2度目。ーーまさかの事実が判明しまして、驚きの連続です。・9
遅くなりました。
「はいはい、そこ! イチャつくのは後にしてー。取り敢えずケイトリン・セイスルートの人生が1度目と違う事は理解した。というより俺たちが考えた乙女ゲームの設定とシナリオからも大きく逸脱している。まぁ1度目の人生からシナリオから外れているけどね。確認なんだけど、ケイトリンは日本人の記憶が戻るまでの自分と、戻ってからの自分の性格や思考が変わったと思う?」
タニアさんが見つめ合う私達に呆れつつ、話し合いに軌道修正をかけて、更にそんな質問をしてきた。日本人の記憶が戻るまでと戻った後?
「性格というか思考は、変わりましたね。ヴィジェスト殿下との顔合わせまでは、セイスルート家のために婚約を受け入れる、という気持ちで王子妃教育を頑張っていましたが、ヴィジェスト殿下に一目惚れをしたのでそこからはヴィジェスト殿下のために、王子妃教育を頑張ってました。たとえヴィジェスト殿下に恋人が居ても、正妻は私だから恋人は側妃か愛妾にするのだと思っていたんですよね。本当は結婚までには別れてくれる、と思っていましたけれど。でも、ヴィジェスト殿下は全く私に見向きをして下さらないし、恋人にベッタリだし。それならもうヴィジェスト殿下のために頑張る必要無いか、とあっさり恋心から冷めたのですけど」
一旦そこで口を閉じたのは、ドミーに話してあった事でもやっぱりちょっと申し訳ないな、って気持ちがあったからで。私がごめんね、って気持ちでドミーを見たら穏やかに微笑まれた。……この人、私の気持ちをきちんと理解してくれているんだなって思うと、顔が熱くなって両手で頬を抑えておく。……やっぱり熱い。
「で、でも、そうですね。ヴィジェスト殿下に対する気持ちは冷めたのですけど、辺境伯家が王家に睨まれて謀反とかそういった類の疑いを持たれるのは嫌だなって気持ちだけで、その後は生活していました。だけど。ドミーに会って日本人の記憶を思い出した後。お父様からの手紙で、別に王家にそこまで肩入れしなくて良いんだよ。みたいな内容を時々見ていた事を思い出したんです。それこそ婚約の話が出た8歳から婚約が決定して、セイスルート家を出て城に上がる10歳までだって私の気持ちを変えようと何度も言われていた事を思い出しました。それで、ここまで言われていたのだから、こんなに王子妃教育を頑張る必要もないんじゃないかなって、考え方に変わりましたね」
「……その程度?」
えっ。王子妃として頑張るのが私の人生だって考えの人生から、そこまで頑張る必要も無いって考えの人生に切り替わったのに、その程度と言われても……。タニアさん、アナタは私に何をお望みなのでしょうか。
「あー、ごめんごめん。言葉が足りなかったね。ケイトリンが病弱でも無かったし、我儘でも無かったのは分かったんだけど。その、一目惚れしたヴィジェスト殿下に恋人が居たわけでしょ? それがヒロインのロズベルだっけ?」
「そうですね。1度目の人生でヴィジェスト殿下と恋人だったロズベル様は、確か幼い頃からヴィジェスト殿下と相思相愛だったとか」
「そんな話だよね。で。そんな2人に嫉妬しなかった? とか、そういう話」
「ああ、ゲームでは私はロズベル様を虐める悪役令嬢でしたっけ? 嫉妬というか。まぁ確かに恋人が居ると聞かされて、一目惚れした直後に失恋か、と思いましたし、でももしかしたら婚約を続ければ振り向いてもらえるかもしれない、と思いましたけど。実際、しょっちゅう2人が一緒らしい、と噂を聞いて。仲睦まじく寄り添う姿を見たら嫉妬して虐めるよりも、私が割り込む隙は無いな、と見切りをつけたので」
「つまり、ケイトリンは日本人の記憶が無くても、ヴィジェスト殿下とロズベルに嫉妬は無かった。……ドミトラルから聞いてたけど、本当に俺たちが考えた乙女ゲームの設定とは全く違うね。まぁ、ヒロインがヴィジェストに幼い頃から一途っていうのも全然違うけど」
「えっ? 幼い頃に出会ってお互いを好きになっていたんじゃないんですか?」
「んー。匂わせだよね。幼い頃に出会って、お互いが大切だったけれど、事情があって離れ離れの2人が学園で再会した……という、匂わせ。はっきりと2人が思い合っていたとは書いた記憶は無いな。俺もデスタニアに憑依しているけど、日本人で孫も生まれたじいさんの人生の記憶が有るから、忘れているかもしれないけど。多分、はっきりとお互いが初恋だとは書いてない……と思うんだよね」
ヴィジェスト殿下とロズベル様が幼い頃から相思相愛だった1度目の人生を知っているせいか、乙女ゲームでも2人は初恋同士で事情があって離れてしまったけれど、ずっと互いを思い合っていたのだ、と思ってました。だから2人が再会したら直ぐから恋人になるのだとばかり。……あ、でも。それだと乙女ゲームとしては成り立たないのか。ゲーム要素が無いですもんね、最初から恋人では。乙女ゲームって、誰と恋に落ちるのか、攻略相手を決定して、好感度を上げて恋人になるまでの段階を楽しむのが目的でしたね。
それから考えると、学園で再会して直ぐに恋人になってしまったら、ゲームの醍醐味がゼロでした。……となると、1度目の人生でのあのお2人も、かなりゲームのシナリオとはかけ離れていたんですね。
お読み頂きまして、ありがとうございました。今夜の更新も遅くなるかもしれません。頑張ります。




