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成る程。では、お互い不干渉といきましょう。  作者: 夏月 海桜
キーマン探しを開始する魔法学園の留学生活。
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2度目。ーーロズベル様探しは難航中です。・5

やっと再会しました。

魔法学園の学生達の大半が利用する店が集中するこの通りの先に集合住宅地があった。日本人の女子高生だった頃に見たな、と朧気ながら思い出す。ちょっとしたアパートのような建物。でもコンクリート製ではない。木造アパート。でも多分、そんなに古さを感じさせないオシャレなデザインの集合住宅が多い。


「先ずは此処ら辺一帯で聞き込みする?」


サヴィが提案するが。聞き込みと言ってもどうやって尋ねるべきか、頭を悩ませてしまう。ちょっと変わった女の子と母親がこの辺に居るのを見たことがあるか? なんて質問をしても訝しがられる上に、こっちが変な目を向けられそうだ。


「取り敢えず此処に集合住宅がある、ということが分かっただけでも収穫だわ。行き当たりばったりで手当たり次第に聞き込みをしても訝しがられるというか不審者だと思うし。その辺はもう少し考えてみる」


私の返答にジュストも


「そうだな。尋ねる内容によっては警戒心を呼び起こすだろう」


と頷く。アリシャ・サヴィ・ベタルターも確かに、と納得して一旦引き下がってくれた。とはいえ折角来たのだから、周辺を見て回る事で雰囲気を感じ取る事にしよう、と集合住宅を中心に足の向くまま気の向くまま歩き出した。


5人でややダラリと歩いていると、前から男女が歩いて来た。女性は男性の腕に手を絡ませているように見えるので恋人同士なのかもしれない。段々と向こうとこちらの距離が近付き顔の判別が出来る距離になったところで……私は足を止めてしまった。


男性は、2度目の人生で3回目に目にしたドミトラル様、だった。1回目の時に突然逃げ出してしまって、あの時は具合が悪かったという理由をジュストに使えたけれど。今はそんな事は言えない。ここまでいつも通りの私なのだから。いきなり病に罹ったようには振る舞えない。


ーーでも、だけど、どうしよう。


今度こそ覚悟を決めたはずだったのに。これからドミーに会う、と決まっていたのなら、心の準備をしたはず。(出来ているかどうかは別として)だけど不意打ちでは心の準備も覚悟も出来ていなくて。いざ、というこの状況にどうしたらいいか分からなくて。


心臓の鼓動が耳まで届く程大きく聞こえる。血液がドクドクと流れているような音が聞こえる。

どうしよう。

どうしたらいい。

口の中が急速に渇く。

身体が固まって言う事を聞かない。


私は。私はどうしたのかしら。こんなに臆病だった? こんなに情けなかった?

恋は人を強くするって言うのに、私は逆よ。恋は私を弱くする。今すぐ逃げ出したい。泣き叫びたい。こんな醜い心の私の姿をドミーに見せたくない。ああ、でも。彼等彼女等にもそんな姿……()()()令嬢らしい私の姿なんて、見せたくないから、やっぱり逃げてしまおうかしら。


そんな現実逃避な思考をしている間にも、もう距離はかなり近づいていて。私以外の皆も向こうに気付いたし、向こうもこちらに気付いた。……何故だろう。ドミーの一挙手一投足に目が離せなくて、ゆっくりと皆に「こんにちは」と会釈をして通り過ぎようとしているのまで、スローにしか見えない。


私、の、視界、から、逃れようとしている? いいえ、違うわ。ドミーは未だ私に気付いてないだけよ。でも、もし私の存在に気付いたら? 覚えているのかしら、私、を。忘れているのかしら、私、を。


私とーー彼の視線がぶつかって。


()()()()()


と彼が満面の笑みを浮かべて、私を見た。ああ、その愛称は……あの時から貴方以外の誰も呼ばないの。2度目の人生が始まった時から私を呼ぶ愛称は「ケイト」にして、と皆に頼んであるから。だからその愛称を呼べるのは、この世界でただ1人。貴方だけです、ドミトラル様。


貴方は……私を覚えていてくれたのですね。その隣に立つのが私じゃなくても、もうこれだけで私は報われた。


「ケイティ?」


「とらるさま」


「うん。そうだよ。覚えてた?」


「覚えて……ました。ドミトラル様! ドミー! トラル! 覚えてました! 覚えてました! 忘れる事なんて……っ」


無かった。その言葉が口から溢れるよりも早く、ドミトラル様は私を持ち上げた。……えっ? 持ち上げ? えっ? 私、15歳の令嬢にしては、背は高いしその分重たいと思うんですけど! えっ?


「俺も。ずっと。あの日、ケイティに会ってから忘れた日なんて無かったよ」


その言葉を、どんなに聴きたい、と願った事でしょうか。ドミトラル様は私を持ち上げて膝裏に片手を回して片手は私の背中を支えるようにして、1度目の人生でいつも私を迎えてくれていた笑顔を向けてくれました。あの日々の中、私が支えにしていた笑顔です。


「ケイティ! 結婚しよう」


そうして私は。1度目の人生では絶対に聞く事が出来なかったプロポーズの言葉を、再会して早々、大好きな人に大声で言ってもらいました。

最後のこのシーンを2度目の人生スタート時(8歳の時点)に、書こう、書こうと決めていましたので、ようやくこのシーンが書けた事に満足しています。(再会して早々に、ドミーが暴走するのも予定通りです)


本日の更新で何か思いの丈を叫びたい方がいらっしゃるようでしたら、活動報告のコメント欄を開けておきますので、どうぞ。(尚夏月は、目を通すだけに留めます。明日の更新まで)

お読み頂きまして、ありがとうございました。

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