんがそこまで理解は出来ていない気がします。ロズベルさんにそれを理解させるのは、多分ロズベルさんにこの世界の常識やらマナーやらを学ばせるよりも難しいと思うんですけどね。


困りました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ