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成る程。では、お互い不干渉といきましょう。  作者: 夏月 海桜
2度目の人生を送る事の原因と意味と結果。
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2度目。ーー話が通じないって疲れる以上に怖いです。・6

遅くなりました。

「ロズベルさん、然りげ無く王族に嘘をついた、と宣言したのですが……。まぁ前回の事で証拠も無いですけど。捕らえられて牢に入れられてもおかしくない発言なのは、ご理解されてます?」


取り敢えず、自分がやらかした事を自覚させよう、と指摘してみたのですが。


「何を訳の分からない事を! 嘘なんてついてないわよ! 私を虐めないアンタの所為で私は苦労したのよ! アンタが私を虐める事は決まっているの! 決められた事をやらなかったアンタが悪いのよ! 私は嘘なんてついてない。アンタに虐められる事が決まっていてそれが真実なのよ! 虐めないアンタの方が嘘なの!」


本当にどうしたらいいんでしょうか。全くもって会話が噛み合いません。こんなにも会話が噛み合わないって、もしや……。私はマリベルさんとロズベルさんの間に居る監視役に視線を移す。監視役は嬉々として私達の会話を記録しているし、私やタニアさんをギラついた目で時々見て来る事から、前回の人生とかそれ以外の話にも興味を持ったのだろう。まぁ研究対象認定された、ということか。


「尋ねたいんですけど」


監視役が私の視線に気付いたところで切り出すと、ギラついた目のまま頷く。


「彼女とあまりにも会話が噛み合いません。何か精神に作用する魔法でもお使いに?」


監視役は目を瞬かせてから首を振った。


「いいや。我々の元に来た時からこうだった」


それはつまり。話が噛み合わないのはロズベルさんの精神構造の問題、と言っているのと同じ。……やはり怖いな。というか、ロズベルさんは私が監視役と話しているのに、不自然な程監視役を見ない。もしかして、見張られている事に気付いている? 気付いているからこそ、敢えて見ない事で自分を保っている、とか? いえ。考えても仕方ないわ。何にせよ、ロズベルさんは見たいものを見て。聞きたい事を聞くだけの自分に都合の良い世界だけが良い、と世界を否定しているのだから。


「とにかく、さ。前回の人生でハルメルは無かったという事は思い出せるでしょ」


タニアさんが強引に話を戻した。ああ、すみません。話を脱線させてしまいました。タニアさんの声にロズベルさんが記憶を探るような顔つきで……やがて蒼白になった。あら。どうやら本当にそんな店が無い事を思い出したようですね。


「そんなっ! じゃあどうすればいいのよ! あ、いえ、でも……」


ハルメルという店が無い事を信じて動揺したロズベルさんは、それでも何かを気付いたような素振りをしています。


「もしかして……ハルメルじゃなくて別の雑貨店? そういうこと?」


ブツブツ呟くロズベルさんの声が聞こえてきたところによれば。ハルメルは諦めて別の雑貨店に行くとか言ってらっしゃる。ハルメルが無いからといって、他店にゲームの親密度を上げるアイテムが有るわけないじゃないですか。というか、そんなアイテムをゲットしたところで、ヴィジェスト殿下との仲が進展する事は有りませんよ。だってヴィジェスト殿下から拒否されているんですから。


「他店にも無いよ。だってアレはゲーム上でのアイテム。現実世界である此処では必要とされていない物だから。だからアイテムそのものも無いよ」


穏やかに微笑んでおきながら繰り出される毒は、タニアさんの怒りを伝えてくるモノである。自分の言動を棚に上げて思い通りに事を運ぼうとするロズベルさんは、ちょっと痛い目に遭わないと分からないかもしれない。「タニアさんの毒」という名前を持つに相応しい痛い目。……そうは思うものの、そこまでの目に遭っても思考が変わらないとしたら……。


己の考えに憂鬱で、ため息を知らず知らずのうちに、盛大に吐き出していた。

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