2度目。ーー約束の1年が経つので話し合います。・6
「これは私の叔母……と言っても叔父の妻なので血は繋がっていないのですが……から伺った話です」
カッタート様が前置きをして話してくれた所によれば。カッタート様の叔母様のお姉様がコッネリ公爵の婚約者だった、らしい。ご病弱でコッネリ公爵と結婚前に儚くなられたのだが、その後に問題が起きたそうな。曰く。
「コッネリ公爵家と叔母の家との政略結婚ならば、叔母の姉に当たる方の代わりにコッネリ公爵に嫁ぐ事は叔母も納得したでしょう。しかし」
「違った、と」
「その、叔母の姉に一目惚れした公爵が無理に縁談を組みました。叔母の家は伯爵家なので公爵家には逆えず……。病弱を理由に断ったのに無理だったようで。その後叔母の姉が儚くなりコッネリ公爵は婚約者に良く似た叔母にやはり一目惚れして」
「……もしやこちらも無理やり婚約を?」
「さすがにコッネリ公爵は婚約者を、叔母は姉を喪ったわけですから喪が明けたら……という猶予があったわけですが。叔母は1年ではなく3年喪に服したいと拒否したようです」
この世界ではどこの国も貴族の身内が喪に服す期間をおよそ1年としている。暗黙の了解というヤツ。だが高位貴族になる程、その期間が長くなりがちだ。だからカッタート様の叔母様がそう仰ってもおかしくない。
「コッネリ公爵はその願いを踏み躙った、とか?」
「いえ。世間体を考えたのか、それは受け入れられたようですが。叔母は元より無理やり姉と婚約したコッネリ公爵を嫌っていまして、どうにかコッネリ公爵との縁談を断りたかったそうです。そんな時タータント国からの使節団として護衛をしていた叔父と出会い恋に落ちたようで」
あ、そういう流れね。
「そのまま3年の喪に服す間に恋に浮かれて駆け落ちをした娘を勘当した、という落とし所かしら?」
「良くお分かりに」
カッタート様が目を見開いて私をマジマジと見る。……いや、無礼なんですけど。扇を開いて顔を隠す私を見て、自分が無礼だったと気付いたようだ。
「失礼を。ーーそんなわけで叔母は叔父と結婚出来て幸せなようですが、今回の一件が耳に入って私を通じてヴィジェスト殿下に話を。以上が我がカッタート家とコッネリ公爵家の繋がりなのです」
あー。成る程ね。さすがにウチの影達も公爵の元婚約者までは遡らなかったのでしょう。若しくは亡くなった婚約者の存在は知っていたかもしれないけれど、亡くなっている時点でそれ以上は調べなかったのかもしれない。それならば報告が来なくても納得はいった。
「そういう繋がりがございましたか」
「はい。……叔母には詳しい顛末を話す事が私の役目かと思いまして、失礼を承知でセイスルート嬢に事の仔細を伺いたく」
「構いません。話して欲しいと仰るのであれば、お話します」
堅苦しく頭を下げるカッタート様に頷いて私はコッネリ邸襲撃の一件を語り出した。
「ケイト! 身体は? 大丈夫なのか⁉︎」
私が毒を飲んだ件を話せばヴィジェスト殿下が顔を真っ青にして私に問う。苦笑して頷いた。
「大丈夫ですよ。ヴィジェスト殿下。こちらに帰国して暫く休んでいましたから」
「そ、そうか。無事ならば良いのだ。……君は最期が毒付きの刃物で殺されたから」
「だから、です。だからコッネリ公爵には毒を用いたのですよ」
私が告げればヴィジェスト殿下は驚いたように目を見開いて……それから「そうか」と頷かれた。私の意図が理解出来たのだろう。それでこの話は終了した。
では、殿下。本題に入りましょうか。




