2度目。ーーその人と会うのは、実は初めてでした。・9
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ヴィジェスト殿下もそろそろ我儘を貫けない事は解っているはず。こうなるとロズベルさんを見つけて殿下の言葉を伝えて、タータント国へ帰る手法を探す方がいいかなぁ。まぁやらかし具合を聞いていると、帰国を阻まれるか、帰国してもそれ相応の対応をする事になると思う。……うん、厄介だね。
「取り敢えずヴィジェスト殿下の容態は?」
「お嬢様のご想像通り大した事じゃありません」
身も蓋もない言い方しないで! デボラ!
「もう復活していると見ていいのね?」
「ええ。ガリアからの報告によると……残念ながらお坊ちゃん殿下はもう大丈夫。だそうですよ、お嬢様」
ガリアまでヴィジェスト殿下のことを邪険にしているわ……。あなた達、ウチがいくら王家に忠誠を誓って無いからといって。そんなあからさまに邪険にする? いや、言っても仕方ないか。臣下は主人の鏡。私のヴィジェスト殿下に対する態度が、彼等の態度に影響しているのよね。ーー解ってる。解っているんだけど、前回の人生でヴィジェスト殿下に蔑ろにされた記憶が、今回の人生にも多少は影響しているのよね。
前回より今回の方がヴィジェスト殿下と親しいと思うけれど。まぁこれ以上発展のしようがない関係だ。ヴィジェスト殿下には我慢してもらおう。
「他にガリアから連絡は?」
「ボレノー家の様子とヴィジェスト殿下、ライル・カッタート様の様子は変わった事はない、とのことです」
「そう」
じゃあ上から目線のあの物言いは、弱い立場になると出てくるのか、それとも親しくなると出てこない感じなのかしらね。まぁいかにも理不尽……ということでないなら様子見で留めておこうかな。
「じゃあガリアには帰って来るように伝えて」
「かしこまりました」
それからは課題のポイントを押さえたり、珍しく……本当に非常に珍しく、寄越されたお兄様からの手紙を読んだり、と過ごした。お兄様から手紙って、ロクな内容じゃないわよね、絶対。だってお母様とお姉様のことでしょうから。いつも、お父様には報告書的な手紙を書いて、お父様から助言をもらう内容だから、そういう簡潔なものが欲しいわ、お兄様。
そう思いながら手紙を読み進めていくと。うわぁ……。マジですか、お兄様。何をやらかしてるんです⁉︎
「デボラ……」
「はい。どういたしましたか、お嬢様」
「お兄様から面倒くさい指令が来ましたわ」
「ルベイオ様から、面倒くさい指令?」
私が溜め息をつきつつデボラに声をかければ、デボラが不思議そうな表情で私の言葉を繰り返した。
「シオン帝国出立の日。家族の誰にも会わずに来てしまったでしょう? お兄様、そのことにお怒りで。ケイトがそのつもりなら、俺も好きにするから!」
と書かれていまして。普段は落ち着いているくせに、やはりあのお父様の息子だからなのか、それとも辺境の地の者として生まれ育った所為なのか。
「この手紙を先触れとしてシオン帝国に行くから! だそうよ」
「ルベイオ様……。なに、子どもみたいな暴走を……」
学園を卒園しているお兄様は、辺境伯の爵位を継ぐ・継がないは分からないけれど。セイスルート家からお抱えの騎士団に所属しているので、毎日剣をふるって訓練をしているはずなんだけど。そんなに暇じゃないんだよ? あの家。辺境なの。国の境なの。国境を守るのがウチの役目なの。
それを解っているはずなのに、何故来ようとしているのかしら⁉︎ っていうか、お兄様が来たら、誰が脳筋のお父様の暴走を止められるのよ⁉︎ ロイスには無理だからね⁉︎ それに、お母様とお姉様はどうなるのよ。あの2人をロイスと執事達に任せるの? いくらお姉様が変わってきているとはいえ、根本的な甘え気質はなかなか変わらないと思うんですけど。それとも放置しても大丈夫なくらい、お母様とお姉様の依存関係は無くなったと見ていいのかしら?
何にせよ、クルスかアレジに命じてシオン帝国に入る前にお兄様を止めさせましょう。
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