2度目。ーーその人と会うのは、実は初めてでした。・4
本日は2話連続投稿です。
こちらは2話目です。
「それから?」
ドミーが小さく促せばマリベルさんは、大きく息を吐き出す。
「それからは転がり落ちるようでした。王都を出て最初に辿り着いた村から始まり、1週間も経たずに移動しなくてはならない日々が続き……とうとう辺境伯領に足を踏み入れた時は、ロズベルが更におかしな事を言うようになりました」
「それは?」
我が領地に足を踏み入れたら更におかしな事を言い出したのであれば、此処は私が尋ねるべきだと思いましたので、短く尋ねます。
「あの、これはロズベルの想像ですから! あなたに危害を加えようとか考えたわけではなくて、ですね。その、あの」
必死なマリベルさんを落ち着かせられるように私は微笑み口を開いた。
「大丈夫です。落ち着いて下さいな。今までのお話を伺うに、想像が逞しい方のようですからそのつもりでお伺いしますわ」
「あ、ありがとうございます」
ホッとしたようにマリベルさんは落ち着いて。やがてこちらを窺いながら、ロズベルさんの話を続けた。
「あの子……。そういえば、あの悪女は死んだんだったわねって」
悪女ですかー。えー。前回、ロズベルさんと一切関わらなかったのに悪女扱いされる意味が分からなーい。私、実は1度もきちんとお会いしていないんですよね。ん? あ、ちょっと待って。
「私のこと、悪女、と? 私はロズベルさんとお会いしたこと無いのですが。それにその年齢のロズベルさんですと、私は2歳下ですから10歳ですね。10歳の私が仮に性格が悪くても、ロズベルさん……というか王都の貴族界隈に鳴り響く程の性格の悪さでは無かったと思うのですよね。一体どこから私が悪女などという噂をお聞きしたのでしょうね?」
わざとらしく首を傾げて尋ねれば、マリベルさんも首を傾げる。
「それは私もよく……あ、そうだわ。悪女というか、なんでしたっけね。悪女という意味の言葉だと……。あくやく? 令嬢でした。あ、あの、セイスルート様が悪女だと言いたいわけでは決して」
「ええ。理解しています。大丈夫です」
あー。悪女じゃなくて悪役令嬢、ね。そして前回の私の最期を見ているものだから、死んだ、と明言したわけか。というか、ロズベルさん、あなた自分の時間が巻き戻ったんだから私も時間が巻き戻っているかもしれない、って思いませんか? 私に前回の人生の記憶が有るかどうかはともかく、自分だけが時間を巻き戻っているとでも思ったのでしょうか。
まぁ何にせよ、私の最後を目の前で見ておいて「悪役令嬢は死んだ」という事実だけを捉えるなんて、現実が見えていないんですかね。普通、人が死んだら取り乱すでしょうに。ああでも、その時は仮に取り乱したとしても、ロズベルさんが前回何歳で時を戻したのか知らないので、もしかしたら何年も……何十年も経っていたとしたら、人が目の前で死んだ事実すら忘れていたのかもしれないですね。
私の死が薄れた頃に時戻しの魔法にかかったのなら、私が死んだ事だけが記憶に残った、と。それならそんな風に淡々としていてもおかしくないでしょうね。でもそうなると、娘が人の死について淡々と口にしていたら、マリベルさんの心中は如何許りか。
「セイスルート様にそう仰って頂けると安堵しました。でも、いくらなんでも辺境伯領でセイスルート様を悪女や死んだなどと言っていては色々と弊害が出ると思いまして、足早に領地を通り過ぎる事にしました。そうしてその先にあるのは隣国。私達はなんとか国境を越えることが出来ました」
それが隣国に出国した事情、でしたか。なんかもうロズベルさんに振り回されてシオン帝国まで来たマリベルさんに同情すべきか、母の愛は大きいと褒めるべきか。取り敢えずロズベルさんに前回の記憶があったことは確定でいいでしょうね。しかしまぁロズベルさん、全く現実が見えてないんですね……。
「隣国に入国してからもロズベルの想像は働き……いえ、もっと酷くなる一方でした」
酷くなるという言い方にマリベルさんの苦労が垣間見えますね。まぁ実際かなり苦労されたのでしょうけども。
「ロズベルは隣国に入国してから暫くして、急に。何故私はタータント国を出奔しているの! と喚いて大変でした」
あー。そりゃ酷くなると思うだろうね。お気の毒です。
アンケートご協力をありがとうございます。31日まで引き続き宜しくお願いします。
また、結果発表は4/1ですが、その時に別のお知らせも有りますので、4/1の活動報告もお見逃し無くお願いします。




