2度目。ーー早速授業が始まります。外国語の。・6
いつもお読み頂きまして、ありがとうございます。再び登場。
「セイスルートさん? どうしました?」
「あ、アリシャさん。ケイトリンでお願いします」
「そうね! ケイトリン、でいい?」
「もちろんです! 実は課題をグループでやる方法を聞いて思ったのですけど。罫線が無いノートって読み辛いだろうな、と」
「「「「けいせん?」」」」
あ、ジュストも知らないか。そしてこの調子だとアリシャさんもカリオン君もゼフォル君も知らないよね……。私は鞄から自分用のノートを出して見せる事にした。ちなみにこの鞄は、魔法学園専用。そういえば魔法学園って制服有るし鞄と靴と靴下も指定だし、日本の私立学校みたいなんだよね。なんだったら髪を結えるのに使用するリボンの色まで指定……。やっぱり日本? ゲームやってないから知らないけど、もしかしてゲームの舞台の学園って魔法学園? あ、でも。ゲームの攻略対象者はヴィジェスト殿下・ジュスト・カッタート様とドミーで。皆タータント国の人だから、やっぱりタータント国の学園が舞台よね。じゃあ何故シオン帝国の魔法学園はこんなに日本っぽいのかしら。
「ケイトリン?」
「あ、すみません。ちょっと考え事をしてました。気にしないで」
鞄からノートを出した状態で固まっていた私にアリシャさんが声をかけてくる。日本と似ている部分が多過ぎて、いつもは考えていても行動は別だったのに、うっかり考え事に囚われていたみたい。失敗した。気を取り直してノートを見せる。
「私は自分が書きやすいようにこうしてノートに線を入れているんです。この線を罫線って言うんですけどね。なるべく同じ間隔でこうして線を引いたその線に合わせて文字を書くと綺麗に見えませんか?」
「「「「確かに」」」」
あ、この世界で定規をまだ見た事が無いので、自分の親指の爪で大体の幅というか間を取って線引きしてるんです。ちなみに手書きで線を引いているから、ややブレてます。真っ直ぐ引くって大変なんですね、定規の有り難みを知りました。教科書やノートがきちんと製本されている代物なら定規の代用品になりましたけどね。紙を紐で纏めただけの教科書やノートにそれを求めるのは酷というものです。
それにしても本当に中途半端というか。色々惜しいというか。製本がきちんとされていないのに、教科書やノートの紙の大きさはきちんと決まっているようにほぼ同じ大きさです。ハサミは有るのに定規が無いし。なんだろう、チグハグなんですよね、この世界。足りない所を後から書き足したような感じというか……。
えっ。もしかして、本当にそうなのでしょうか。私の考えが当たっていたら怖いんですけど。ヤダな。考え過ぎだよね。とにかく今はノートの件だ。あまり深く考えない方がいい。深く考えたらおそらく深みに嵌って抜け出せない怖さを感じた。
「皆さんで同じノートを使用するなら、ある程度文字の大きさが揃っていると担当教師も見易いかな、と。例えば男性は割と大きな文字を書きますよね? 同じ文字でも書く人によって大きさが変わると目が疲れるんですよね」
「確かにその通りですわ。私も常々思ってました。一応王女ですので、兄や弟程執務には携わらないのですが、それでも執務を熟す時に小さな文字をしっかり見ている事に集中していたら次は文字が大き過ぎて目がおかしくなったかと思うことが何回かありました」
私の説明にアリシャさんが即座に反応する。あ、やっぱり苦労しているんですね。
「それでしたらこうして同じ間隔で線を引いてそれに合わせて文字を書いてもらえば、かなり文字が見易くなると思いますよ」
「そうですわね! 確かに。この線のことを罫線って仰るのね?」
罫線という言葉自体を聞いたことがないはずなのに、罫線という単語はシオン帝国に存在するのか、意味を把握すると使用出来るのもなんだか不思議というよりちょっと怖い。しかも卵のようにちょっと惜しい単語にもならない。……うん、考えたら負け。考えない考えない。とにかく。皆さんが納得してくれたのでスケッチブック並みの大きさの課題用ノートに、罫線を使って課題に取り組む事が決まった。
というわけで。昼食を終えた私達は、例の通りにある文具屋さんに来ました。課題用ノートは頻繁に購入されるのだろう、見易い位置且つ取り易い位置に置いてあった。目的の物は早々に購入したけれど(5人で割り勘ですよ)折角来たのだから、と文具屋さんの中をあちこち見て回る事にしました。
羽ペンもあるのですが、今は万年筆の方が主流だからか、万年筆の種類が豊富です。後は高い値段なのですが製本されているノートを見ました。これは数年経ったら製本された物が主流になっているかもしれないですね。そんな事を思いながらアレコレ見ていた私が、フッと文具屋さんのガラス扉の外を何気なく見たら……ドミトラル様が。ドミーがやっぱり女性を連れて笑顔を浮かべながら通り過ぎて行く所でした。
以前、見た時よりも近い位置で彼の顔を見て。やっぱりドミーにしか見えなくて。……ホントは少しだけ、以前の彼は見間違いで他人の空似だったとか、そう、思っていたんですけど。1度目の人生で会っていた時よりも少しだけ若いけれど、以前よりも近い距離で見てしまったから。疑う余地も無く彼、だった。
通り過ぎていく彼をただ見送るだけの私。今度見かけたら、会ったら、私の事を覚えているのか。幸せなのか。尋ねようと思ったのに、いざ見てしまったら……私の足は硬直したかのように動いてくれなくて。
ーー情けないな、私。
自嘲するしか無かった……。
余談ですが。
ドミーには姉か妹が居る! というオチは有りません。彼は兄が2人の末っ子です。
また、従姉妹は居ますが5人全員タータント国です。3人は既婚者。1人は婚約中(結婚秒読み段階)1人は成人してない、タータント国の学園にようやく入学した年齢のお嬢さんなので、従姉妹でした! というオチもありません。




