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春日部てんこの異世界器用貧乏  作者: O.K.Applefield
7章
73/215

7-6


 村に来て数日。

 一回目の学校の授業を行った。

 強制ではないがなるべく出て欲しいとふれまわってもらったので、村のほとんどの子供たちが授業に出て来てくれた。

 年少、年長組共に、午前2時間、午後2時間の授業で、お昼に給食を出すので、それ目当ての子供も居た様だ。

 給食費などは全部こちら持ちだ。

 来年の秋になるまで税収は無いので、私達の持ち出しになるが、みんな今までの貯えが有るので何とかなる。

 主にユキが教師として教えるが、補佐で私やリーナ、カレンも教える事にした。

 小学生レベルの読み書き計算と、初級の魔法をくらいなので、なんとかなると思ったが、子供に教えるとなるとこれがなかなかに難しい。

 いろいろ工夫がいるみたいだから、今後の課題としておこう。

 その点やはり、教えるのはユキが一番うまかった。

 あと、ワーリン王国に統治されていた時代は学校教育が隅々の村まで行き届いていなかったので、年代によって読み書きのできる人の割合が低かったりする。

 なので大人の希望者を教える日を別に週一で設けた。

 

 リーナの診療所もボチボチ患者がやって来るようになった。

 こちらも他三人の手が空いているときは手伝う事にしている。

 特にユキは闇魔法の鎮静や麻酔が使えるので助手として優秀だった。

 お屋敷での仕事は主にリーナとユキに、私とカレンは外回りの仕事をする方向で分担をした方が良いかもしれない。


 前村長が作物を作っていた畑も有って、今までは村の人たちが手入れをしていたのだが、そのうちの少しを返してもらい私達で耕作することにした。

 エドガーさんが護衛で付けてくれた兵士さん達にも手伝ってもらう。

 彼らのお給料は今年分はエドガーさんが出し、来年以降は私達が出す契約になっている。

 彼らは名目的に領主の兵で有るが、私達が借り受ける形になる。

 貴重な兵力を分散することになるが、一か所に集めて置くのもまた問題だそうだ。

 予備の兵力として、ある程度分散しておくのも大事なのだそうだ。

 彼らの仕事は私達の護衛と、日々の鍛錬であるが、それだけでは時間が余るので、その間は自分達の食い扶持を稼いでもらう事にした。

 小麦とりんご、少しばかりの野菜と後は家畜も少々、私達が食べて行く分にはぎりぎりの所ではあるが、足りない分は私達の貯金と来年以降の税金で賄う事になる。

 村の公共事業、道の整備や共同で使う水車小屋の補修などは、村の人達を労働力として駆り出す権限はあるが、資材の出費は私達が行う。

 一応試算してあるが、今年は赤字だが来年以降は税金を徴収できるので、かなりのプラスになる事が予想される。

 前村長があんな大きなお屋敷を建てられたのも納得なくらいだ。

 取り過ぎになる様だったら、その都度税率を下げるつもりだ。


 ある晴れた日、年長組の授業で初級魔法の訓練を行った。

 屋内では色々面倒なのでお屋敷の庭で行う。

 魔法の素質は誰にでもある訳ではないが、かと言ってそれほど希少でもない。

 大体半数くらいの人には有るだろうか。

 ただ、戦闘に使える程強力な魔法が使える人となると、かなり少数になる。

 それでも簡単な魔法でも使えると日常生活で色々便利である。

 昼食後の午後の授業なので、魔法の素質のない子供たちは自由時間として教室で自習だったり、遊んでいてもいい事にしている。

 素質のある子も適性は色々なので、教えるのにも色んな適性が要る。

 ユキは魔導探究者のスキルで全属性の魔法が使えるので、教えるには都合がいい。

 その次は生活魔法と治癒魔法が使える私だ。

 リーナとカレンは自習中の子供達の相手をしてもらっている。

「そうそう、目標をよく見て頭の中で思い描いた炎のイメージを重ね合わせる感じで」

 私は女の子の一人に付いて、細い木の枝に着火する魔法の指導をしている。

 私もこの世界に来て初めて使った魔法だが、道具を使わずに火を起こせるのはかなり有用である。

「火の神よ、我にその力の欠片を与えたまえ!」

 彼女が叫ぶと、枝の先に小さな火が灯る。

 どうやら彼女は有神派の様だ。

 呪文の唱え方はそれぞれが意識を集中しやすい方で、有神派、無神派どちらかに統一しなくてもいい事にしている。

「やった、出来たよ、先生!」

 女の子は嬉しそうにそう言って、私の方を振り向いた。

 可愛い。

「良くできました。でも使う時は大人と一緒に火を使っていい場所でしてね」

 一応、お約束の注意をしておく。

 彼女にはそのまま練習を続けるように言って、私は別の子に教えようと立ち上がった。

 その時、お屋敷の敷地に入って来る影が有った。

「村長!ちょっと良いかい?」

 見ると、アインさんが歩いてきている。

「おや、どうしました?」

 子供達の指導はユキに任せて、私が対応する。

「実は村の近くに狼が出たみたいなんだ」

 アインさんは落ち着いているが、真剣な表情でそう言った。


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