2度目。ーー新たな留学先は通称魔法学園と呼ばれています。・11
さて。難なく越えました。なんのことかって? 国境です。小国から小国へ入り、2つ目の小国に現在滞在中です。こちらの国は1つ目の小国よりやや大きい国ですので、数日かけてこの国を横断します。で。その先がシオン帝国なのですが。帝国の帝都・モリール(初代皇帝の名前だそうです)までは、更に時間がかかります。ジュストに合わせて早めに出立したおかげで、帝都・モリールに到着しても余裕があるのは良いですね。帝都観光が出来そうです。どこへ行こうかな、なんて観光客よろしくウキウキしています。
まぁまだ到着しないし、到着したなら寮長さん……隣国の女子寮でお世話になっていた寮長のバレンザさんに連絡して学園案内もお願いする予定ですので、バレンザさんに連絡する必要が有りますけど。あ。そっか。バレンザさんに帝都も案内してもらえば良いのでは⁉︎
「おはよう、ケイトリン」
「おはよう、ジュスト。良く眠れた?」
「ああ。今日は予定通り2つ先の街まで向かうか?」
「そうね。ジュストの体調が大丈夫なら、そうしたいわ」
「大丈夫だ」
熱で倒れて以来、ジュストは自分の体調管理をしっかり行なっている。ちょっとでも身体に違和感があると無理をしなくなった。結局、その方が周囲に迷惑をかけない事に気付いたみたい。とても良いことです。こっちも体調を崩される前に休みたい、という要望に応える方が罪悪感を覚えなくてすみますからね。
そういえば。私、ジュストに寮長さんの話をしてなかったわね。
「ジュスト」
「なんだ」
「シオン帝国に着いたら寮長さんに連絡取りたいのよね」
「寮長さん?」
首を傾げるジュストに話せば、ああと頷く。えっ、納得出来るの?
「タータントだって学園に魔術師はいるからな」
「そうなの?」
「知らないのか?」
「私、1度目の人生では学園に通っていないし、2度目である今は、お姉様がああいった方だからタータントの学園には通えないって判断していたのよ」
だから学園について情報を仕入れるつもりは無かった、と言外に告げる。
「知っておいて損は無いだろう」
「まぁそうね。でもタータント国は何故?」
「学園の学生達や教師達に何かあっては責任問題に発展する。それも国同士の争いに発展したら目も当てられない。かと言って大々的に魔術師が居る事を発表すれば、魔術師の生活どころか命が脅かされかねないからな」
「それは……そうですね」
魔法のある世界なれど、魔法を使える存在は貴重。善人ばかりではないのは何処の世界でも同じなので、まぁ後はお察しの通り魔術師を使って悪どい事を企む者もいるわけで。ただでさえ少ない魔術師が更に減っては困る事もある。魔法以外で出来るとは思えないような事もあるし、魔法は使わなくても何とかなる事もある。
問題は魔法でしかどうにかならない事があった時、だ。そんな時に魔術師が居ないのは、マズイのである。大概そういう時は国の存亡に関わる事態に陥っている証ーー。国の存亡に関わる事態に魔術師が居ない。それは国に滅亡しろ、と言っているようなものだから魔術師の存在は学園と国のほんの一握りにしか知らされない。それを知っていたジュストは、その一握りに含まれる存在だ、と自分で言っているのと同じ。
ヴィジェスト殿下の側近だから、だけでは済まないのかもしれませんわね。宰相の考えは解りませんが、もしかしたらジュストってかなり期待されているのでしょうか。でもまぁどんな理由であれ、ジュストが魔術師の存在を知っているのは一から説明する手間が無いだけ、かなり違いますものね。
そんなわけでジュストはシオン帝国に到着次第、寮長さん……バレンザさんと連絡を取る事を了承してくれて助かりました。




