2度目。ーー約束の1年が経つので話し合います。・8
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「ケイト。分かってはいた。分かっていたけれどそんなにハッキリ言われてしまうと、私に魅力が無いように聞こえてくるのだが」
ガックリと項垂れるヴィジェスト殿下に首を捻る。魅力、ねぇ。
「私の好悪の感情は別として。ヴィジェスト殿下は魅力的だと思いますよ」
ガバッと音がした。……えっ。ガバッと顔を上げるって表現だけじゃなくて実際に音がするの⁉︎
「本当か⁉︎」
食い気味の殿下にちょっと引きながらも頷いて客観的な視点で見たヴィジェスト殿下について話す。
「先ずは当然ながら、その容姿・地位ですよね。国王陛下と王妃様のご子息で有りますから容姿端麗ですし、第二王子という事で身分も申し分ない。ただ。前回では、その……王子という地位を笠にきて少々何をしても許される、と勘違いされていたかなぁ……と」
失礼だと思うが、まぁ事実なので仕方ない。
「確かに。前回の私は第二王子の身分に何をしても赦されると思っていたな。恥ずかしながら勉強よりもロズベルを優先する程度に愚かだったし、王命だったにも関わらずケイトが婚約者である事に怒りを覚えて君を蔑ろにしていた」
再び撃沈していますが、そこは私もフォローのしようがない。
「ですが。今回のヴィジェスト殿下はきちんと王族……第二王子である事の立場を考えていらっしゃるようです。其処は魅力ではないでしょうか。また前回はあまり関わらなかったので何とも言えませんが、今回のヴィジェスト殿下は勤勉であり、他者の意見を分け隔てなく耳にして賛否をきちんと聞き取って考えている、と兄から聞いております」
イルヴィル殿下と友人の兄からの話なので、かなり信憑性の高い評だと思う。
「あ、ああっ。頑張っているつもりだっ」
イルヴィル殿下経由だと気付いたのかヴィジェスト殿下の表情がかなり明るくなって来ました。ではこの気持ちのまま契約解除して下さーい。
「随分と魅力的になられたと思いますよ」
「で、では、私の筆頭婚約者候補者の座をもう少し……」
「それとこれとは話が別です。私、そろそろあの方を探したいと思っていますので」
スッパリ可能性をぶった斬ればヴィジェスト殿下が涙目です。だからなんでですか。私は最初から殿下との婚約はお断りしていると思いますけど?
「……あれだろう? ドミトラル・レード。レード男爵家の三男」
「はい」
「前回では画家だったが今回は全く名を聞かないな」
「……はい」
良くご存知で。前回で殿下とドミーに関わりは無かったはずなんですけど。
呑気にそう思っていた私は、けれど次のヴィジェスト殿下の発言に息が止まるかと思った。
「それに今は行方不明になっているじゃないか」
「………………えっ?」
今……なんて。ドミーが!ドミトラル様が行方不明?
血の気が引いていく感覚が自分でも分かり、座っている事すら出来ないくらい気分が悪くなる。
「ケイト!」
ヴィジェスト殿下からの呼びかけに応える気力が無くなる程手足が冷たい感覚がしてーー私の意識は途切れた。
お読み頂きましてありがとうございました。




