2度目。ーーその人と会うのは、実は初めてでした。・2
遅くなりました。
書いていた話が保存ミスで消えてました……
ちょっと打撃が強すぎて立ち直れない。
何とかかんとか書きましたけど。
その後は、結婚した2人に跡取りが産まれ、やがてロズベルさんが産まれた、と。
「それからイルヴィル殿下がお産まれになられて2年くらいの頃に乳母を募集されていまして。駄目かもしれませんけれど上手くいけば夫に有利になるかもしれないと思いまして応募しましたの」
「ああ、確かイルヴィル殿下の最初の乳母は、体調が悪くてその任を下りた、とか」
ジュストが納得している。成る程。乳母とは言うけれど、実際には同年代の遊び相手を対象にした募集だった、と。それにしてもイルヴィル殿下の年齢とヴィジェスト殿下の年齢を考えれば、私より年上になってしまったロズベルさんではイルヴィル殿下の遊び相手になりますよね。
「ええ。それで面接をしたのですけど、何故か私が採用されまして」
あー。成る程。雇用主自らが決定したのか。国王陛下に逆らえる者なんて居ないし。もしかして。理に逆らった魔法を使った弊害で、1度目とは違う年齢になってしまったロズベルさんへの罪滅ぼし、では、無い……ですよね。いや、あの陛下なら有り得そう。威厳もあるし普段は無表情だし正しく国王という重責にあって様々な事を考えていらっしゃるけれど、情は熱くて涙脆い人でしたね。それで今回もかの方はマリベルさんを採用されたのですね。
「それでイルヴィル殿下の乳母になられた、と」
ドミーが最終確認をする。マリベルさんは頷いて「その後ヴィジェスト殿下がお産まれになられてからも暫くは乳母として勤めておりました」と続けた。という事は少なくとも10年程は王宮で乳母仕事に力を入れていた、とみて問題ない。まぁ陛下はおそらく前回と同じ状況にしたかったのでしょうね。
でも私はヴィジェスト殿下の婚約者を辞退した。陛下には悪いと思いますが辞退した事で私が前回を知っている事に気づかれたのでしょう。その後は寧ろ放置気味でしたものね。
「それからですが。ヴィジェスト殿下の乳母の任を解かれて暫くは家で過ごしていたのですが。およそ1年後だったでしょうか。ロズベルが10歳の頃に突然、訳の分からない事を話し出したのです」
「訳の分からない?」
タニアさんが繰り返せばマリベルさんは頷いて、深呼吸をしてから震える唇を開きました。
「えっ⁉︎ なんで此処にアンタがいるのよ⁉︎ ヴィジェストは何処⁉︎ と」
娘にアンタ呼ばわりも信じられないのだろうが、いくら王子2人の乳母を務めていたとはいえ、いえだからこそ礼儀は人一倍口うるさく躾けたのだろうに、第二王子殿下を呼び捨てにしたのだからその衝撃たるや私には計り知れない。
「礼儀は人一倍口うるさく躾けたのでしょう」
私がポツリと言葉を溢せば、私をジッと見たマリベルさんはポロリと涙を落とした。
「お、お解り頂ける方がいらっしゃるなんて……」
泣いた事が気恥ずかしかったのか、マリベルさんは慌てて頬を拭うとありがとうございます、と囁くように礼を述べた。「分かりますよ」と言うのは簡単ですけどね、1度目の人生で王子妃教育を受けた者として、礼儀の厳しさは身をもって知っていますが。それは言えないですからね。ただ、黙ってその礼を受け入れる以外、私には出来なかった。
「それにしても。乳母の任を退いてからおよそ1年ということは……」
話を戻すようにドミーが言葉を紡いで、何かを思い付いたように黙り込んだ。その頃のロズベルさんの年齢はおそらく10歳。私の2歳上という事は、私は8歳。そして……ドミーは15歳。成る程、2度目の人生が始まった年、ということですか。それならば急に記憶が蘇ったのでしょうね。
だから殿下を呼び捨てにしたのだろう。1度目の人生ではロズベルさんはヴィジェスト殿下の恋人だったのだから呼び捨てや愛称呼びが当たり前だったのだと思います。
だとしても、実母に対してアンタ呼ばわりは、どうなのかなって思いますけどね。それにしてもロズベルさん、外見は大人しそうだったのに発言はキツイですね。何となく性格の悪そうな気配がします。
お読み頂きましてありがとうございました……。




