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成る程。では、お互い不干渉といきましょう。  作者: 夏月 海桜
キーマン探しを開始する魔法学園の留学生活。
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閑話・2度目。ーー愛し君の死と巻き戻り・3

本日2話目の更新です。

それからデスタニア兄さんとアレコレ話し合って、どうやら先輩だと気付いた俺は、今度は自分の番とばかりに前回のドミトラル・レードの話を聞かせる。全てを話し終えた俺に、兄さんであり先輩が難しい表情で口を開いた。


「おそらく、別世界のドミトラルではないな」


「何故」


「俺が生まれ変わりではなく、憑依しているようだ、と話しただろう?」


「はい」


「実はな。90歳超えた爺さんで死んだんだが。いや、死んだかどうかも意識が朦朧として分からない所で、声が聞こえた」


「声?」


「その声が何かは解らない。ただ、人生が狂った者が何人かいる。その何人かを貴方は知っている。貴方のその知識が何か役立つかもしれないので、狂った者の人生を狂わせないように助けて下さい。そう聞こえたら、デスタニアと共存していた」


人生が狂った者。

そんな事を言われても了承もされずに勝手にデスタニアの意識と一緒にされても、こっちは良い迷惑だ!


そんな事を言いながらも先輩は、俺の話を聞いて、この世界が俺たちが作った乙女ゲームの世界だと気付いたという。


「それなのに、更なる別世界なんて意味が分からない。時間が巻き戻ってやり直しをさせられている、と考えた方がスムーズだ」


そんなわけで巻き戻った時間のやり直しだ、と結論付けた俺たちは、人生が狂った者とやらを考える事にしようとして……俺は思い出した。今日は「画家を目指します」宣言をした日だ。父さんとの約束がある。先ずはそちらを片付けなくては。


「ちょっと父さんと将来について話し合って来るよ」


「画家を目指す、と?」


また後で話し合おう、と次兄というか先輩というか、彼にそう言って部屋を出ようとしたところで、何気なく尋ねられたその一言に俺は足を止めた。


画家を目指す。


1度目の人生はそうだった。そこに疑問も抱かなかったし、ある程度成功もしていたと思う。だが。今はどうだろう。画家になりたいだろうか? 答えは否だ。寧ろ今の俺が望むのは、ケイティ……ケイトリン・セイスルート、1人だけ。彼女と今度こそ恋人になりたい。いや、彼女を妻に迎えたい。だが、彼女は今のままではヴィジェスト殿下の婚約者になってしまう。それは嫌だ。


だったらもうセイスルート辺境伯家に突入して俺が先に婚約を結ぶべきか?


ーーという事を、俺は考えていただけだと思っていたのだが。次兄曰くダダ漏れだったらしい。つまり内心を吐露していたので、俺は次兄に「ちょっと落ち着け」と止められた。


「取り敢えずケイトリン嬢がヴィジェストと婚約するか分からないし、もしそうなるとしても、それは狂ってない人生かもしれない。それに、15歳が8歳の令嬢に婚約を申し込むのに、いきなりは不味いだろう。大体、こっちは向こうを知っていても向こうはこっちを知らないかもしれない。それなのに何の接点も無い男爵家の三男坊が婚約してくれ、と辺境伯に特攻してもオッケーなんて出さないだろう。もし、ケイトリン嬢が前回を覚えていたなら婚約を回避するだろうし、覚えていなくてもケイトリン嬢が正式に婚約するのは、ケイトリン嬢が10歳の頃だろう? まだ時間がある。落ち着け」


そんな感じで説得され、先ずは父さんに「画家にはならない」宣言をする。その後はデスタニア兄さんと共に将来について話し合う、ということに決まった。次兄は長兄のスペア人生が終わったとしたら、どうするのか模索中という返答を、やはり15歳の時にしている。だが、それからもう数年は経つ。そろそろ本気で考えなくてはならないだろう。


「いっそのこと、国外に出るのもありかなぁ」


俺はポツリと呟く。前回の人生でケイティを失った直後、国王陛下から隣国のコッネリ公爵とやらがヴィジェストに刺客を送って、その刺客からヴィジェストを庇ってケイティは死んだ、と聞かされていた。


思い付きだが、中々良い案に思える。隣国のコッネリとやらを調べる、とか、ヒロイン・ロズベルの謎を解くとか。そこで、ハタと思い出した。


「兄さん」


「なんだよ」


「兄さんのシナリオでは、ヒロイン・ロズベルって隣国の前王弟の血筋、という設定だった?」


「は? なんだそりゃ」


俺も関わっていたけど、覚えていないシナリオも多いから、シナリオを実際に書いた先輩に訊ねれば怪訝そうに首を捻った。……先輩の記憶にない設定? もしや、コレも人生が狂った者である証拠? そこで俺は決めた。


「父さんには、国外を旅しながら生き方を模索する、と答える事にするよ。兄さんと一緒に、と付け加えて」


そんな俺の曖昧な将来像に父さんどころか、母さんも長兄も猛反対して画家の道を提示して来たが、先輩の記憶があるデスタニア兄さんが「俺もこのレード家を出て何をしたいのか、未だに解らない。だからドミトラルと共に探したい」と、俺と共に説得したので、俺たち兄弟は、国外に出ると決めた。それには最低でも、俺の学園卒業と、2人で生きて行けるだけの甲斐性(生活力)があるのか、卒業までに見せる事が条件だった。

お読み頂きまして、ありがとうございました。明日はいつも通り、朝に更新予定です。(7時とは言えませんが)

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