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成る程。では、お互い不干渉といきましょう。  作者: 夏月 海桜
キーマン探しを開始する魔法学園の留学生活。
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閑話・2度目。ーー愛し君の死と巻き戻り・4

お待たせしました。

「まぁそんなわけで、学園卒業までにはケイティがヴィジェスト殿下と婚約したかどうか判るし、日本人だった頃の記憶があるおかげで自炊は何とか出来たし。これでもあの頃は一人暮らししていたから」


俺はケイティに1度目の人生の話と、2度目を迎えて国外に出るまでを語っていた。初恋の話や初彼女の話は、そういう相手が居たよってだけ。娼館通いについては、黙秘だ黙秘。ケイティの事だから聞いても普通の令嬢より受け入れやすいだろうが、絶対言わない。距離を置かれたり嫌われたりしたら、死ぬ方を選ぶ。だから死守する。


2度目の今は、初恋も初彼女も1度目と同じなので其処は仕方ないが、長兄と次兄に娼館に連れて行かれたのは、将来の話を父さんにした後だった。だから2度目の今は、長兄に誘われたが拒否した。だから身体は清いままだ。ケイティ以外触れたくないから。いやまぁ1回だけ経験して通わなければ良いとも思うんだけど、どうにもケイティに申し訳なくて無理だった、というのが実際のところ。


今回の次兄は先輩の意識があるせいか、長兄に肩入れするより俺の気持ちを尊重してくれているし。だから俺が娼館に行かない事も「まだまだ子どもなんだよ」の一言で納得させていた。まぁ15歳だしな。ケイティは1度目の俺のその後を聞いてとても辛そうな顔を見せる。でも簡単に謝って来ない所を見れば、謝ったら俺が許してしまう、と気付いているからだろう。ケイティは俺に許されたいと思っていないのだ。


本当にそんな所も可愛いなぁ。


「ドミー」


「ん?」


「学園を卒業してから直ぐに隣国へ?」


ケイティに尋ねられてニヤニヤしていた顔を戻す。それから頷いた。


「長兄の結婚式が終わってから直ぐに兄さんと先ずは隣国に。ケイティも婚約をしなかったから、もしかして記憶があるかもしれない、と思ったよ。それに15歳のあの日まで、2度目の人生の俺は日本人の記憶が曖昧だったんだけど、あの日から1度目の人生と共に日本人だった頃の記憶もある程度鮮明になって。そこで不思議な事に気付いたんだ。()()()()()()()()ヒロインが入学して来たことに」


俺の最後の一言に、ケイティがハッとした。うん。俺だって違和感を覚えたんだ。ケイティだってそうだよね。俺とケイティは7歳差だ。そしてメインヒーローのヴィジェスト及びヒロインのロズベルは、更に2歳下。つまりロズベルと俺は9歳差がある。まぁ貴族の結婚は大概政略目的だから、例えば10歳の令嬢と23歳の令息が婚約した、ということも無いわけじゃない。或いは17歳の令嬢が30代後半の先妻を亡くした男の後妻とか。


逆もある。14歳の令息が20歳の令嬢と婚約した、とか。18歳で40代の夫君を亡くした女性と結婚したとか。逆のパターンはかなりレアな可能性だが。そういった意味では9歳差の俺とヒロインが恋人同士になっても別におかしくない。日本人の時、ゲームを配信した後にも年齢差が……などというクレームは無かったと思う。こっちの世界でもそんな年齢差は良くあるし。


1度目は確かに9歳差だった俺とヒロイン。

なのに、何故か2度目の今は、5歳差なのだ。つまりケイティよりも2歳年上ということ。学園在学中にヒロインを見た時の衝撃は、何とも言えなかった。だが、更に衝撃的だったのは学園入学してから1ヶ月したかどうかくらいで、隣国に移っていたこと。年齢についても衝撃なら隣国に移った事も衝撃だった。


学園卒業後に隣国へ向かうつもりだった俺に、最も衝撃的な出来事は。内密にタータント国の国王陛下から呼び出された事だっただろう。ケイティも国王陛下からの呼び出し、という俺の話に驚いて目を丸くしている。


「実は、俺・ケイティ・ヴィジェスト殿下。そして多分ロズベル。この4人ともう1人、時間が巻き戻った人が居るんだ」


俺が静かにその言葉を投げかけると、聡いケイティは「まさか……」と呟いた。うん、まぁこの流れだと最後の1人は誰か解るよな。


「うん。国王陛下、その人だよ。此処からは国王陛下が俺だけに教えてくれた話。他言無用の最高機密。いいね?」


俺の念押しにケイティと黙って聞くままのデスタニア(先輩)がゆっくりと重く頷いた。


「タータント国の国王の中には、時々先祖返りのように魔法が使える魔力持ちが現れるらしい。で、当代の国王陛下はまさにその魔力持ち。だから密かに魔法を扱えるように魔術師長に教わっていたらしい。魔術師長は代々王家に魔力持ちが現れるとその教師につく。で、国王陛下が魔力持ちだったから当時の魔術師長は、魔法を教えていた。そこには王族しか使えない魔法もあって。その一つが、国王という座にある者だけが使える魔法・時戻しだったそうだよ」


俺がゆっくりとその事実を伝える。ケイティは息を呑んでから叫びそうになる自分の口を両手で塞いでいた。まぁ驚くよね。俺だって聞いた時は、暫く理解出来ずに放心していたからな。


どうやら国王陛下は、魔術師長から禁断の魔法として時戻しを教わったらしいのだが。使用は禁じられていたとか。……命と引き換えの魔法だったから。それなのに国王陛下は使用したんだよ、ケイティ。何故か解るかい?

お読み頂きまして、ありがとうございました。

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