2度目。ーーその人と会うのは、実は初めてでした。・13
2021.4.5
今話が、途中までの保存状態でその後の文章が綺麗に保存されておらず、尻切れトンボな文章ですみません……。書き足しました。
「ま、待て!」
「待て? えっ? なんで私が命令されなきゃいけないの? あなたが仮に魔術師団のトップ、魔術師長様だとしても、私に命令なんて出来ないのよ? 解ってないわね。何故なら私はあなたが所属する魔術師団に所属していない、から。当然よね。そして私はこの国に留学生として来ているの。つまり、国の代表。私の言動の一つ一つがタータント国の運命を左右する、と覚悟して留学しているの。分かります? 私が無礼な言動をすれば、タータント国の行く末に関わる。あなたは、そんな私の覚悟を侮辱しているって解りますか」
「あ、いや、命令ではない。その、待って欲しい」
この部屋に来て早々、挨拶もそこそこに私にケンカを売った監視役は、今や見る影もなくおどおどしている。やぁねぇ。これじゃあ私が弱い者虐めをしているみたいじゃない。失礼な人。まぁ私の理路整然とした説明で自分の立場が如何に危ないか理解出来たみたいだからこそ、掌を返しているのだと思うけれど。
謝罪も無しに許す? そんなわけないので許す気はない。うん。この人がどんな立ち位置なのか、知らないけれど魔術師団の代表者として交渉を始めよう。私はチラリとドミー・タニアさん・ジュストを見る。ジュストが理解してくれるか不安だったけれど、大丈夫そう。ドミーとタニアさんは大きく頷いてくれた。3人とも、私が交渉しようとしている事に同意してくれたみたいなので心置きなく交渉に入ろう。
「待って欲しい、とは?」
「す、少し落ち着こうではないか。話し合いを、だな」
「私は落ち着いておりますし、話し合いのために此処に来ております。変な事を仰いますね」
動揺しまくりの監視役に淡々と事実を告げながら、さて、と考える。一体どこまでこちらの有利に交渉を進められるかしら。
「う、うむ。落ち着いているな。確かに。で、では話し合おう」
本当に反省しているのかしら。未だ上から目線での発言ですけどーー? まぁいっか。
「それで。貴方は何を待って欲しい、と? あなた方魔術師団の玩具になる気はこれっぽっちも無いんですよね、私」
「おもちゃ⁉︎ いや、そのようなつもりはない! 研究対象として協力をしてもらうだけだ」
「協力、ねぇ。それを引き受けた場合、私になんの得が有るのやら」
「そ、其方の望みは何でも叶えよう」
「なんでも?」
あらあら、そんな簡単に「なんでも」なんて言っていいのかしらね。貴方は今、自身が所属している魔術師団の代表者として話し合いをしている事になるんだけど? ここで約束を破れば、シオン帝国が誇る魔術師団の顔に泥を塗る行為だって解っていて発言しているのかしらね。……尤もそんな指摘をする程、私は親切な人間じゃないですけどね。
「なんでも、だ」
「そうですか。貴方にそんな権力があるなんて思いもしませんでしたわ。では望みを言わせてもらいます」
「わ、私はこれでも魔術師団の幹部だ!」
まあまあ。そんな大事なことを声高らかに言ってしまっていいんですか? というか、これしきの挑発に易々と乗っかって来る事の方が怖いんですけど。貴族は感情的になってはいけない、と感情をコントロールするように物心ついた頃から教育されてきているはずなのに。……この方、仕草は貴族のようなので、貴族だと思っていましたが、こんなに感情的なら貴族では無かったのかしら。
ーーいえ、考えても仕方ないわ。
大事なのは「何でも叶える」という言質を取ったこと。そして私のペースに引き込まれて感情的になっているこの状況。冷静に判断なんて出来やしないでしょうからね。この状態ならば、最初から余計なやり取りをする必要はないわね。
「そうですか。貴方がそのような方だとは存じ上げないものですから。……では、ロズベルさんに会わせてもらいましょうか」
「なっ……」
駆け引きも無しにそのものズバリを口にすれば、絶句されてます。こんな事くらいで絶句されても困るわね。私がヒタリと視線を逸らさないでいれば、考えあぐねたように周囲に視線を向けている。ドミーとタニアさんとジュストは、私がケンカを売られた時から黙っていたけれど、別に話を聞いていなかったわけじゃない。ここぞとばかりに無言で決断を促している。
そして、マリベルさんと視線が合った途端に、マリベルさんもジッと監視役を見つめた。おそらく彼女は、娘であるロズベルさんと会えていないのだろう。それが私とのやり取りで会える可能性が出てきた事に気付いて、自分も会いたい、とその一心で監視役を見ている雰囲気がある。
さぁ、どうします?
「ほ、他の望みはないのか」
この期に及んで逃げの一手を打って来るなんて、自分の発言の責任も取る気がないのかしらね。
「有りませんわ」
もちろん、速攻で否定しましたけどね。
これが例えば、2度目の人生が始まった直後だったならば、自分の欲求に従って「何故、またケイトリンの人生を送っているのか」という疑問の解決を望んだかもしれない。でもねぇ、ある程度2度目の人生を過ごすうちに、こうなったものは仕方ない。楽しもう! って割り切ったし。
例えば、ドミーに会えなかった日々だったなら、ドミーに会いたいって言ったかもしれないけれど、もう会えたし。私の中で自力で何とか出来ないような事ってこれくらいだったもの。そして、そのどちらも現状は何とかなった。だからね、他の望みなんて無いわ。
あっても自力で叶えてみせるわよ。
私のそんな決意を感じ取ったのか、監視役は顔色を青くさせたり白くさせたりと忙しい。さて、どんな返事を聞かせてくれる?
保存したつもりの文章が消えててちょっとショックですが、なんとか持ち直したいと思います……。




