2度目。ーー約束の1年が経つので話し合います。・5
そしてなんだかんだでヴィジェスト殿下とのお茶会当日を迎えた私の現在地は、王城の中庭にてヴィジェスト殿下・ボレノー様・カッタート様からの出迎えを受けていた。……いやいやいや、なんで⁉︎ なんでこの3人からお迎えされるの⁉︎ 意味わかりません。
「ようこそ、ケイト」
「お招き頂きまして光栄ですわ、殿下」
内心の動揺は当然出さずに挨拶を交わす。ボレノー様とカッタート様とも挨拶を交わした後、今回はお二方も同席される。……これは何か有った、という事で宜しいのかしら。
「ケイト。人払いをさせてもらうが、構わないか?」
ふむ。本格的に何か有ったわけですか。当然ながらデボラが私に着いて来ていますが、ヴィジェスト殿下に尋ねられている以上、余程の理由が無い限りは断れない。まぁこれが命令だったならば、セイスルート辺境伯家はタータント王家に忠誠を誓っていない事を理由に拒否しましたけど。こちらに拒否権を設けた上で仰るならば、それは受け入れておく方が良いという事です。
デボラに視線で下がるように促します。まぁ声が聞こえない範囲では有っても様子は判る範囲という事ですけどね。一応淑女の身ですから、それは当然。殿下も似たような距離で護衛を待機させますね。以前のお茶会とほぼ同じ環境ながら、お二方を同席させる事は以前は無かった。さてさて。どのような話が聞けるかしら。
「先ずは許可無く2人を同席させる事について詫びる」
これには私も驚きました。2度目のヴィジェスト殿下の成長が著しいです。随分とお坊ちゃんというかお花畑思考というか、自分本位なところが無くなって他者を気遣えるようになったみたいで。
1度目の出会った頃の私が今のヴィジェスト殿下に会っていたなら、外見だけでなく内面も素敵だ、と益々好きになっていたでしょうね。あの頃は前世の記憶も無かった上に、辺境伯家で育ったけれどだいぶ王家の教育に思考が浸かってましたから、貴族らしい考え方が強かった……気がします。だから一目惚れしたヴィジェスト殿下を陛下をダシにして、繋ぎ止めようとしたわけですからね。
懐かしい思い出? そんな事ないですよ。只の黒歴史です。出来るなら私の記憶から消去したいですけど、まぁあの記憶が有るからこそ、同じ轍は踏まないぞ、と誓えるわけですから前向きに捉えておきましょう。そんな事を考えながら口ではきちんと「構いません」と返答する。
「2人を同席させたのは、隣国の一件をジュストから報告を受けたからだ。……コッネリ公爵家へ乗り込んだ、と。詳しく聞きたいが、実はライルの家・カッタートとコッネリ公爵は関係が有るので、ライルも同席させる」
……はぁ⁉︎ ここに来て新事実発覚ですか⁉︎
ちょっとちょっとちょっとーっ! クルス、カッタート家がコッネリ公爵と関わりが有るって報告を受けていませんけどー⁉︎
内心で叫ぶ私を見透かしたのか、それとも偶然か。
「カッタート家とコッネリ公爵については、ケイトの家でも把握していなかったんじゃないか、と思うのだが」
一瞬なんて答えようかと思ったけれど、仕方なく頷いた。
「はい。全く」
「その件について、私から説明させてもらっても宜しいですか?」
私の苦い表情での肯定にカッタート様が静かに私を見ながら問い掛けて来たので、私も気を引き締めて「お願いします」と頭を下げた。




