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成る程。では、お互い不干渉といきましょう。  作者: 夏月 海桜
3年目の学園生活は留学の留学からスタートです。
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2度目。ーー約束の1年が経つので話し合います。・3

すみません、遅くなりました。

家族との朝食。ぎこちなさ満載でした。お母様とお姉様が無理やり私に話を振ってきて私もそれに頬を痙攣らせた笑みを浮かべて応えて。それを見兼ねた男性陣が大袈裟に話を明るくしようとして。……記憶にある限りで最悪な家族の団欒だったように思えます。寧ろお姉様がアレだった方が団欒としてはマシだったという不思議。


疲れ果ててしまった私は「体調がまだ完全ではないので」と早々に引っ込んだ。


「お疲れ様です、お嬢様」


「デボラ、私が不自然なの解ってた?」


「物凄く不自然でしたねー」


本当に遠慮なく言ってくれるわね。まぁその方が有り難いんですけどね。デボラとの散歩でかなり体力が落ちている事は分かったので、今日一日は起きている事を目標にしておこう。とはいえ、何をしようかな。


「お嬢様、それ無意識でしょうか」


デボラにそれ、と言われて首を傾げてデボラの視線を辿る。ーー私の左手が護身用ナイフを持っていて片手で放り投げてはキャッチしていた。……もちろん無意識なので見てもないのに、柄を危うげなく掴んでいる。放り投げてはクルクルと回転してキャッチしていた事に気付いて慌てて護身用ナイフをしまった。


「……無意識だったわ」


「お嬢様。朝食の時間、苦痛だったのかもしれませんね」


本来左利きの私が左手を使う事はほぼない。矯正されたのではなく、自ら右手に変えたのは5歳の頃だったか。訓練でナイフを扱っていた時に誤ってガサガサと揺れた草むら目掛けて左手でナイフを無意識に放ち……一撃でそこにいた野犬(獣ではなくただの犬だった)を仕留めてしまった。


ーー初めて私が生き物の命を奪った瞬間だった。


一部始終を見ていたお父様が「良い腕前だ」と褒めてくれたけれど。私は寧ろ怖くて左手を使う事はやめた。でもいざと言う時に使えないと意味がないので、左手に武器を持って扱う練習はしていた。的にした大木目掛けてナイフを投げれば右手では10回に1〜2回は外しても、左手は偶に訓練するだけなのに、一度も外した事はない。それどころか。


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


何度やっても同じ場所に。自分の左手が自分の物ではないように思えて怖かった。何年経とうと変わらないから、どんな事があっても左手は使いたくない、と決めていた。でも。


辺境伯家にいる者達はそれを知っているのにコッネリ公爵の元に乗り込んで行った時。ガリアがあっさりと左手を使用する事を勧めてきた。「お嬢なら大丈夫」そう言われた気がした。結局使わなかった左手。今、無意識にこんな事をやっていて思う。


果たして私はあの時左手を使っていたならば、コッネリ公爵邸の私兵もコッネリ公爵自身も、()()()()()()()()()()()()その命を奪ってしまっていたのではないか、と自分が空恐ろしい。


「……さま。お嬢様?」


デボラに呼びかけられてハッとした。どうやら深く考えこんでしまったらしい。


「ええと、ごめんなさい、何?」


「お嬢様。きちんとご自分の気持ちを仰ってはいかがですか? アウドラ男爵家の……私の父や継母や異母兄弟達に言いたい事はないのか、私に確認したではないですか。同じですよ。どなたに言いたい事があるのか分かりませんが、ハッキリ仰って。それで受け入れられなくても、私はお嬢様の味方ですから。そうやって抱え込んでいるのはきっとお嬢様にとって良くないと思いますよ」


デボラに発破をかけられて。私は頷く。取り敢えずはお父様とお兄様とロイスだろう。男性陣には分からない気持ちだろうけれど、解ってもらえないと諦めるのではなく。先ずは話す事、とデボラに背中を押してもらった。

お読み頂きまして、ありがとうございました。

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