2度目。ーーまさかの事実が判明しまして、驚きの連続です。・2
すみません、遅くなりました。
さて。クルスは私が学園に行って帰って来る間に当然ながらドミーの元へ手紙を届け、もちろん返事ももらってきました。アレジとガリアはデボラから概要をざっと聞いたそうで就寝前のフリータイムには、大体の所を把握していました。……まぁいいけどね。そんなわけで。
「じゃあお嬢が2度目の人生を歩んでいる理由に、そのヴィジェスト王子の好きな女が絡んでるって事?」
ガリアの問いに私は頷くが、違和感がある。なんだろう? とガリアの発言を脳内再生して気付いた。
「ガリア、なんでヴィジェスト殿下ではなく王子なの?」
通常、王子に対する敬称は殿下。別にヴィジェスト王子がダメなわけじゃないけど、なんだか違和感を覚えてしまう。
「えー。俺の中で第二王子の評価が下がったからー?」
何故疑問系で喋る。……そしてそれはあれか、私の1度目の人生がどんなだったか知ったからか。
「俺たちのお嬢を泣かせるような男を、俺たちが許すわけないじゃん」
気持ちは嬉しいが、ガリア。最近アナタ私を主人側として扱う気ゼロだよね。友達かよ。まぁいいけどさ。頭がおかしくなった事を疑われるよりは遥かに良い。うん。普通、2度目の人生を送ってるって言ったら速攻で変なヤツ扱いだ。前世では脳を調べた方がいい、と心配されて病院へ連れ込まれるレベル。……うん。つくづく私って人に恵まれてる。
「気持ちは有り難いけど相手は王族。いくらウチが王家に忠誠を誓ってないからと言って、何をしても良いわけじゃないからね?」
釘を刺しておいて、私はクルスからドミトラル様の返信の手紙を受け取った。
「次の休日、ね」
魔法学園の休日に朝から会うことになった。時刻と場所も指定されている。ちょっとオシャレしていこうかな、なんて考えていた私の脳内をストップさせる言葉が書かれていた。
「えっ」
「お嬢様?」
私が言葉を失っていると、直ぐに異変に気付いたデボラが声をかけてくるが、私はそれに応える余裕もない。両肩を揺さぶられてようやくデボラと視点が合った。
「デボラ?」
「お嬢様、いったいどうされたのです?」
「ああ、ごめんなさい。ちょっと衝撃的な内容に頭が真っ白になっていたわ」
「衝撃的な内容? もしや、秘密の女がいた、とかですか⁉︎ 始末してきましょうか⁉︎」
……えっ。何それ、デボラの発言が怖いんだけど。落ち着いて頂戴。
「いやいやいや、そんなんじゃないから! 誰を始末するつもりなの! 誰を!」
「それはもちろん、……その女ですよ」
今の間は何⁉︎ 本当は誰を始末するつもりだったの⁉︎ いえ、深く聞くのはやめよう。ウッカリドミーという返事が来たら、たとえデボラが相手でも私は何をするか分からない。
「違うわよ。他の女とかじゃなくて。デボラには話したわよね? 私の前世のこと」
「ニホンという国の話ですか?」
「ええ。ドミトラル様も同じ日本人なんだけど。どういうわけか、ドミトラル様のお兄様であるデスタニア様も元日本人、らしいのよ」
そう。それもドミーの手紙に書かれている内容から察するに、ドミーの前世でお世話になった先輩、らしい。その上ドミーと同じ乙女ゲームのシナリオを考えた人、みたい。
要するにあれでしょ。
私をヴィジェスト殿下ルートなら娼館行きにして、イルヴィル殿下ルートなら国外追放にしたシナリオを書いた人でしょ? ある意味、ロズベル様探しに非常に効果的な人だよね⁉︎
「「お嬢! 前世って何⁉︎ 1度目の人生とは別なの⁉︎」」
私とデボラの会話を聞いていたガリアとアレジが突っ込んで来た。そうか。デボラから聞いたのは1度目の人生についてだけだったんだね。仕方なく前世の話をする。私は良く知らないが、この世界を基に恋愛物の作品が作られている事まで話した。2人共興味津々な様子で、話し終えるとジト目を向けて来る。
「な、なに」
2人の強い視線にたじろけば
「「お嬢、そんな楽しい話を隠してたってどういうこと?」」
楽しい話かどうかは知らないけど、話さなかったのは必要無いと思ったから、とは口にしなかった私は賢明だと自分を褒めておこう。……口に出してたら絶対文句の嵐だったに決まってる。でも、本心は、本当にロズベル様探しには不要な情報だと思ったんだもの! 私は悪くない!
お読み頂きまして、ありがとうございました。
今更ですが、ケイトリンがドミーを
“ドミトラル様”
“ドミー”
“トラル”
と呼んでいる事に、何か使い分けが有るのかと言うと……あまり有りません。何となくケイトリンの中で、此処はドミトラル様。こっちではドミーと脳内で呼びかけているだけです。
強いて言えば“トラル”呼びだけは、恋人として愛称を呼んでいる的な。2人だけが呼ぶ愛称みたいなものです。




