2度目。ーー新たな留学先は通称魔法学園と呼ばれています。・1
遅くなりました。
今まで通りに接する事で互いに手打ちとしているので、お母様もお姉様もあまり私に近寄ってこない。そんなセイスルート家ですが、お父様はお母様の悩みでも聞いていらっしゃるのか、複雑そうな顔をされて私を見るお母様に何やら助言されているのを見かけます。例えば食事で全員揃う時や例えば私が身体の回復作りに訓練に出ている時など。
また、それはお姉様にも言える事でこちらは明らかに私と接触しない事に安堵した顔をするので、ロイスにそれとなく注意されているのをやっぱり見かけます。お兄様よりロイスがそういった役割をする時点で、厳しい事を仰るお父様やお兄様より甘やかし気味な弟に気を許すお姉様に溜め息をついてしまいそうですが。
まぁ私と同じで今更どう距離を縮めれば良いのか解らないのでしょうね。でもあからさまに安堵の表情を浮かべている時点で、本当にお姉様の意思で距離を縮めたいと思っているのか、甚だ疑問ですが。まぁそれはさておき。早めに出立するのであれば準備も早めにしなくてはなりません。
既に長期休暇に入って3週間は過ぎています。出立するのも3週間は前。となれば今から準備を進めなくては終わりません。あの学園は確か前世と同じように制服がある学園でしたので……3年前の下調べの時に制服がある事は知ってました……制服は既に発注しているもののサイズ確認等も有ります。まぁ結果的に家族の事より優先事項が多いですわね。
そんな事を考えながら体力作りとして外に居た所でお父様が声をかけてきました。私の訓練に立ち会って下さるのでしょうか。
「ケイト」
「はい」
「ヴィジェスト殿下から聞いたか?」
「何を、でしょう?」
「イルヴィル殿下の婚姻式の話だ。来年にはシュレン嬢と婚姻式を挙げられる。華燭の典だな」
「お父様、影からの報告です?」
「うむ」
華燭の典かぁ。来年。もうイルヴィル殿下とシュレンお義姉様が結婚されるんですね。……ん? 来年? あれ? 来年って私、まだ16歳ですよね? 前回は18歳の時でもまだお2人は結婚されていなかったのですが。なんで今回は早いんです? もしや、巻き戻ったからでしょうか?
ん? ちょっと待って?
「あ!」
「どうした?」
「お父様っ! 前回の記憶を一つ思い出しました!」
「何を?」
「正しくイルヴィル殿下とシュレンお義姉様の華燭の典について、です……」
あー、すっごい忘れてましたー……
「何かあったのか?」
「それが。確かにその頃にイルヴィル殿下とシュレンお義姉様は華燭の典を挙げられる予定だったのですが。その少し前にイルヴィル殿下が外交の腕を磨くために諸外国へ訪問された事がございます。おそらく今回も行くならば、その日程や訪問する国等既に決まっているでしょうけれど。その中の一つの国に訪れた時」
私は一度言葉を切って溜め息をつく。それから続けて。
「その国の王女殿下がイルヴィル殿下に一目惚れされまして……。イルヴィル殿下は、国に婚約者……つまりシュレンお義姉様が居るから、と言ったにも関わらず、王女殿下が自分と結婚した方が国同士の同盟の結びつきが強くなるとか何とか仰って、辟易されているイルヴィル殿下に構わず、無理やりイルヴィル殿下にくっついてタータントまでやって来ましてね……」
「そんな事が?」
「一応同盟国ですので、しかも王女殿下ですから無碍にも出来ず、どうやってお帰り頂こうか、私も含めて頭を悩ませたものです。まぁ最終的に向こうの国王に同盟を破棄してでも王女殿下を引き取りに来いってなりまして。あの時の激怒したイルヴィル殿下は恐ろしかったです……。まぁその一件で、イルヴィル殿下とシュレンお義姉様の華燭の典は、私が18歳になってもまだ挙げられなかったのです」
本当、あのイルヴィル殿下を忘れていたなんて私も大概忘れっぽいですね……。本当に同盟を破棄しそうになってましたからね……。まぁ破棄しても国として離れていたので、直ちに戦争とかになる国では有りませんでしたが……それでも簡単に破棄するわけにいかない国でしたからね。輸出入が盛んなので。もちろん2度目の今も、貿易が盛んですよ。
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