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成る程。では、お互い不干渉といきましょう。  作者: 夏月 海桜
キーマン探しを開始する魔法学園の留学生活。
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2度目。ーーキーマンとなるのは、やはりロズベル様みたいです。・7

いつもお読み頂きましてありがとうございます。あとがきにてお知らせがあります。

「情けないですね、私。こんなに怖がって先に進めない。こんな体たらくで良くもまぁ人様に説教出来るものです」


「恋って人を臆病にするからね。でも愛は人を強くする。それが俺の持論」


「愛は人を強くする?」


「恋より愛が強いって考えられているからさ、好きより愛してるの方が想いの強さを表すように、愛してるって言葉を紡ぐ。それを否定するわけじゃないが、愛とは見返りの無い想いだと思う」


「見返りの無い想い」


「異性間の恋愛だけが愛じゃない。家族・友人・師弟……全て、言葉に恋は付かないのに愛は付く。それは愛の方が大きいから。だが、異性間、或いは同性間でも構わないし、性別を問わなくてもいいけれど、要するに性欲を伴う、結婚したいと思う、自らのモノにしたいと思う、そういった愛だけが恋と付く」


「つまり。独占欲とか所有欲とかが出てくるような気持ちが、恋?」


そう思うと恋とはなんて生々しいのだろうか。


「醜いと思うかい? ドロドロとして生々しいとか。でも恋だけはそういった気持ちになるものじゃないか?」


「でも親が子を自分の言いなりにしようとか」


「それは愛か?」


「……いいえ」


「それは只の欲だ。只の欲が一番質が悪い。俺自身はね、あ。日本人の俺だよ? 浮気も不倫も容認派なんだ。別に俺がそうしていたわけじゃないけどさ。否定はしない考えなんだ」


いきなりの話に私は驚いて目を瞬かせる。


「と言うのは……」


「俺に害が無いなら。ってわけじゃなくて。お互いのパートナーが納得しているなら、ということ。君とヴィジェストが婚約していても、ヴィジェストに恋人が居る事を君は容認した。それは君が納得したこと。だからといって君を蔑ろにしたヴィジェストを擁護するわけじゃない。でもその時の君は、恋人が居る事を容認したのは確か」


「……はい」


「君の気持ちは嫌だっただろうけど、でも王命で結ばれた婚約だから、自分が正妃になる事は決まっていた。ロズベルは正妃にはなれなかった。そんな打算が無かったとは言えない。違う?」


「そう、かもしれません」


「だから恋人の存在を認めた。という部分もあるかもしれない。とにかく、その時の君は納得した。これなら浮気だろうが不倫だろうが俺は良いと思うんだよ。でも大概はパートナーに恋人の存在やもっと醜い性欲を吐き出すだけの相手の存在について、パートナーに知らせるか? と言ったら、無いだろう? 隠すならまだしも堂々と見せつけておいてパートナーにフォローも何も無いのは男女問わずに許せない」


「でもそんな事を話されて分かりました、と納得する人なんて少ないんじゃ……」


「そうだよ。だからパートナーを納得させられないなら、浮気も不倫もするべきじゃない。自分さえ良ければパートナーも浮気若しくは不倫相手も傷つけて良いわけじゃない。絶対バレない自信があっても許される事じゃない。実際、自分が生きている間にバレなかったとしても、死後にバレる事も有るかもしれない。そうなったら残されたパートナーは、問う事も責める事も嘆く事も許す事も何も出来やしない。だから、俺は思うんだよ。


ーーパートナーが納得していないのなら、浮気も不倫もするべきじゃない。


ってね」


この人の持論は、どんな経験をすれば導かれるのだろう。納得して許した事があるのか、そうしている人を見ていたのか。また納得していない、或いは死後にパートナーの裏切りを知った人を見た事があるのか、経験したのか。私には想像が付かなくて何も言葉が出てこない。


「だから、ケイトリン。君は怖がらなくていい。ヴィジェストを奪われた気持ちは消えないだろうけど。君は嫌だったとしても、ヴィジェストに恋人が居る事を容認出来る程の強い意思と大きな心がある。たとえドミトラルが、ケイトリンからロズベルに心が移ったとしても、それは君自身の所為ではなく、ドミトラルの所為。君が卑屈になる事でもなく君が自身を責める事でもない。何も恐れる事なんて無い。それに、まぁデスタニアが言っているし、俺もそうだと言い切れるけど、後輩……ドミトラルの事を信じてやって欲しい。アイツは君以外に心が移る事は無いから。そうだろう?」


「当たり前だ。ケイティ、俺が他の女を好きになるわけないだろう。そんな心配をしていたのか?」


怖がらなくていい、と私を懸命に諭してくれていたタニアさんが最後に私から視線を外したところで、背後からドミトラル様の声が聞こえた。私は恐る恐る振り返ると、ドミーが苦笑して「有り得ないから安心してくれ」と私の頭を撫でる。


不思議と、強張っていた心と身体が解れて温みを感じた。


「はい」


ドミーの温かな手からじんわりと温度が全身に行き渡るように、私の隠れていた恐怖も消えていく。


「何歳になっても人は間違いをするし、愚かでもあるけれど。間違いを正せる生き物でもある。というかね、恋心だろうが性欲だろうが暴走させて、パートナーを傷付けるような奴は男女問わず痛い目に遭うべきだね。浮気も不倫もパートナーが傷付かないなら構わない。そうでないなら、理性を働かせて考えるべきなんだよ。人間は思考力という力を持っているんだからさ。本能や感情のままに暴走した後、自分の今後は? パートナーの今後は? と考えるべきなのさ。それが出来ないなら、そいつは人間じゃない。思考力が無いのは人間とは言えないだろう」


ボヤくように持論を展開するタニアさん。その本心は……浮気も不倫も容認したくない派なんじゃないか、と、ふと思った。

なんだかんだで280話となりました。300話記念にいくつか考えております。アンケートを実施しますので、宜しければ活動報告をご覧下さい。期間は3/22〜31までと致します。詳しくは活動報告にて。

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