2度目。ーー早速授業が始まります。外国語の。・4
遅くなりました。
「ご婚約おめでとうございます」
「ありがとう。私はドナンテル殿下に嫁ぐ事になるのでよろしくお願いしますね」
「アリシャさん。勿体なきお言葉ありがとうございます」
「うふふ。そんな堅苦しくならないで。あなたが実は跳ねっ返りだとお2人共仰っていましたのよ」
あの2人……次に会った時はきっっちり話を付けようか。仮にも他国の王女殿下に私の淑女の仮面が飛んで行くような話をするってケンカを売っているようにしか思えないんだけど⁉︎ あ、それより前にこの、いつまでも尊敬してます視線を寄越すカリオン様を何とかしたい……。
「あの、カリオン様。ええと、何処でセイスルート家の事を?」
先ずはそこから尋ねなくてはならない。
「現セイスルート辺境伯様が若い頃、帝国からタータント国へ向かう使節団をお守りする栄誉を預かった我が祖父と父をタータント国で迎えて下さったとか。その際、その……ボターナのアリシャ姫の前で話すのも悪いが、アリシャ姫の婚約者殿がいる国が国境沿いで我が国の使節団に手を出して来たらしくて。それを祖父と父と共に追い払ってくれた、とか。それ以来我が家ではセイスルート辺境伯様は語り草なのです」
あー。そういう……。そして何となくその黒幕が分かりましたー。コッネリ公爵、だろうなぁそんな事やらかすの。多分国境沿い云々は小競り合いを起こした領地の兵士達だね。あの地の領主はコッネリ公爵派だったもんねぇ。
「そのような事がございましたか。父からは聞かされておらず失礼しました。これからは学友としてよろしくお願いしますね、カリオン様……でなくて、カリオン君?」
そういえば敬称は、“君”か“さん”と付けるのが魔法学園流でしたね。
「アリシャさん、あの、宜しければ課題をご一緒にやらせてもらえませんか?」
「うーん。もっと砕けた言い方なら」
砕けた言い方、ですか。
「アリシャさん、課題を一緒にやらない?」
これならどうですかね?
「いいわよ。私も長く友人として付き合うあなたとは仲良くしたいもの。ドナンテル殿下がね? 友人の称号を与えるのは、あなただけだと仰っていたの。あなたは決して友人を見捨てないからって。そんな話を聞いてあなたに会いたかった。元々シオン帝国に留学していた私は、ボターナ国王であるお父様からドナンテル殿下とノクシオ殿下の婚約者を決める交流会に参加するよう命じられて、それで参加したのよ。だからセイスルートさんの事もあの時見ていたの」
「そうでしたか。では、何の挨拶もせずに失礼しました」
「ううん。それは構わないのよ。ただ、ドナンテル殿下もノクシオ殿下も誠実な方達だ、ということは解ったから」
誠実……。1人は若干脳筋で1人はお腹どころか全身真っ黒になりつつある王太子が? 誠実の意味ってなんだっけ。
「セイスルートさんから見るとお2人は誠実とは思えないのね?」
クスクスとアリシャさんが笑うので、私は「脳筋と腹黒ですね」と答えた。更にアリシャさんが笑ったところで。
「ケイトリン」
とにかく課題メンバーゲット! と思っていた私の背後からジュストの声がかかる。
「ジュスト。こちらのアリシャさんが一緒に課題を組んでくれるって。そっちは?」
「ああ。ゼフォルが一緒にやってくれるってさ」
ジュストが連れて来たのは、帝国民特有の小麦色の肌にチョコレートに似た茶色の髪と宝石のエメラルドに見える緑色の目をした人。
「はじめまして。ケイトリン・セイスルートと申します」
「ベタルター・ゼフォルだ。よろしく頼む」
「あ、俺も! 俺も良いですか⁉︎ セイスルート様!」
割り込んで来たのはカリオン君。
「はい。よろしくお願いします、ただ“様”は無しで」
「じゃあセイスルートさんですね。よろしく」
ジュストにアリシャさんとカリオン君を紹介して、ジュストからゼフォル君の紹介をしてもらう。ゼフォル君は帝国の外交官の三男らしいです。長男・次男は既に外交官として活躍しているとか。成る程ね。で。この後をどうするのかって話になるのだけど。
「取り敢えず、昼食を学食で食べてから課題用ノートを買いに行こう」
と、ゼフォル君が切り出した。アリシャさん・カリオン君・ゼフォル君は魔法学園1年目から在籍しているから、課題の取り組み方も解っているわけで。それならばその指示に従う方が間違いない。学食は、午後の実技がある騎士科・兵士科の学生や魔術師科の学生だけでなく、誰もが利用出来るらしい。
だから商会へ赴く商業科の学生や領地視察に赴く領地経営科の学生に、授業は午前で終わるものの課題が多い文官科の学生も頻繁に利用するとか。文官科って課題、多いんだ……。ただ、商業科・領地経営科は行く場所によって、そっちで食べる方が良い事もあるし、文官科の学生は紳士科・淑女科の学生と共に、あの魔法学園の学生達が利用する通りのお店でお茶や食事をする事もあるから、毎日利用するのは、騎士科・兵士科の学生と魔術師科の学生だけなのだそうです。
「そうだ! 昼食は学食だけど、この後は課題用のノートを買うわけだし、そのままお茶もしよう! 交流も兼ねて!」
カリオン君が朗らかな声で提案する。……ドミトラル様に……ドミーに今度こそ会うかしら。
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