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成る程。では、お互い不干渉といきましょう。  作者: 夏月 海桜
2度目の人生を送る事の原因と意味と結果。
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2度目。ーー話が通じないって疲れる以上に怖いです。・2

でも。どういうわけか、2度目の人生でヴィジェスト殿下は変わってた。もちろん最初は会う気が全然無かったんだけど。結局会ったのよね。そして1度目の人生で私を蔑ろにしていた事を謝ってくれた。まだあの頃は今以上に前回の人生に引っ張られていたから、ヴィジェスト殿下が謝るなんて、出来るんだ……と随分失礼な事を思った気がする。今回で何度かお会いするうちに、本当に前回の人生を悔やんでいるみたいで、だいぶヴィジェスト殿下は変わったけど。


ああ、そうだ。

そんなヴィジェスト殿下のために、私は此処にいる。彼女が私をゲームの“悪役令嬢・ケイトリン”だと認識していようと、私は殿下の伝言を届ける義務があった。でも。ロズベルさんは間違いなく私の発言だと聞き入れない。


ジュストをチラリと見たら、ジュストは呆然としていた。……ロズベルさんがあまりにも令嬢らしくないから? いや、でも平民だから令嬢らしくなくてもおかしくないよね。じゃあ何に呆然としたんだろう。


「ジュスト?」


小声で彼を呼べば、ジュストはハッとした顔で意識を取り戻し……咳払いしてロズベルさんの意識を自分に向ける。


「ロズベルさん、ですね。はじめまして」


「ジュスト! ジュストじゃない! もしかしてヴィジェストから私をタータント国へ戻すように言われたの⁉︎」


ジュストが初対面だから、と丁寧に挨拶をしようとしたのに。ロズベルさんは遮った。……人の話を聞きましょう。ジュストは唖然としてから、溜め息をついて。


「いいえ。殿下からはそのような事はお伺いしておりません。私とケイトリン・セイスルート嬢が殿下から託された伝言は……ロズベル、あなたが変わらないままなら、帰国するな。……です」


そうなのよね。私とジュストがシオン帝国に留学に来る事になった時に預かった伝言ってコレなんです。いや、私も驚きましたよ。確かにシオン帝国に居るということが分かったから、ロズベルを探さなくていい。とヴィジェスト殿下が仰った事も驚きましたけどね。その後、留学する前にやっぱり伝言を頼む。って言われた時は、あ、やっぱりロズベルさんの事が心配なんだって思ったんですけど。


ジュストから聞いた伝言の内容に私が唖然としましたよ。一つは先程、ジュストがロズベルさんに放った言葉。もう一つはロズベルさんが変わっていたら伝えて欲しい言葉で。もう一つの方は「君のことは確かに好きだったけれど、私は君を選ぶ事は無い。記憶があって、前回の最期を覚えているなら……解るだろう。幸せになって欲しい」というもの。


どちらにしても、今回のヴィジェスト殿下はロズベルさんを選ばないらしいです。私はずっと、ロズベルさんを探しているのは、今度こそロズベルさんと一生を共にするためなのだろう、と考えていたので驚きました。ドミーからも聞かされてましたけどね。ヴィジェスト殿下本人から、ロズベルさんと共に処刑された最期は伺っていたので。


処刑されたと聞いた時は、なんて言えば良いのか解らず。ヴィジェスト殿下を気遣えなくて申し訳なかったと思っていますが。とうのヴィジェスト殿下は、「ケイトを蔑ろにしたから天罰だろう」とあっさり言ってました。多分、内心はもっと色々あったとは思うんですよ。辛かった、とか。苦しかった、とか。死にたくなかっただろうし、処刑の決断をした国王陛下を恨んだのではないかな、とも。もちろんそんな事は尋ねませんでしたが。


それでも、ヴィジェスト殿下が表向きは天罰だ、と言うのなら。私はその気持ちを尊重してそれ以上何も言わないのが、私に出来る事でした。そんな事を思い出しながら、ジュスト経由で伝えられたヴィジェスト殿下からの伝言を聞いていたロズベルさんの変化が、ちょっと怖いです。


「……んな。そんな。そんな。そんな! そんな事、ヴィジェストが言うわけないでしょ⁉︎ 何を勝手に……っ。ジュストがヴィジェストに言われた、なんて嘘をついているわけ⁉︎ いいえ、違うわね。ジュストはヴィジェストに助けられた事があるから、ヴィジェストのためになる事はするもの! ということは……」


ここで言葉をきったロズベルさんが私の方を向いてギッと睨み付けてきました。


「アンタね! アンタの所為ね! さすが悪役令嬢ね! ヴィジェストにそう言えって脅したんでしょ⁉︎ ヴィジェストの何を脅迫の種にしたのか判らないけどね! そう簡単に私とヴィジェストの仲は裂けられないわ! 婚約者だからってヴィジェストの事を思い通りにしようなんて、許されないからね!」


ええと。物凄い因縁を付けられてしまっていますが。訂正はしておきましょう。


「私は、ヴィジェスト殿下の友人ですが、婚約者では有りませんよ」


此処は全力で否定します。だって、ドミーがいるのに。しかも、私の隣に座っているのに、ヴィジェスト殿下の婚約者だなんて言われるのは嫌です。ドミーにはもちろん話してありますよ。筆頭婚約者候補者ですが、婚約者ではないし、何度も辞退しています。って。だからドミーがロズベルさんの言う事を信じるはずはない、と解ってますけど。


それでも、ドミーの前で事実無根の話を、当然のように話されるのは嫌です。尤もドミーの事なので、ロズベルさんが此処を現実ではなく、乙女ゲームの世界だと思い込んでいるからこその発言だ、と解ってくれていると思いますけど。何しろ、彼は日本人だった頃、運営側でしたものね。キャラクターデザイナーとして関わっていたけれど。

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