2度目。ーーその人と会うのは、実は初めてでした。・14
いつもお読み頂きまして、ありがとうございます。
前話のアップを確認したところ、途中で終わってました……。あの続きを書いてあったのに、保存されてなかったようで尻切れトンボな文章にショックを受けてます。
前話に書き足しておきます。
「い、一度持ち帰らせてもらう」
あら賢明な判断をされましたね? そうですよね。貴方がご自分で仰ったように、仮に魔術師団の幹部だったとしても。ロズベルさんは貴方の言う所の研究対象ですものね。そう簡単に「会わせる」とは言えませんよね。でも貴方は魔術師団の代表者としてこの場にいるから、魔術師団の顔に泥を塗るような判断も出来ないですものね。
「分かりました」
まぁこの辺が引き際ですかねぇ。此処で畳みかけたなら意固地になって逆効果な気がしますし。そんなわけで、今日はマリベルさんと殆ど話もしないで帰る事となりました。私とあの監視役しか話してなかったですね、今日は。
「凄かったわね」
マリベルさんと監視役がいたあの部屋からの帰り、暫くしてからタニアさんが大きく息を吐き出したと同時に、そう呟いた。ドミーは苦笑し、ジュストが大きく頷いている。クルスは私達の視界に入らないけれど、私の近くにはいるだろう。
「凄かった、というのは」
「あなたよ。ケイトリン。あの監視役が言った事が本当なら、シオン帝国が誇る魔術師団の幹部という事でしょう? そこそこに大物だわ。そんな相手にあんな交渉を持ちかけるんだもの。それもあんな風に手札も見せずに最初から宝物だけを手に入れようとしていくなんて」
そういうことか、と苦笑した。
「これでも1度目の人生は、王子妃になるために教育を受けた人間なので。交渉術も教育の一環なんです。もちろん、切り札とか相手の望む物とか色々有りますけど。あの方は交渉事が苦手なのか、あっさりと此方に都合良く条件を提示してくれたので」
「なんでも望みを叶える」なんて言ったのは、あちらだ。向こうから美味しい条件を突き付けてくれたので、美味しく飲み込んだだけのこと。
「それでも、よ。それでも鮮やかにこちらの有利な条件で交渉出来た。これって前回の時より遥かな進歩だわ。だって前回はけんもほろろだったのだから」
タニアさんは本日も男性スタイルで、口調は女性言葉。なんだかウッカリ私の中にある新たな扉を開けてしまいそう。……いえ、その扉は閉めておこう。ドミーに悪いわ。
「まぁあくまでも今のところは、ですけどね」
そう。今のところ。有利に見えた交渉だけど、向こうがひっくり返そうと思えばひっくり返せるだけの有利さ。
「それでも持ち帰ってもらっただけ、進歩よ」
「そう、ですね」
さて。向こうはそれなりに不利では有るだろうけれど、かと言って逆転出来ないわけではない。殊、ロズベルさんに関してなので、いくらあの監視役が説得を頑張ったとしても(本当に頑張るかは、さておき)簡単には会わせてもらえるとは思っていない。でもねぇ。私もいい加減に前回の人生と決着を付けて、2度目の人生を満喫したいもんねぇ。……デボラ辺りには、お嬢様は既に満喫している日々を送っているって言われそうだけど。
いや、満喫はしているんだけど。気がかりが全く無い状態とはまた別だと思うんだよね。人生何が起こるか分からない。って言葉を身をもって経験している我が身ですから。憂いなく人生を満喫したい! 学園の休みまでにロズベルさんに会って、伝言伝えて。ヴィジェスト殿下の筆頭婚約者候補者の座を正式に降りて。
色々な柵を断ち切って、ただのケイトリン・セイスルートになりたい!
まぁ1日や2日で返事が来るとは思ってないから、少し気長に待つしかないけどね。タニアさんとそんな会話をしていて、ドミーがふっと口元を緩めて。ドミーの顔はまぁ乙女ゲームの攻略対象だけあってカッコいい。というか美形で。そんなドミーが口元を緩めるだけの笑みを見せてくれたのでキュンとして胸がドキドキする。
それはズルイと思うのよね。そして、此処でドキドキしていてなんだか私ばかりドミーが好きみたいで、ちょっとだけ悔しい。まぁ会えなかった頃と比べたらこっちの方が幸せだから良いけど。
そんなやり取りをしながら寮内の自室に帰ってデボラやクルスと今日の話をして。向こうの出方を待っていた私ののんびりさを嘲笑うかのように。翌日にはロズベルさんと会わせてもらえる事が決まった、という趣旨の手紙をドミーからもらったのでした。
書いた文章無くなるの、地味に精神が削られるので、なんとか持ち直したいと思います……。




