表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
成る程。では、お互い不干渉といきましょう。  作者: 夏月 海桜
2度目の人生を送る事の原因と意味と結果。
307/400

2度目。ーー話が通じないって疲れる以上に怖いです。・7

「何よ、そのため息! 私の事をバカにしているわけ⁉︎」


「いえ、違います」


バカにしているというよりは、話の通じなさにどうすればいいか悩んでる、という方ですかね。タニアさんがチラリと私を見てからロズベルさんにまた話しかける。


「俺がシナリオ書いたんだけどさ」


「えっ! あなた、運営の人⁉︎」


タニアさんの一言にロズベルさんがキラキラした目で食いつく。まぁシナリオライターさんは大きなカテゴリーで見れば運営側だよね。


「シオン帝国の事を知っているって事は、続編を知っているわけだよね?」


「ええ、もちろん!」


「内容を覚えてる?」


「確か。ヴィジェストルートで娼館に入れられた悪役令嬢・ケイトリンが、シオン帝国から来た国賓の相手をする事になって……それで気に入られたから娼館から買い取られてシオン帝国に来るのよね!」


それって……ゲームの私にとっては娼館から脱出したってことですか?


「そう。それで?」


「その国賓はシオン帝国の大使で、彼に連れられて帝国の宮城に行って……そこでシオン帝国の第二皇子とか第三皇子に出会い、その側近達とも出会っていくってストーリー!」


それって……どう聞いても私が続編のヒロインにしか聞こえないんですけど。尤も全く興味ないですけどね。


「そのストーリーがどうして出来たか解る?」


「確か、悪役令嬢にしては悪役っぽくないから可哀想ってユーザーの意見から、ケイトリンがヒロインの続編を制作したのでしょ?」


なんでも知っているのよってドヤ顔ですけど。やっぱり私が続編のヒロインですか。


「そこまで解っていて、なんでケイトリン嬢が君を虐めないか解らないの? ケイトリン嬢は別に悪役令嬢なんかじゃないんだよ? 単にゲームを盛り上げるために悪役令嬢の役割を振られただけ。でも、此処はゲームとは違う世界。今も理解したでしょ。アイテムなんか無いって。ゲームと似ているけれど、あくまでも似ているだけの別世界。だからケイトリン嬢が君を虐めなくても何もおかしくないんだよ。シナリオライターの俺が断言する。それにケイトリン嬢が本当に悪い子だったらケイトリンが可哀想なんて意見は出てこないでしょう」


どうやらゲームの私を哀れんでくれるユーザーさん達が多かったようで。それで私は続編のヒロインに昇格したわけですか。良くありますよね。主役よりも人気が出る脇役って。ゲームの私もどうやらそのパターンだったようです。ここまでタニアさんに懇切丁寧に説明されても未だ認めないとするなら……どうあっても乙女ゲームだと思いたいわけですよね。


その場合、ロズベルさんの精神異常。或いはロズベルさんが心底ヴィジェスト殿下とハッピーエンドを迎えたい。若しくは……私は、ふとその可能性に気付きました。あまりにも言動が怖いのでその可能性には全く気付かなかったのですが……ここまで説明されても認めないなら、もしかしたらその可能性があるのでしょうか?


「嘘よっ。ケイトリン・セイスルートは悪役令嬢! 私とヴィジェストがハッピーエンドを迎えるためには、ケイトリンに邪魔をされて愛を育まないといけないのよ!」


うーん。やっぱり認めませんね。これは……本当に精神異常なだけなのか、それとも心底ヴィジェスト殿下に惚れ込んでいらっしゃるのか、それとも……この世界を()()()()()()()()()()のでしょうか。


「ロズベルさん……あなたの隣にお母様であるマリベルさんがいらっしゃいますけど、どうして見向きもされないんですか?」


私はロズベルさんの真意を見極めるために、敢えてそれを指摘します。その返事次第でロズベルさんの真意が解るような気がして。私に指摘されたロズベルさんはチラリとマリベルさんを見て。マリベルさんは、ずっと……それこそこの話し合いの最初から、ロズベルさんばかり見ていました。只の一度も視線を逸らせる事なく。娘の一挙手一投足を見守っているように。だから、そんな娘から視線を向けられたマリベルさんは喜びに笑顔を浮かべました。そして何かを話そうと口を開きましたが……。


それよりも早く。


「違うわっ! こんな人、私のお母さんじゃないっ!」


叫ばれたその内容は、マリベルさんから笑顔を奪い瞬時に落ち込ませるもので……マリベルさんには申し訳ない、と思いながらも、やはりそうなのね、と確信しました。


ーーロズベルさんは、ヒロイン・ロズベルとして行動して、メインヒーローであるヴィジェスト殿下とハッピーエンドを迎える事で。


()()()()()()()()()を図っているのだ、と私は思ったのです。あまりにも通じない会話。不自然な程、マリベルさんと監視役を気にしない素振り。最初は精神異常を本気で疑っていたのですが。


タニアさんに尋ねられて続編のゲームが、悪役令嬢の私がヒロインである事になんの異も唱えない。精神異常だから、と納得しかけたのですが、それにしては執拗に私がロズベルさんとヴィジェスト殿下の仲を裂こうとする事にばかりこだわる。それで思ったんですよね。ゲーム通りに私が2人の仲を裂こうと躍起になり……それを乗り越えたヴィジェスト殿下とロズベルさんは、晴れてハッピーエンドを迎える。


ーーでも、じゃあ迎えた後は?


その疑問を考えた時。ロズベルさんはヴィジェスト殿下と結婚するまでは思い描いているのに、その先を思い描けていないのではないか、と。それはゲームがそこで終わりだから……というのもあるけれど、もしかしてゲームが終われば()()()()()()()()と考えているのではないか、と。ふと疑問に思ったのです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ