2度目。ーー新たな留学先は通称魔法学園と呼ばれています。・4
さて。今はそれよりも……。
「デボラ」
「なんです?」
「ボレノー様がご一緒に、と仰って来たわけだから当然宿も一緒の方が良いわよね。道中での食事処とか」
「ああ、そうですね。一応急遽決まった留学ですから隣国を通る間の宿は、隣国の国王陛下のお達しで決まってますけど。ケイトリン様お一人として考えて宿を取って下さったでしょうね」
私の疑問にデボラも、そういえば……と頷く。どうやら隣国の国王陛下は私を学園から追い出すからなのか、それともコッネリ公爵の一件を感謝していることの表れなのか、シオン帝国までの道中で隣国を通る間の宿や食事処を予約してくれている。
但し、それは私(プラス使用人……デボラや御者・影達)の分だけを借りている。当然ボレノー様(プラス使用人達)の分の宿や食事処は無い。
国王陛下が直々に予約してくれた宿や食事処にボレノー様の分をお願いするべきなのか、それともボレノー家がもう予約しているのか。その辺の確認はしておいた方が良さそう。それに。私は必要人数だけで向かうつもりだったけれど……ボレノー様がどれくらいの人数の使用人達を連れて行くのか見当もつかないから、同じ宿や食事処にするなら、そちらも把握しておかねばなりませんよね。
一緒に行くと言っても馬車は別ですから、結局休憩・食事・宿くらいですものね、一緒なのは。問題は隣国を抜けた後。隣国とシオン帝国の間に小さいながら国があるんですけど、ウチだけならば人数も最低限なので「ヨシ、駆け抜けよう!」って判断を下したので泊まる気は無かったのですが……。(さすが脳筋! って言った人はどなたです⁉︎)
まぁボレノー様がご一緒ならば駆け抜けるわけにはいかないですよね……。宿探す必要がありますよね。あら? そうなるともしかしてシオン帝国までの旅程日数が増えるのかしら。15日って私が考える最短ルートで出した日数ですよね。……いえ、違いました。余裕を持って15日として考えてましたね。最短ルートかつ最短旅程で考えて何も無いと考えれば日数はもう少し短いのですが、何か有ったら対処出来るように旅程日数は多目に考えていました。
ボレノー様がご一緒で小国で宿を取っても問題無い日数でした。……多分、普通の家ならば当然の旅程日数でしょうね。私含めウチにとっては多目の旅程日数ですけど。アレかしら。ボレノー様から旅程日数がオカシイって抗議でも入るかしら。……まさかね。
ええ。まさか、と思ってましたよ。ちょっとした笑い話として想像していましたよ。でも笑い話では無かったです。ボレノー家からの手紙が再び届いて……私が笑い話として考えていた抗議がそのまま書かれた手紙が来ました。えええー。冗談で考えていた抗議なのに本気ですか! というか、辺境伯領からでも1ヶ月近く掛かると考えるべきって……ボレノー様は何処に行くつもりです?
本気でそう考えているなら、ボレノー様はもう今日、明日にでも王都を出立して辺境伯領を目指さなくては間に合わないですよね? まさかもう出立して来ているのでしょうか……。えっ、まさかですよね。まだ何の支度もしてないですよ、私。いえ、私だけでなく私と共にシオン帝国へ行く皆ですけど。というか、今更ですけど一体何人の供を付けてシオン帝国へ行くつもりですかね、ボレノー様……。そういったことも確認していなかったわ。宿とか確保したのでしょうかね。
そういえば。もしかしてこの手紙を持って来たボレノー家の従僕って……先触れとか言います? 恐る恐る執事を通して尋ねてみたら、予想通り、先触れでした。明日にでも王都を出立する予定だそうです。……早いんですけど。その従僕さんは途中でボレノー様一行と合流するそうです。
「従僕さんに尋ねておいて。一体何人の供を付けてシオン帝国に行くつもりですか? それと宿等は確保されてますか? って」
執事からもう出立するという返答を聞いた私は、溜め息をついてもう一つ気になる事を尋ねてみてくれ、とお願いしました。執事の方も予想より早くにウチに到着しそうなボレノー様一行に戸惑っているようです。そうですよね。セイスルート家の感覚で行くと早いよね? ですからね。こんなに早くやって来ても困りますよね。まぁ一応最初の手紙でボレノー様が来るよ、とは言っておいたから準備は始めてくれているのが幸いですかね。
執事が再び返答を持って来ました。曰く。
「30人程の供を付けているそうです」
「はぁ⁉︎ 何処の王族ですか!」
人数聞いてビックリです。ちなみに内訳は侍女と侍従と従僕が合わせて10人程。護衛が20人程だそうです。……私と共に行くなら護衛はそんなに要らないし、侍女と侍従が居れば従僕も必要ないでしょうに。おまけに侍女と侍従も数名で十分では? 隣国の留学でもそんな大所帯だったんですかね、ボレノー様。これはちょっと話し合いが必要ですね……。




