2度目。ーー何故もっと早く動かなかったのでしょう。・4
「まさかそんな返答が来るなんて、ねぇ。でも事情があってそれをわざわざボレノー様を編入させて教えてくれるというのなら、それなら仕方ないわね。もう少しだけ筆頭の座にいるわ」
クルスに文句を言っても仕方ない。きちんと返事を聞かなかったのは私。ならば受け入れるしかないじゃない。それにしても。
「お嬢様?」
クルスが訝しむように私を見る。眉間に皺でも寄っているのだろう。
「ボレノー様よ。隣国に留学でさえきっと大変だっただろうに、いくらヴィジェスト殿下の側近とはいえ……いえ、だからこそ、タータントに入学ならば分かるのにシオン帝国への編入まで、なんて……どれだけ大変かしらと思うのよ」
「それは……そう、ですね」
クルスが確かにと頷く。私が隣国へ留学し更に隣国からシオン帝国への編入留学というのは、まぁ自業自得な部分がある。コッネリ公爵があまりに酷くても隣国の公爵。私が幕引きを図ってはいけなかった。それは隣国の手で……もっと言えば隣国の国王陛下の手で引導を渡す必要があったのに、私が横から割り入ったようなもの。
まぁ要するに隣国の顔を潰した、というわけですよ。だから追いやられるのは仕方ない。おまけに、ドナンテル第一王子殿下並びにノクシオ第二王子殿下の筆頭婚約者候補者の座を退いたのだから。
これまた隣国の顔を潰した事になる。とはいえ、タータント国の留学生として入学した私を、おいそれとは追い出せない。……試験結果が悪いとか理由が有ればともかく。一応留学生の面目を果たせる程度の成績は収めていたのだから、無理。
だから苦肉の策として私をシオン帝国へ編入させる事にしたわけで。タータントへ帰国させる事も考えただろうけれど、私がロズベル様と関わりがある事に気づいた陛下は、シオン帝国へ引き渡してしまった事を負い目として、ロズベル様を追えるようにシオン帝国へ編入させてくれる事にしたのだろう。
というか。
何故にロズベル様が隣国に居たのかも分からないまま、何故タータント国へ帰国させずに、シオン帝国へ相談した上にシオン帝国に言われたから、とロズベル様をシオン帝国へ引き渡してしまったのか……。いまいち背景が見えて来ないのよね。
そして、何故シオン帝国はロズベル様の引き渡しを要求したのかしら。
彼の国は魔法大国。
ロズベル様は魔法に何か関わりがあるということ?
でも、ヴィジェスト殿下はロズベル様が魔法を使える、とか言っていたかしら。聞いた事がないのだけど。それとも……。ロズベル様が何故か私やヴィジェスト殿下より年上である事の謎が、シオン帝国では解明出来るのかしら。
でもそれなら、ロズベル様が年上である事を知っていなくてはならないし。シオン帝国がそんな事を知っているわけは無いし。……やっぱり何も判らないままアレコレ考えていても仕方ないわね。シオン帝国へ行くしかない。
私はそう納得出来るけれど。ボレノー様はそんな風に納得出来るのかしら。まともに勉強も出来ないかもしれないし。なんだか側近だからって良いようにヴィジェスト殿下に使われている気もするし、それに不満はないのかしら。
……結局、これも考えても分からないし、シオン帝国でお会いした時に色々尋ねてみますか。ボレノー様個人の気持ちや考えも聞いておく方がいいと思うのよね。




