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成る程。では、お互い不干渉といきましょう。  作者: 夏月 海桜
2度目の人生を送る事の原因と意味と結果。
305/400

2度目。ーー話が通じないって疲れる以上に怖いです。・5

遅くなりました。

「ハルメルが、無い?」


「無いよ。だってゲーム上で付けられた名前だから」


タニアさんというかシナリオを書いた先輩さんの夢に、そんな名前の雑貨店が出てきた? いいえ。出て来たなら王都にハルメルはある、はず。きっとゲームの進行上、店名が必要だから付けた名前……。それならばこちらの世界に存在しなくてもおかしくない。


「嘘よ! ハルメルはあるはずだわ!」


「君は。前回の人生とやらの記憶はあるかい?」


またもタニアさんから思ってもみない質問をされた、というような表情でロズベルさんは少し大人しくなってから、頷いた。


「あるわ」


「ヴィジェスト殿下と王都散策は?」


「もちろんしていたわよ。可哀想なケイトリン。あなたはヴィジェストから愛されないどころか見向きもされてなかったのだから。うふふ。ヴィジェストの愛も関心も全部、私にしかないのよ」


口元を歪めるロズベルさんは、お世辞にも可愛いとは言えなくて。醜悪という言葉が良く似合います。なんていうか……これでは、どちらが悪役なのかって話になりますが。うーむ。ゲームの私ってこんな感じだったのでしょうか。そうだとするなら、こんな感じの悪役令嬢……。嫌われますね! こんなだったら嫌われます! そりゃあヴィジェスト殿下どころか、ジュストにもカッタート様にもドミーにも嫌われます。何だったらイルヴィル殿下からは、嫌われるどころかゴミ扱いされますね!


イルヴィル殿下は不要な人間をゴミとしてポイってするのが得意ですからね! 優しそうな微笑みを浮かべているからといって優しい人だとは限らない。イルヴィル殿下は、正しくそんな人ですよ! ……話が逸れました。こんな嫌な女がゲームの私ならば嫌われても仕方ないのですが……。


現実世界では悪役令嬢(わたし)ではなくてロズベルさん(ヒロイン)が悪役っぽいんですよね。コレ、良いんですかね? あー、取り敢えずマウントを取られているので、否定はしておきましょうか。


「ええと……隠しておいても仕方ないので。前回の人生で、私はヴィジェスト殿下から初対面でロズベルさんの存在を知らされてましたし、あなたとヴィジェスト殿下が常に一緒なのも存じ上げていましたし。なんだったらお2人の後を側近のジュスト・ボレノー様とライル・カッタート様が常に付き従っているのさえ見ていましたから、今更羨ましいとも憎たらしいとも、何とも思いませんが」


そして、私の発言にジュストがギョッとした。えっ、なんで? あ、もしかしてヴィジェスト殿下とロズベルさんに付き従っていたって言ったから? いや、でも、本当の事だし。


「ふんっ。痩せ我慢なんてしなくてもいいのよ! 愛されない事を嘆いて嫉妬して、私を憎んでいましたって正直に言えば、ちょっとは可愛げが有るんじゃなくて?」


ふふふ。なんて笑っているけど、いやいや、あなたのその言動の方が可愛げとはかけ離れてますけど⁉︎


「いえ、本当に。痩せ我慢でもなんでもなく。最初から恋人が居ると言われて歩み寄る努力もしてもらえない相手を、何故好きでいられると思うんですか?」


「そんなの知らないわ。アンタは私に嫉妬する。そういう存在なの!」


「仮に前回の私がロズベルさんに嫉妬した……とします。でも、それだけですよ。嫉妬したからって何かするわけでも有るまいし」


「そうよ! それよっ! なんでアンタは何もしてこなかったの⁉︎ 嫉妬して私に嫌がらせするのがアンタの役でしょ⁉︎ そして、そんな私を慰めてくれるのがヴィジェストなのよっ。そうして私達の愛は深まっていくのに! アンタが虐めて来ないから、仕方なくヴィジェストにアンタから虐められているように見せかけて訴えていたのよ⁉︎」


えー。前回の事だから証拠もないし証明も出来ないけど、今、サラッと王族に嘘をついたことを暴露しましたよっ? 私に虐められているという嘘をついた上に、そう見られるように演技したわけですよね? それって王子を謀ったと言っても過言では無いんですけど。証拠が出てきて証明出来たら投獄されてもおかしくない発言なんですけど。


ロズベルさんは、そこまでの自覚は有るんでしょうか。……いいえ、無いでしょうね。自覚があったら迂闊にこんな事を喋りませんものね。ぶっちゃけた事を言えば、こんな迂闊な人を王子妃になんて据えられないから、前回はヴィジェスト殿下と結婚出来なくて良かったんじゃないですかね。尤も処刑された事は、後味が悪いですけど。


この方……乳母を務めていたマリベルさんの娘なんですよね? マリベルさんの言動から察するに、相当淑女としての教育を叩き込まれたはずなんですけど。とうの本人に身に付ける気がないとしか言えないくらい、言動がまずいですね。こんなんで、王子妃になんてなれるわけが無いですよね。


ヴィジェスト殿下、そんな事にも気づかないほどロズベルさんにのめり込んでいたのでしょうか。……いえ、のめり込んでいたのでしょうね。自分を謀った女性を伴侶に迎えようとするなんて……自分が愚か者だ、と宣言しているようなものです。


ああ、でも。だから今回のヴィジェスト殿下は、だいぶ変わられたのかもしれませんね。

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