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成る程。では、お互い不干渉といきましょう。  作者: 夏月 海桜
キーマン探しを開始する魔法学園の留学生活。
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閑話・2度目。ーー愛し君の死と巻き戻り・2

大変お待たせしました。

本日1話目の更新です。

15歳のその日の朝。デスタニア兄さんの滅多に聞かない叫び声で目が覚めた。慌てて家族中が兄さんの部屋の扉前に集合した。


「デスタニア!」


「どうした、大丈夫か⁉︎」


長兄と父が呼びかけ母もオロオロとしていて……そこでふと気付いた。義姉さんがいない。長兄の所に嫁に来てくれた同じ男爵家の次女である義姉さん。何故? そう思いながらも俺も次兄に声をかける。


「兄さん! どうした!」


代わる代わる声をかけた事が効を奏したのか、次兄の叫び声が止んで、扉は開かないまま「なんでもない。悪夢を見た」という声が聞こえてきた。なんだ、悪夢か。皆がホッとして次兄の部屋から去ろうとしたところで、日本語が聞こえて来た、気がした。……何故⁉︎ 取り敢えず、寝巻き姿のままだから皆が着替えに各自の部屋に戻ったのだが。


「どういう、ことだ?」


何故か学園の制服がクローゼットに掛かっている。学園なんて卒業してから何年が経って……いや、そういえば。俺はさっきまで何をしていたんだろう。ケイティの絵を、笑顔を拗ねた顔を怒った顔を泣いた顔を描いて描いて描き続けて……いた、はず、だ。それに。


「俺はこの家から出ていたはず……」


何故、父さんと母さんと兄さん達がいる? 義姉さんが居ないのは何故だ? 学園の制服が有る理由は? ふと、鏡を見ればそこに映る俺は、まだ少年っぽさが抜けていない。……少年?


「まさか」


時間が巻き戻った? いや、或いは別の世界の俺、か? 日本人だった俺がこの世界に転生したのだ。また別の世界に転生してもおかしくない。きっと、ケイティの絵を描くだけの日々で死んだのだろう。だが、それにしてはドミトラル・レードのようだ。別世界のドミトラル・レードに、あの世界の俺の記憶が移された、のだろうか。


いや、だが。時間が巻き戻った可能性も無いとも言えない。もし、別世界のドミトラル・レードならば、前回のドミトラルの記憶にある世界とはかなり違うと考えて良いと思う、が……。いや、分からない。制服は同じだし、家族構成も同じだ。……情報が欲しいな。


「ドミー! 朝飯だぞ!」


「はいはい!」


ドンッと叩かれたドアの向こうで長兄が叫ぶ。うん。少なくとも義姉さんと結婚前の兄さんなのは間違いない。義姉さんと結婚するのは俺が学園を卒業した直後だったから、まだ数年は有るだろう。さて。着替えて朝食だ。


そう思ったのだが、次兄は悪夢がよっぽども応えたのか顔色が悪い。俺の真向かいで真っ青な顔色のまま食事を摂っている。ん? なんだかブツブツ呟いているな。何を言っているんだろう。


「……は、にぎ……だろ。朝は……だろ。朝はおにぎりだろ」


微かに呟いている言葉が繰り返されているようなので、注意深く聞いていると、突然意味のある言葉になった。


朝はおにぎりだろ?


日本語だし、おにぎりなんてドミトラルとして生を受けてから見た事も聞いた事も、当然食べた事もない。……デスタニア兄さんって日本人だった? いやいや、だが、俺の知る前回の兄さんに、日本人の記憶なんてまるで無かった。……やっぱりここは別世界か? 取り敢えず、目が死んでいる兄さんが何とか食事を終えた所で、兄さんに声をかけようとしたのだが。それより早く。


「そうだ。ドミトラル。お前、今日があの日の問いの答えを出す日だぞ」


「えっ?」


父さんからそんな事を言われた。正直なところあの日の問いの答え、と言われてもいつ、何を問われたのか分からない。


「忘れたのか。お前の誕生日から1ヶ月が経った今日が、今後のお前の将来について、答えを出す日だと言ったではないか! 考えていなかったのか!」


あー。確かに15歳の誕生日に、将来についての展望を尋ねられて1ヶ月後に答えを出せ、と前回言われたな……って、じゃあ俺は15歳なのか⁉︎


「あ、いえ、覚えてますよ! ただ、デスタニア兄さんが顔色が悪そうで心配だったので、咄嗟に理解出来なくて」


済まない、兄よ。巻き込んだ。俺の返事に父さんも「ああ、そうか。そうだな。デスタニアの顔色が悪いな。悪夢が余程引き摺るものだったか」と、納得する。


「後でこちらから父さんの執務室へ参ります」


「うむ」


そうか。あの日なのか。俺が画家を目指します! と、はっきり父に宣言した日。それまでも画家になるだろう事は何となく解ってくれていたみたいだが、決意として聞いておきたかったのだろう。あの日をもう一度迎えるのか。そう思いながらもう自室に戻ってしまったデスタニア兄さんの元を訪ねた。


「兄さん」


「……なんだ」


「ドアを開けて。ちょっと話があるんだ」


ノックをして呼びかけてもドア越しに会話をする次兄にそう言えば、片目が見える程度にしかドアを開けず。その隙間から顔を覗かせてくる。


「怖いよ、兄さん」


「用件を言え」


「中に入れてくれよ。きちんと話したい」


だが、次兄は拒もうとする。それどころか閉めようとしたから、慌てて阻止をして日本語で言ってやった。


「俺はツナマヨおにぎりが好きだけど兄さんは何味が好きなんだ?」


その俺の質問は、次兄にとって劇的だったようで、慌てて中に入れてくれた。

昨夜の分・本日の分と更新が遅くなりまして、お待ち頂いた方にはすみません。2話まとめて更新させて頂きます。ご注意下さい。

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