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成る程。では、お互い不干渉といきましょう。  作者: 夏月 海桜
キーマン探しを開始する魔法学園の留学生活。
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2度目。ーーロズベル様探しは難航中です。・8

警戒心高めの2人をさて、どうしよう? と思っていたところ。タニアさんがアリシャ達に視線を向ける。その視線はあまりにも真っ直ぐで強く、裏も無さそうだからか、4人共タニアさんの視線を受け止めている。


「警戒するのは正しいんだけど、落ち着いてもらっていいかな。敵対する相手じゃない事は理解して欲しい。カリオン君とゼフォル君は聞いた事がないかな、声の魔術師って通り名」


タニアさんのハスキーな声から穏やかに紡がれる言葉には、なんだか警戒心を解くような柔らかさも混じっていて。なんだか不思議な心持ちになる。そのタニアさんから出た声の魔術師という単語が引っかかったが、サヴィもベタルターもその単語を知っているのか目を丸くした。


「その表情だと知っているみたいだね。私がその声の魔術師なんだ。君達の警戒心がスルスルと解けているだろう? 私が声に魔力を乗せているからさ。そして魔術師同士、一般の人には知られていない繋がりや連絡方法が有る事はシオン帝国の国民だから知ってるよね?」


話の流れからして、タニアさんはどうやら魔術師のようだわ。……タータント国の出身なのに? いえ、どこの国の人でも魔力を持った方が生まれてくる事は有るって聞いているし、そう考えればドミーのお兄さんだって可能性が無いとは限らないのだけど。


前回の人生で、ドミーのお兄さんが魔術師だなんて聞いた記憶が無いのよね。もちろんドミーの事を全部知ってるわけじゃないけれど。私が魔法に興味がある元日本人なのは、ドミーも知ってたから、前回の人生でお兄さんの話をしてくれるような気がしたんだけど……。


チラリとドミーを見れば「後で詳しく話す」と日本語で呟かれた。まぁ確かに今は詳しく話している時間は無いし。ただ、タニアさんは本当に有名らしくてタニアさんが声の魔術師だ、と打ち明けた途端にサヴィとベタルターの警戒心はゼロになったし、なんだったらヤケに興奮している。


あれよ、前世の時によく見た。推しに会って興奮するオタク達。彼等と同じ反応をしているのよね。この2人。という事は、タニアさんは2人からすればアイドル並みか。……じゃあタニアさんはそれくらい有名だって事よね。前回の人生ではシオン帝国の存在は知っていても(王子妃教育の一環である程度のことは教わった)シオン帝国内について、あまり詳しくは知らなかった。


それでも帝国内で有名な魔術師なら、一応王族の一員になる予定だった私の耳にも入ったと思うのだけど……。それとも帝国内だけで情報を留めておかれたのかしら。まぁその可能性はあるわよね。でも、そう考えるとおかしな事ばかり。タータント国のレード男爵家の次男であるデスタニアさんが、魔術師なのはまぁ納得するとして。それなのにタータント国内では全く名前を知らなかった人なのに。


シオン帝国に来たら有名な魔術師?


前回でも今回でも不思議な現象としか言えないんだけど。ドミーにしっかり話を聞かせてもらうしかないわね。それになんていうのかな。ドミーと再会してタニアさんとも会った時から、なんとなくロズベル様探しが上手くいく、と言うか。ううん、違うな。ロズベル様の行方をこの2人なら知っているような気がしている。


ドミーが元日本人の、それもこの世界を基にした乙女ゲームの制作者の一員だから、というのもあるだろうけど。それだけじゃない。なんだかもっと根深い所……国とか世界とか、そんな大きな事を言うのもどうかとは思うけど、そんな大きな事態について、もっと言えば私とドミーとヴィジェスト殿下が記憶を持ったまま、2度目の人生を歩いている、その原因までも、この2人は知っているような気がしている。


ドミーだけじゃなく、タニアさんも、多分私達に大きく関わっている。私の直感が告げていた。


「そろそろ時間だね。もう帰らないと」


皆が心穏やかになって、寧ろサヴィとベタルターが推しに会ったオタクよろしく興奮している所を見ながら、私は時刻を確認する。ハッとしたアリシャ達と共にドミーとタニアさんと別れる。私はクルスを後で遣いに出す、とドミーに伝えればドミーも分かった、と頷いた。ちなみに、そのクルスはガリアとアレジと共に休日を与えている。デボラも一緒に休日を与えたので、4人で行動しているのか、それともバラバラなのかは知らない。


まぁ私が寮の自室に帰る頃には4人も帰って来るだろう。魔法学園に帰る道すがら、私はお菓子を買った。私の専属侍女であるデボラの事を皆知ってるから、デボラと食べるのよ、と話せばお土産を買って帰るなんて素敵な主人だわ、とアリシャから褒められた。……褒められたんだよね? 食い意地が張ってるって思われたわけじゃないよね? まぁクルス達の事は話していないから、お菓子の量が多いと思われているかもしれないけど。


さて。皆でお茶をするためにも、早く帰って休日を終えた4人を迎える事にしようっと。……まぁ4人でのお茶会は、就寝前のフリータイムになるだろうけどね。

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