2度目。ーーキーマンとなるのは、やはりロズベル様みたいです。・5
いつもお読み頂きまして、ありがとうございます。
「ヒロイン・ロズベルってゲームではどんな存在か知ってる?」
ええと。挨拶もそこそこに、タニアさんが切り出した言葉がコレですが。いきなりですか。いきなり本題ですか。いいですけどね。
「私自身は乙女ゲームはやらなかったのでドミトラル様から聞かされた設定ですが。しかも朧気なので違う所もあるかと思いますが。確か、ヴィジェスト殿下の幼馴染みの子爵令嬢で、所謂ヴィジェスト殿下の乳兄弟。しかしお母様が乳母の役を退くとヴィジェスト殿下とは接点が無い、でしたっけ。子爵家に戻ったものの、貧乏な子爵家で母と身を寄せ合って生きていて、学園に入学出来る年齢になりなんとか学費を支払って入学し、その入学式でヴィジェスト殿下と再会。そこからジュスト・ボレノーやライル・カッタートとも顔を合わせて親しくなっていく。で。ヴィジェスト殿下ルートだと私は悪役令嬢なので、嫌味と嫌がらせのオンパレードでしたっけ。嫌味は婚約者の殿下に近づくな、とか、貧乏子爵家の令嬢が殿下に相応しくない、とか、嫌がらせはドレスを汚すとか? そんな感じらしいですね」
なんとか記憶を引っ張り出してタニアさんに答える。タニアさんは深く頷いていたのに、私がそこで黙ると首を傾げた。
「それだけ?」
「え、私の記憶に有るのはこれだけです」
前世で友人から聞かされた気もするけど。まぁドミトラル様から聞いた事を私が忘れている可能性が高い。私と友人はオタク仲間ではあるものの、その方向性は別だったので、語る友の熱い気持ちは否定しなかったけれど、あまり興味の無い乙女ゲームの話は忘れている方が多い気がする。だからドミトラル様から聞かされた事を思い出してみたけど、それも1度目の人生だったしね。
そんな事をはっきりと言えば、タニアさんが「あー成る程ねぇ……」と呟いた。
「何かマズイんですか?」
私がタニアさんを見れば、曖昧な微笑みを浮かべるだけ。ん? と思いつつ、隣で黙りっぱなしのドミーに顔を向ければ苦笑された。
「10代・20代の女性をターゲットにした乙女ゲームだから、自信がそれなりに有ったんだよね。それを全くやった事が無い女の子に会うとも思わなかったし、それどころか乙女ゲームそのものに興味を持たない女の子がいたことに、ちょっとカルチャーショックみたいな感じだよ」
つまりアレですか。乙女ゲームそのものに興味が無い私は珍獣的な感じに思えたんですか。そうですか。別にいいですけどね。というか私はゲーム未経験者だとドミーから聞きませんでしたかね。まぁいいです。
「それで。私の記憶だとロズベル様にはまだ何かあるってことですか?」
やっぱりアレですか。隣国の前王弟殿下の娘疑惑ですか。ロケットペンダントにあった紋章って前王弟殿下のものらしいですもんね。ドナンテル・ノクシオ両殿下が仰ってましたもんね。あ、そういえばお二人から手紙が届いてましたね。シオン帝国に来てから3回目の手紙。まだ返信してないから、今日にでも書きましょう。ドミーと再会した事も書いておこうかな。
「うーん。なんだっけ。王弟がどうたらこうたらって話なんだけど」
タニアさんが気まずげに切り出しますが、どうたらこうたらって……えっ、アナタがシナリオを書いたんですよね?
「タニアさんがシナリオを書いたのでは無いんですか?」
「それはそうなんだけど。前にも言った通り元々は夢を見てそこからシナリオを書いたからね。夢になかった部分は確かに勝手に付け足したけど。逆にボツにしたアイディアもあってさ」
「それがロズベル様が隣国の前王弟殿下の娘って設定ですか?」
「ちょっと違う」
シナリオのボツになったアイディアと聞いて勢いよく尋ねれば、タニアさんから否定された。ちょっと違う?
「正確に言えば、ロズベルではなくロズベルの母親が、隣国の前王弟殿下の娘、という設定だったんだ。俺もドミトラルに質問されるまで忘れてたけど」
あー。そっちですか!
年齢的にはどちらでもおかしくないのだとは思います。現在の隣国の国王陛下は30代くらいだったと思います。半ばだか後半だか忘れましたけど。その父親である前国王陛下(ご存命ですよ。しかも元気です)は50代前半から半ばだったような……。その弟ですから40代後半から50歳そこそこ。
ロズベル様の本当の父親でもおかしくないですが。ロズベル様のお母様(何歳くらいの方かは知りませんけど)が前王弟殿下の娘、と考える方が年齢的にはしっくり来ますね。ロズベル様の本当の父親だとロズベル様のお母様と何歳差の夫婦もしくは恋人なんだろうなぁとは思っていましたからね。
となると、ロズベル様は隣国の前王弟殿下の娘ではなく孫という事ですか。
隣国の前王弟の年齢云々に関して以前どこかで書いていましたら、齟齬が出ていたらすみません。
今更ながらルビの件ですが。今話では、ロズベルと書いてルビはヒロインと有りますので、ヒロインとお読み下さい。ドミトラルと書いて後輩と書いてあるのも後輩と読んで頂きたいと思います。
私自身が他者様の作品を読んでいてルビが振られている時に、ルビの方で読んでいると話が繋がらない事が有りましたので、もしや私の作品でもそういう事があるやもしれない、と思いまして敢えて書かせて頂きました。




