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成る程。では、お互い不干渉といきましょう。  作者: 夏月 海桜
3年目の学園生活は留学の留学からスタートです。
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2度目。ーー早速授業が始まります。外国語の。・3

本文中

【おもむろ】という言葉が出てきますが本来の意味通り“ゆっくりと”という意味で使用しています。誤用ではないのでご承知頂けたらと思います。

課題が出ました。世界共通語授業の。それもですね、グループ課題ってやつですよ。編入して2日目の人間にグループ課題って、それなんの嫌がらせですかね。さすがに2日じゃあ同じ組の方達の顔と名前も一致してないですよ。自己紹介されてないし。王子妃教育の賜物と言うべきか、弊害と言うべきか。自己紹介されたら顔と名前を一致させる作業を自然と行ってしまうんですけどね。


だって王子妃って王族の一員ですからね。誰が敵か味方か見極める必要が有るんですよ。そのためには何処の家の出身で家族構成はどうなのか。派閥や親戚に何処の家が有るのか等自己紹介された僅かな時間で名前を覚えたら、即繋がりを調べ上げてました。……懐かしい思い出です。だから自己紹介さえしてもらえれば、顔と名前を一致させられますけどね。


たった2日で自己紹介されてもない編入生にグループ課題なんて酷くないですかね。嫌がらせとしか思えないですよ。まぁこっちから歩み寄ってみますけどね。友人が居ないからとか顔も名前も知らないからとか、そんな卑屈な事は言ってられませんからね。とっとと歩み寄ってグループ課題を組める相手を探します。最低でも4人以上って話ですからね。今こそ王子妃教育で培った社交術の出番です。


「ケイトリン、一緒に組まないか?」


意気込んだ所でジュストから声がかかりました。別に構いませんが男子グループに入らなくていいんです? そう尋ねたら、男女混合の方が面白そうじゃないか? と言われたので、そういうことなら、と頷きました。で。私は女の子を、ジュストは男の子を誘えばいい、ということになり。取り敢えず手当たり次第というのもなんですが。編入生に興味津々な方達に片っ端から声をかけてみる事にしました。


「はじめまして。ケイトリン・セイスルートと申します。これから宜しくお願いしますね。出身はタータント国で」


と、そこまで名乗ったところ。目の前の私に興味津々なご令嬢ではなく。その隣で私達の様子を窺っていたご令息がギギギと錆びた鉄の様な音がしそうな程のぎこちなさで、私を見てきました。えっ、怖い。ホラーですか。


「セイスルート? タータント国の? もしや、辺境伯かっ!」


あらまぁ私をご存知の方がいらっしゃいました。私はマジマジとその方を見ます。帝国民特有の小麦色の肌に闇の中でも見失わないような炎のような色の髪。そして同じ色の目。身体つきは鍛えているのか服に隠されてはいるものの、筋肉の付き方がバランス良い。……それこそ騎士科や兵士科に居ておかしくない身体だと思います。何者でしょう?


「はい。そのセイスルートですが……ええとセイスルート家(ウチ)をご存知の貴方様は……」


首を捻りつつ尋ねれば、その方はハッとした表情をした後、おもむろに騎士の礼を取ってきました。成る程、騎士家の出身ですか。


「申し遅れました。セイスルート様。自分はシオン帝国で末端の騎士爵位を頂いているカリオン家の次男・サヴィ・カリオンと申します」


「カリオン様ですね。はじめまして。セイスルート辺境伯家次女・ケイトリン・セイスルートと申します」


「まさかこのような所で()()セイスルート辺境伯家の方にお目見え出来る事になろうとは……」


私が淑女の礼を取って挨拶しているというのに、膝をついたままのカリオン様は、そのまま私をうっとりとした表情で見上げてきました。……怖いです。というか、あの、とか言ってますけどウチを知ってるってことですか? シオン帝国の方に知られる程有名な家では無いはずですが。もしそうなら、タータント国ももっとウチを取り込もうと躍起になりそうですし、隣国も此処シオン帝国側も、私にもう少し敬意を払いそうですけどね。


隣国で勝手にシオン帝国の留学を決定されるような事は無いと思うんですよね、そんなに有名な家なら。つまり、このカリオン様とやらは、有名でもない我が家を何故知ってるのかって疑問が沸きますし、そして何よりこの尊敬してます視線が怖いですよ。


「カリオン君、セイスルートさんと知り合いなの?」


私が困っている事に気付いてくれたのか、見かねたように声をかけて下さったのは、先程私からお声がけさせて頂いたご令嬢です。


「セイスルートさん、自己紹介をさせてもらいますね。私はシオン帝国の隣に位置するボターナ王国の第一王女・アリシャ。貴方の事はドナンテル殿下とノクシオ殿下から聞いているわ」


まさかの王女殿下でしたー!


「恐れ多くも王女殿下に気軽なお声掛けを……」


「いいのよ。この魔法学園では、そういった身分差から起こる挨拶など煩わしい事は一切無しなの。だから敬称も様付けではなく、せいぜい君付けか、さん付けなのよ」


「そうでしたか。では改めて。ボターナさんよろしくお願いします」


「こちらこそよろしくね、セイスルートさん。それと私はドナンテル殿下の婚約者なの」


おや、この方がそうでしたか! では、お二方の婚約者決定茶会に参加されていたのでしょうね。ボターナ王国は隣国より国力は弱いですが悪くない縁談です。ニコッと微笑む黄金色の目をしたシルバーの髪の王女は、華奢で儚げな印象を受けます。ドナンテル殿下ってこういう方がお好みだったのかしら。

お読み頂きましてありがとうございました。

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