2度目。ーーキーマンとなるのは、やはりロズベル様みたいです。・1
ドミーがまさか、タータント国王陛下に命じられてロズベル様探しをしていたなんて……。でもそれならばシオン帝国に居る理由が解ります。そしてドミーが今回の人生で画家になる未来を避けていた事も驚きました。その決断で良かったのか。そう思いますが、ドミーが考えたうえでの決断なのですから、私はそれを受け入れるだけです。彼が画家になるより、私を優先というのは気恥ずかしいですけどね。
色々と衝撃的な事実が出てきたわけですが、やはりこの巻き戻り人生に、国王陛下が関わっていた事は本当に衝撃的でした。タータント国王陛下が魔法を使えるとは。魔術師長様に密かに教わっていた、という事は。シオン帝国から招いたという事です。タータント国に魔術師長と呼べるくらいの方は居ませんもの。……というか、あの国に魔術師が居るかどうかすら、私は知りませんね。陛下や国の中枢でもない限り知らないのかもしれません。
「そういえば」
陛下が魔法を使えると聞いて思い出した事があります。
「何?」
「いえ、昔。お父様がタータント国王家の起源を少しだけ話していた事を思い出しまして。覚えていなくてもいい事、と言われたので忘れていましたが。元々現・タータント王家の初代は魔術師だったそうです。ですから陛下が魔法を使えてもおかしくないのですね」
そんな事をチラリと話しておりましたね。あれは多分、4.5歳の頃だったような気がします。覚えていなくてもいい、でも話しておこう、という感じで話してましたが。今思えば、子どもにとんでもない秘密をサラリと話したわけです。なんでそんな話をしたんですかね。そして何故私に話したんでしょうか。それとも“私”に話したのではなく“誰でも”良かったんでしょうか。……今考えても仕方ないですね。
「セイスルート家は王家より古い家なんだっけ」
ドミーが確認してくるので私は頷く。
「じゃあ現在のタータント国が……王家が誕生した所をセイスルート家の先祖は知っているんだね」
おっと……久々にタニアさんが喋りました。まぁずっと私とドミーで情報交換してましたからね。反省です。もう少しタニアさんにも配慮するべきでした。
「そうですね。もしかしたらウチの書庫にそういった歴史書か何かあるかもしれないですね」
そう言って笑った所でチラリと時刻を確認した所……
「あ!」
「どうした?」
「ごめん、そろそろ帰りの時刻」
あまりにも濃厚かつ衝撃たっぷりな情報交換になったので、気付いたら許可を得ていた外出時間までもう少し。ワタワタと慌てて店を出る。また後日今後の事を話そうと日時を決めて。お店からすれば何時間も知らない言語で話している私達は怪しかっただろうな。邪魔だったかもしれないし。申し訳ない事をした。
「間に合った!」
女子寮の寮長さんに帰った事を伝えれば、伝言を預かったと手紙を渡された。伝言? 首を捻りながら手紙を見れば、ジュストから。俺に何も言わずに何処に行った。明日、教えろ。という内容が貴族らしく飾られた言葉で書かれている。……なんで一々ジュストに許可を取らないといけないの?
ちょっとイラッとする。
仮にロズベル様探しの相棒で友人だとしても、こんな上から目線で言われる筋合いは無い。おまけに出かける許可を得る意味も分からない。ジュストって婚約者……居なかったな。恋人も……居ないはず。あー。女の扱いを知らないのね。もしや私を女扱いしなくても良いとか思ってる? 有り得そう。男友達に接するような態度を私にしても構わない、とか思っていそうだわ。
まぁ男友達と同じ扱いするのは気を許してくれている証拠かもしれないけど、だからと言って何を言ってもいいわけじゃないのよ。これは明日、女性の扱い込みできっちり話してあげるべきね。友達である私だってイラッとするんだもの。これが恋人や婚約者に対してもこんな接し方をしていたら……怒りを呼ぶだけじゃなく別れや破談にされてもおかしくないレベルよ。
そんな事を考えながら自室に入ればデボラが「お帰りなさいませ」とニコリと笑ってくれた。帰ってきたな、と思いつつ「ただいま」と笑い返した私は、着替えてソファに座り込む。タイミング良く出されたお茶を一口飲んでから、いつの間にか集まっていたクルス・アレジ・ガリアと側に控えるデボラを見回した。
「お嬢様、幸せそうですね」
「ええ。大好きな人に会えるって嬉しい事ね。そして想いを伝えられるって幸せだってようやく解ったわ。前回、言えずに終わってしまったから……余計にそう思うの」
デボラがにこやかに私が幸せそうだと言うから、私も素直に気持ちを伝えた後。表情を引き締めて4人を見た。私の空気が変わった瞬間に空気を変えて来るから、さすがだな。と思いながら今日の情報交換について教えられる範囲で4人に伝える。陛下が魔法を使った云々は話せないから、私が2度目の人生を生きている事の理由は判ったけれど、話せない。と言えば聡い4人は察したようでそこら辺は突っ込まない。
まぁ話さないのではなく話せないと言っている時点で何となく察せられるものだろう。それでも話せる範囲を語れば、所々、影として精神的にも鍛えられている4人でも息を呑むような出来事なのよね、と改めて実感していた。




