2度目。ーー婚約者候補者達とのバトルII・5(ドナンテル&ノクシオ編)
すみません。遅くなりました。
「コッネリ公爵の“娘”を警戒しようと思っていたのですが」
私がポツリ溢せば、4人からの視線が集中する。何か考えがあるのか? ということでしょう。考えというよりは……
「いっそのこと、婚約者候補者一同を集めませんか?」
「「「「は?」」」」
あら、綺麗なハーモニー。4人の唖然とした表情に首を傾げて「なんですか」と問いかけた。
「えっ。一同を集めるって? えっ? なんで?」
ラスピリア様の質問にそれこそ首を捻る。
「コッネリ公爵の“娘”が殿下方の婚約者として宛てがわれ、折を見て殿下方を暗殺。同時進行で国王陛下も暗殺すれば、コッネリ公爵の国主簒奪が完成します。で。現在のところ筆頭婚約者候補者は私ですからね。先ず邪魔なのは?」
「ケイトリンか」
ノクシオ殿下が眉間に皺を作って答える。
「ええ。実際私はしょっちゅう命を狙われています。だから、いっそのこと、婚約者候補者達を集めて競わせた結果、誰が見ても文句の付け所の無い方を婚約者にします、と言えば?」
「コッネリ公爵に拒否権は無い。寧ろチャンスとばかりに自分の“娘”の中で最も相応しい令嬢をその競い合いに参加させる」
さすがボレノー様、意図を汲んで下さりありがとうございます。つまり、そういうことなんですよね。誰が殿下方の婚約者として送り込まれて来るのか判らないのなら、最初から出させれば良い。きっとコッネリ公爵のことです。裏は読むでしょうが、この程度の私の浅知恵で足元は掬われないと思うはず。だから一番相応しい“娘”を参加させるでしょう。
「向こうから参加させる事によって、コッネリ公爵の企みを潰すのか」
ドナンテル殿下の言葉に頷く。
「私もコッネリ公爵のご令嬢に負けるわけにはいきませんからね。当然競い合いに参加しますし、頑張ります」
「となれば。ケイトリンが狙われる事もない?」
ラスピリア様の予想にニコリと笑って肯定しておく。
「成る程。それならば早めにその予定を立てよう。父上にも話を通す。競い合いの内容は父上である国王陛下に考えてもらえばいいだろう」
ノクシオ殿下が納得して力強い返事をする。公平さを主張すれば、国王陛下も否ということはないでしょう。
えっ? ついでにコッネリ公爵のご令嬢には勝っても、他のご令嬢に負ければ私は筆頭婚約者候補者の立場を退けるだろう、と考えている? ええ、考えていますが、何か。いい加減王子方の婚約者候補から外れたいんです。この国に留学に来たのは、確かに窮地に陥っていると予想出来た殿下方を助けるためも有ります。ですが。
別に殿下方の婚約者候補になるつもりなんて毛頭無かったし、とっとと辞めたいし、私は2度目の人生で1度目に味わえなかった学園生活や、王子妃教育以外の勉強や、たくさんのお友達を作りたいと思って来たのです! タータントじゃ、お姉様がアレでしたからね。楽しい学園生活なんて送れなかった事でしょう。実際、ルベイオお兄様もお父様も国外に出ろ、との判断でしたからね。
なのに。
折角楽しい学園生活を送れると思ったのに、殿下方の筆頭婚約者候補者なんて、自由がないじゃないですか! 前世の記憶が残っているので、友達が居る学校生活は楽しいって知ってるんですよ! 部活とか生徒会とか楽しかった記憶があるし(勉強はそうでもなかったけど)学校帰りに友達と、近所のコンビニで買い食いをした経験も有りますよ。
この世界にコンビニは無いですけど、友達作って休日に寮から外出して、カフェでお茶したいですよ! 殿下方の筆頭婚約者候補者という立場じゃ、そんな気楽な事が出来るわけないじゃないですか! 監視されているんですから。ただでさえ留学生という立場で目立つのに、殿下方の筆頭婚約者候補者になってしまって、余計に目立つんですよ!
おかげで注目されない平凡で平穏な学園生活が送れない……。一挙手一投足を見られていて羽目を外せない私のチキンハートが悪いんですか? こんな目立つ立場に望んでもいないのに居るから、早くこの立場から抜け出したいだけですよ!
だからこの機会に大手を振って殿下方の筆頭婚約者候補者の座を降りるつもりで画策しますよ! これくらい、良いと思うんですよね! ああ今から当日が楽しみです。
年末年始は、忙しいので毎朝7時に更新出来るとは限りません。毎日更新だけは頑張りますので、気長にお待ちください。




