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成る程。では、お互い不干渉といきましょう。  作者: 夏月 海桜
キーマン探しを開始する魔法学園の留学生活。
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2度目。ーーまさかの事実が判明しまして、驚きの連続です。・5

「推測ばかりだから取り敢えず事実だけを受け止める事にする」


私が言えば、まぁ妥当な所だよな、と2人が頷く。


「それで。この女装もどうやら関係があるらしくて」


ドミーが続けたが、女装も関係がある?

疑問符が脳内を埋め尽くす私には気づいているのだろう。苦笑しながらタニアさんが続けた。


「不思議な事に、声の魔術師として力を使うのに、どうやら女装が効果的らしいんだよね。どういう事なのか。これも推測なんだけど。さっきも言ったように俺は憑依している形。コイツと関わっていたのは若い頃で、俺が彼女と結婚する頃にはコイツは死んでた。もちろん悲しかったけど、後を追う事はなく俺は自分の家庭を持って90歳は超えた記憶がある」


「……長生きしましたね」


生まれ変わりじゃないから? しかも2度目の人生だから? 死亡時期にズレがある? いや、ドミーと私ももしかしたら死亡時期はズレているかもしれないし、まぁそこは多分些細な疑問だと思う。根幹ではなくて枝葉の部分だよね。


「ありがとう。で、まぁ気づいたらこの身体に意識が有ったんだけど。デスタニアの意識は現在寝ている状態」


「寝ている?」


「うん。なんか俺の記憶が入った事になぁんの抵抗も無くて。でも生まれ変わりじゃないのは分かったんだよね。俺の記憶とは別にデスタニアの意識・記憶・魂というようなモノが別に有ったから」


「ええと」


すみません、私はバカみたいで言っている事の理解が出来ません。


「こう考えて。一つの家に家主が居て、そこを俺が急に訪れた。普通は追い出されてもおかしくないのに、家主は半分寝ているような状態」


「つまり、寝ているから追い出されない?」


タニアさんの説明で考えるとそういうことになる。


「でも正確に言えば半分寝ているから半分は起きている。ただ家主は俺を追い出す気が無いってこと」


成る程。良く分かりました。要するに日本人の男性がタニアさんの所にやって来た。タニアさんは追い出す気はなく、でも何故自分の所に来たのか、と起きている部分は謎に頭を悩ませていた、と。


「起きているタニアさんに、事情説明したら身体を貸すよってなった?」


「正解。で。どうやらデスタニアは貧乏男爵の次男として生きる事に疲れていた。長男は跡取りだし、三男は始めから男爵家を出る者として割と自由だった。でも」


タニアさんが自分の事情を話し出して気づいた。


「次男のタニアさんは、ドミーみたいに家を出る者として自由というか放任主義で育てられていなかった……? 万が一長男に何かあった時のスペアとして存在していたけれど……結局万が一という事態にはならず。ある程度の年齢になって、父親辺りからいきなり今後の身の振り方を考えるように言われた?」


貴族……特にこう言っては失礼だが、貧乏な下位貴族の次男・三男は立場が曖昧で弱い。長男に何かあれば、と長男のような教育を受けさせておいて何も無ければ身の振り方は己で考える。これが高位貴族の次男以下や金銭的に余裕がある下位貴族の次男以下ならば、教わった事を長男の補佐として発揮出来る。


だが。貧乏な下位貴族の次男以下は、少しでも条件の良い家に婿入りするか、自力で将来を切り開くように職を探す。そのどちらか。けれど、長男のスペアとして育てられた者がいきなり別の生き方を模索しろ、と言われても急に気持ちや環境を変えられない。


「そういうこと。普通はそれでも環境が変化した事に馴染もうと頑張るんだけど、俺……デスタニアは繊細な心の持ち主だったみたいで、変化に戸惑い馴染めなくて」


「結果として意識が寝てしまった?」


私が先回りすれば、タニアさんは先回りした事に何とも思わずにあっさり頷いた。


「尤も俺がこの身体にやってきたから、というのもあるとは思うけど」


衝撃の事実が次から次へと……まぁ推測込みの話なんですけどね。それでもまぁタニアさんの現状は容易く受け入れられる程、納得出来た。


「それで」


ドミーが続ける。


「どうも(デスタニア)は長男みたいに跡を継げず、俺みたいに小さい頃から色々な事に興味を持って将来の可能性が広がる事が無い自分を悲観していたのか、違う自分になりたがっていた、と思う。これは俺の推測。ただ強ち間違いではないはず。それで結果として違う自分になりたい気持ちが強くて女装を受け入れた」


いやいやいや、話は解るんだけど、何故最後にそこから女装を受け入れる精神になったんですか⁉︎ 私の驚愕に気づいたのだろう。タニアさんが補足する。


「今までとは違う自分になりたい。でもどうすれば違う自分になれるのか分からない。誰かのスペアでは無い自分。弟のように自分で将来を決める必要があるのに、どうすればいいのか分からない自分に嫌気が差して意識が寝てしまった。そこに俺の意識がやって来て、半分覚醒した意識が、身体を貸す代わりに何か今までと違う自分になりたいって望んだ。だから俺が、だったら羽目を外す事を提案し、折角だからデスタニアではない自分になるために、女装をすることを勧めた。デスタニアは、いっそ、本当に何もかも違う自分になれるかもしれないと思って、女装を受け入れた」


「ああ。成る程。見た目は女性ですからね。かなり違う自分になれる、と思いますよね。何しろ見た目だけでも性別が変わりましたものね」


タニアさんの補足説明に、私は納得した。

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