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成る程。では、お互い不干渉といきましょう。  作者: 夏月 海桜
キーマン探しを開始する魔法学園の留学生活。
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2度目。ーーキーマンとなるのは、やはりロズベル様みたいです。・10

「ありがとう、クルス」


「いえ。本当の事ですから」


私は照れながらも礼を述べクルスは表情を変えずに事実だ、と告げた。それが更に照れ臭いんだけどね。クルスには寮まで帰って来る間にドミーとタニアさん兄弟の話を聞かせてあるから(さすがにクルスは日本語の勉強はしていないものね)意見が聞ける。そのクルスがそう考えてくれたのは嬉しいのだけど。


「そうか。つまり私は皆が信じてくれたけれど、普通は信じられるような話ではないから……」


「ええ。たとえ母娘といえど、信じてあげたいけれど戸惑っていたのではないか、と」


「結果。母親に放置されたような形になってしまったのかもしれないわね……」


ロズベルさんの母親が放置していたのか、それはこちらも分からない。ただ、結果的にそう見える形になってしまった。それは母娘共に不幸な事かもしれない。何にせよ、もうこんな状況に陥ってしまったのだ。個人の妄言レベルだ、と切り捨てられる段階では無くなりつつある。望むと望まないとに関わらず、ロズベルさんの母親はそういった状況に陥った。


「ロズベルさんの母親が何を望んでいるのか分からないけれど。話は聞かないと、ね」


「はい。全ての状況を分析してなるべく良い形で落ち着く事を願いましょう」


「そうね」


「こう言ってはお嬢様を困らせるかもしれないですが」


「なぁに?」


「お嬢様から国家機密レベルのお話は伺いました。お嬢様達が2度目の人生を生きている原因を。私は……お嬢様の人生の3度目が無い事を祈っています」


クルスの発言に、私は目を瞬かせた。その可能性は考えていなかった。その魔法が発動するには条件が揃わないといけない、とは聞いた。条件も揃い難い、と。でも、どんなに条件が揃い難かろうが、現に今は発動してしまっているのだ。3度目が無いと何故言えるのだろう。タータント王家しか使えない魔法なのかも分からないけれど。少なくとも現タータント国王陛下は使えるのだから、かの方が後悔しないよう、魔法を発動させないように、なるべく皆にとってのある程度納得行く落とし所を見つけるしか無かった。


「さすがクルスね。私はその可能性に気付いてなかったもの。ロズベルさんの母親に会う時は、あなたもついて来てくれると助かる」


「お嬢様が仰るならば」


クルスの腕は今更疑うべくも無い。けれど、その頭の回転の速さは改めて知ったと言えるわね。前回の人生では、もっとクルスとは距離を置いていたから。ちょっと思ってしまった。前回の私、頑なに考えを変えなかったからもったいない事をしていたな。って。距離を置かないでいたら、前回でもクルスとこんな風に話せていたのかもしれないのに、ね。


「ただいま戻りました」


「お帰り、デボラ。お使いご苦労様。ありがとう」


男子寮へ行ってジュストに手紙を渡すようにお願いしたデボラが帰って来て、私は労う。それから直ぐにお茶を淹れようと動こうとするデボラをその場に留めて、私がお茶を淹れた。偶にはこういうのもアリよね。


「それで、ジュストは何か言っていた?」


手紙を託すのと同時に返答ももらって来るようにお願いしていた。


「全然自分に話してくれないんだな、と自嘲しつつ、了承はされました。日程と場所は後程連絡して欲しい、と」


そう、と頷いた私は、ジュストに簡単に話せる内容ではない事まで話していたから仕方ないのよね、と内心で溜め息をついた。別にジュストを仲間外れにした、とかそんな単純な話ではないのだけど、まぁ何も話さなかったのは、ちょっとだけ申し訳なかったかしらね。クルスとデボラと3人でお茶会をしていたところへアレジが帰って来た。


「ああっ! お嬢、ズルイ! 俺もお嬢とお茶したいから頑張ってきたのに!」


「あら、お帰り。アレジ。ご苦労様。たった今始めた所よ。報告も聞くから座って」


それにしても。前回の人生はクルスと基本的に多く接していたけれどアレジやガリア、他の影達とはあまり関わらなかったから、何故こんなに懐かれているのかさっぱり解らないのよね。お茶を淹れつつそんな事をツラツラ考えていた私は、とにかく結果報告を聞く事にしよう、と切り替えた。


「報告します。簡単に言うと。動きが怪しかったのは、サヴィ・カリオンでした」


サヴィが怪しい⁉︎ あの良く言えば博愛主義。悪く言えば軽率な誰とも仲良しのサヴィが?


「私……全然疑っていなかった」


「そりゃそうですよ。お嬢の警戒心は、基本的に自分とセイスルート家とお嬢が大切にしている人対象ですからね。それ以外は若干警戒心が弱くなってもおかしくないでしょう。寧ろ一日中どころか常に警戒していたらお嬢が倒れるでしょ」


アレジがあっけらかんと指摘して。私も確かに、と頷いた。


「サヴィ・カリオンはですね。アリシャ王女殿下を警戒していました」


一瞬言葉を詰まらせた私の動揺を見抜いたのだろう、アレジは静かな表情で凪いだ目で、続きを話して良いか、確認してきた。続けるように先を促す。


「というのもですね。ドナンテル・ノクシオ両殿下の婚約者選定の会、シオン帝国の皇女や上位貴族の令嬢達も数名参加していたようなのです」


「それなのに、ドナンテル殿下が選んだのがアリシャだった、から?」


「ええ。何か裏があるのか探っているようですね、サヴィ・カリオンは」


「何故サヴィがそんな事を……」


誰に命じられたにせよ、友人が友人を探っている、と知っては心中穏やかにはなれなかった。

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