2度目。ーー編入式というものは、ありません。・2

文官科は、半円状に連なる学舎5つのうちの一番左に位置する。一番右が魔法を教える魔術師科。魔術師は少ないとはいえ、魔法を教える学園はこの世界には此処しかないので、魔法を扱える魔力持ちは全員この学園に集まりますからね。そうなれば学舎1つくらいは埋まるそうです。ちなみにもちろん、どこの科でも男女の性差別は無い。

その隣が騎士科・兵士科。シオン帝国に来てからきちんと魔法学園について学んだのですが、騎士科と兵士科が別々にあるそうです。騎士科というのは、近衛騎士コースと騎士コースに分かれていて、近衛騎士コースは王族や他国の王族を守る関係で必ず貴族から選ばれるために制定されているそうです。

近衛騎士コースは、剣の腕前はもちろん、礼儀作法に言語習得等の筆記試験も有るとか。……まぁどこの騎士科もそうですよね。他国の王族をお守りするのに言語を学んでいないなんて有り得ません。とはいえ、近衛騎士に特化しているのは、シオン帝国だけでしょう。で。騎士コースは、貴族や平民の差は無くて実技と共に人の上に立つに価する人物か見極めてクリアした人が入れるそうです。

兵士科も貴族や平民の差は無くて、とにかく剣しか身を立てる術が無い人が集まっているとか。でもきちんと実技だけでなく学科も有るから、兵士科から騎士科への編入試験も有るそうですよ。逆に騎士科に入学しても後々学科や実技が実力を伴わなければ、兵士科に編入する事も有るとか。……さすが実力主義。

私はロズベル様の捜索という密命上騎士・兵士科は選ばなかったのですが、選んでも面白かったかもしれないですね。でも演習には実戦を考えた遠征があるので……遠征は1週間くらい帰って来られないみたいなので、ね。ジュストと打ち合わせする事も兼ねて無理だな、と判断したんです。

で。その隣で真ん中の学舎が商業科・領地経営科です。此処が一番人数が多いみたいですね。まぁそのままですよ。商人を目指す跡取りでない貴族令息・令嬢や平民が沢山いる商業科。跡取りとしてまたは跡取りの補佐として領地経営を覚える貴族令息・令嬢がいる、と。

更にその隣が執事・侍女を目指す使用人科。平民や下位貴族の人達が結構多いのですが、此処の学園の使用人を卒業した使用人は何処の国からも声がかかるくらい、完璧なのだとか。だから此処の科を卒業した事は使用人を目指す者達のステータスだそう。実際、タータント国でも雇用してますからね。前回のケイトリンの人生で関わった王家の使用人は割と魔法学園の使用人科出身者が多かったんじゃないかな。王妃様が仰ってました。2度目の人生でも城に上がった時に、前回で見かけた使用人さんが何人も居ましたよ。

そして、最後。一番左に位置する学舎に、私が授業を受ける文官科と紳士科・淑女科があります。紳士科と淑女科だけで1つの学舎だと思っていたのですが、寧ろどちらの科にも入学希望者は少ないみたいです。……さすが実力主義学園。

文官科は他の科から見れば少ない人数です。それは簡単な理由で別にシオン帝国に来なくても何処の国の学園にも有るので。更に言えばその国に合った授業の進め方なんです。要するにタータント国の文官として仕事するなら自国の学園でタータント国の仕事方法を教えてもらえるわけですね。だから文官科を目指す者が留学する必要は基本的に有りません。

有るのは外交官志望ですかね。言語習得に留学は持ってこいなので。私は外交官にもなる気はないしそもそも文官にもなる気はないですけどね。ロズベル様探しって密命をこなすには文官科が一番だったんですよ。魔力無いから魔術師科は無理（実技込みで無理）だし、遠征行くわけにいかないから騎士科も無理だし使用人も目指してないし、商人もなる気はない。淑女科は……王子妃教育の記憶を掘り起こせばどうとでもなるし、残ったのは領地経営科か文官科。

で、編入である以上、前の学園で受けていた科が元になるわけだし……結果的に文官科という事で。私は寮から一番遠い学舎の教室の机に座っています。ちなみに貴族平民の差は無いので、合格者番号順に座るらしくて、編入者である私はジュストと一緒に一番最後の席となりました。合理的だよね。前世みたいに名前の順には出来ないからね。だって前世での名前の順ってこっちでは家名順。平民出身者は家名が無い者も居る。

だから合格者番号順。合理的。私とジュストが最後なのは、編入者だから。最初から入学している方達より後になるよね。うん、とことん合理的。そういうの分かりやすくて差別無くて好きだな。