2度目。ーーまさかの事実が判明しまして、驚きの連続です。・7
「それから1度目の記憶が有った私は、ドミーに会えないとしても、ドミー以外の男性は嫌だったからヴィジェスト殿下との婚約の話は断るつもりだったの。だけど。実はそれだけじゃなくて隣国のドナンテル殿下とノクシオ殿下との婚約の話も出ていたとお父様から聞いて。全てを断ったのよね。それが良かったのか悪かったのか。何故かヴィジェスト殿下は私を婚約者候補者としてお茶会に呼び出すし、ドナンテル・ノクシオ両殿下が国を飛び出してウチに来るし。おまけに公式な場を設けて『友人』の称号を作って大々的に友人にしてくるし。ヴィジェスト殿下も負けじと私を友人にする、とか言い出すし。挙げ句の果てに虫除け的な感じで3人の殿下方の筆頭婚約者候補者になったし……」
2度目の人生スタート直後からの怒涛の日々を思い出して思わずゲンナリする。
「ケイティがモテるのは嫌だな」
ドミーが口を尖らせているんだけど、見た目は前回も思ったけれど、さすが乙女ゲームの攻略対象だけあって大人の色気有る美形なのに! 中身がソレとかギャップ萌えなんですけどー⁉︎ キュンキュンするー。きゃっ! の、キュン死にどころか、ギュンギュンする! ぎゃあああ! の、ギュン死にだよ……。語彙が可笑しいのは認める。うん、確実に私の心臓は今変な鼓動をしている。
辞世の句を詠むべきか。
内心でそんな事を考えながら、ドミーの可愛さに悶えている私に気づいたのか、タニアさんが咳払いをしてきた。あ。妄想してごめんなさい。話ですね、話。続けます。
「それから……あ、そうそう。隣国との小競り合いになる前に背後にいた貴族を炙り出したり。ヴィジェスト殿下も1度目の記憶が有った事が解ったり」
「「えっ」」
2人の驚きに私が言葉を止めると、「ヴィジェスト殿下にも記憶が有るのか?」とドミーに尋ねられたので頷く。タニアさんと2人で顔を見合わせて何か考え込んでいるようだ。
「ええと?」
考え込む2人に話を続けて良いのか、視線を向ければ続きを促された。
「それからヴィジェスト殿下はイルヴィル殿下とか、側近の2人にも記憶がある話をしていたみたいでイルヴィル殿下から確認されて。他にも私は、お母様とお姉様と私の仲があまり良いわけではないのだけど。前回の人生でお姉様が婚約解消されている事を踏まえてお姉様の状況や性格改善の話をお父様としてみて……」
「ケイティは、実際には姉がいるのか?」
アレ? そういえば前回の時に、ドミーには家族の話をしていなかったんでしたっけ? なんかドミーの家族構成は聞いていたし、私も話したつもりだったんですけど。
「います。お父様・お母様・お兄様・お姉様に私と弟ですね」
「そこもやっぱりゲーム通りじゃないんだな。俺のシナリオではケイトリン・セイスルートは、両親と兄とケイトリンの4人家族だったから」
タニアさんがそんな事を仰います。……お姉様と弟が居ない設定だったわけですね。
「まぁそれにしては、名前が同じとか世界観が似ているとか、そういったものが気になるけれど、取り敢えず話が先だな」
ドミーに再度促されて、病弱だったお姉様は前回の人生では全くと言っていいほど関わらなかったし、お母様も同じだった。ついでにお姉様は学園にも通っていなかったので、今回はお父様を動かしてお姉様に体力を付けさせたり学園に通わせてみたり、お母様とお姉様の依存し合った関係を改善させようとお父様と話し合ったり。お姉様を学園に通わせたり……。ついでにお兄様がお姉様の面倒を見ていた事まで話すと、ドミーとタニアさんが更に首を傾げました。なんでしょう。
「役割が分かれてる」
「は?」
タニアさんの端的な発言に、首を捻った私は悪くない。ドミーが補足してくれる。
「ケイティの姉が病弱なんだけど。俺達が作ったあのゲームでは、ケイティが幼少期に病弱だった設定なんだ。で。病弱なケイティを憐んだ両親と兄に甘やかされて我儘になっていく。成長してケイティは丈夫になっていくけど、我儘な性格は変わらないまま、ヴィジェスト殿下の婚約者に収まり……やがて、ヴィジェスト殿下の幼馴染みであるヒロイン・ロズベルとヴィジェスト殿下が接近していく事にケイティは嫉妬して、ヒロインを虐めていくって内容。もちろん我儘なケイトリンが悪い部分も有るんだけど、そもそも婚約者が居る身で他の女にうつつを抜かすヴィジェスト殿下も問題だよなって先輩と話しながら、ゲームを作った記憶があるよ」
ドミーが説明してくれた乙女ゲームでの私は、なんというか。お姉様、だった。いや、ホントにお姉様みたいな感じだったんだよね。そりゃあヴィジェスト殿下(乙女ゲームでの)も私から離れたくなるわ。私だって身内じゃなければ、お姉様と関わりたくなかったよ。そんなのが婚約者だというヴィジェスト殿下(乙女ゲームでの)に、私は心底同情する。
ドミーとタニアさんは、ヴィジェスト殿下が浮気した事に苛立っているみたいだけど(というか乙女ゲームの設定なんだし、そんなに怒る事じゃないと思うんだけど)私からすれば、中身お姉様な私と婚約していたヴィジェスト殿下に同情しか、ない。




