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春日部てんこの異世界器用貧乏  作者: O.K.Applefield
6章
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6-4


 アルマヴァルト領内の人口調査の集計や、食料・物資の配給などの事務仕事を任されて数週間が経った。

 最初は上手くできるか不安だったが、今は私達でなんとかこなせている。

 やっている事は簡単な計算と、書類を書くことだけだ。

 ただ量が多くて、ミスが出来ないというプレッシャーが有る。

 そこは、みんなでチェックし合ってなるべくミスを見逃さないようにして、対処してきた。

 そんなこんなしている内に、段々と仕事の量が減って来た。

 私達が慣れて、早く終わらせることが出来るようになったのもあるが、実際に書類の数が少なくなったみたいだ。

 調査も終わり、住民からの陳情も当初のものは粗方解決出来たからだろう。

 次に忙しくなるのは、税の徴収が始まる頃だ。

 しかし、今年は特例としてアルマヴァルト領では無税となる。

 となると、来年まで暇になる訳だが。

 そんなある日、私達はエドガーさんに呼ばれた。

「やあ、みんなお疲れ様」

 領主の執務室でソファーを勧められた。

 ディアナさんをはじめとする執事の人は別の部屋に行っていて、代わりに何故かロリアーネさんが居て、お茶を淹れてくれている。

 領主夫人にお茶を淹れさせるのもどうかと思ったが、

「私が好きでやっているのだから、気にしないで座っていて」

 そう言ってくれたので、席に着いた。

「それで、今回の話だけど、君達のお陰で当初の仕事は大分片付いて、僕とディアナ達だけで書類関係は捌けるくらいになって来たんだ」

 エドガーさんがそう切り出してきた。

 まあ、これは私達も予想できていた。

「でも別にあなた方をクビにするつもりはないのよ。優秀な人材は抱えておきたいですから」

 お茶を淹れ終わったアーネさんが、エドガーさんの隣に座ってそう言った。

 確かに、仕事の増減で人を増やしたり減らしたりするほどこの人達はドライではないと思う。

「そこでだ、君達には別の仕事についてもらいたい」

 エドガーさんがそう言う。

「ここから北の方に、少し大きめの村が有るんだが、そこの前の村長がワーリン王国に近い人間で、今回の戦争で敵軍と一緒に向こうの本国へ逃げて行ってしまったんだ。そこで、君たちに不在になったそこの村長になって貰いたい」

「村長?」

 私が聞き返す。

「そうだ、実質的に領主と言ってもいい。私の配下と言う事になり来年以降は税を納めてもらうが、残った分は君たちの収入として構わない」

「そこそこ大きな村ですので、それなりの税収は見込めますわ。先の戦争や今回のお仕事での報酬と言う意味もありますわ」

 二人の言葉に私達は顔を見合わせる。

 話を聞く限り、今貰っているお給料よりも大分収入が良くなるらしい。

「特にてんこ殿は街よりも長閑な村の方が気が休まるのではないかな?」

 エドガーさんがそう言ってくれる。

 確かに、ここで色んな人達とやり取りする仕事はストレスが溜まるが、

「そうだな、その方が良いだろう」

 何故か私ではなく、カレンがそう答える。

「そうね、そうしましょう」

「異議な~し」

 リーナとユキもそう言いだす。

 なんか、みんな私に気を使ってくれてるらしい。

 そこまでされたら、私も承諾しない訳にはいかない。

「決まりかな?」

 エドガーさんが念を押してくる。

 結局、村長になることが決まってしまった。

「ああ、それからなんだが・・・」

 思い出したようにエドガーさんが付け加える。

「村長と言うからには村の代表な訳で、四人全員が村長にはなれないんだ。なので、君たちの中で誰か一人代表と言うかリーダーを決めて欲しい。君たちは仲が良くて誰が上か下かなんてのは無いのは知っているが、一応決まりなのでね」

 その言葉に、私達はまた顔を見合わせた。

 確かにこれは難しい問題だ。

 一番頭がいいのはユキだが、彼女は自分で動くよりもみんなにアドバイスをする参謀役が似合っている。

 カレンは元運動部だけあって活発だが、少し一匹狼的なところもある。

 リーナは少し臆病なところはあるが、明るくコミュ力は高い。

 ここはやっぱりリーナかな。

「ああ、そう言う事なら」

 ユキがそう言う。

「まあ、最初から決まっているだろう」

 カレンもそう言う。

 そしてリーナが、

「てんこちゃんに決まってるわ」

 そう言った。

「なんで!?」

 私は、思わずのけ反ってしまう。

「そうだな、僕もてんこ殿になると思っていたよ」

 エドガーさんまでそう言いだした。

「ちょ、ちょっと待って。なんで私?私コミュ障だし、そんなガラじゃないし、この中じゃ何て言うか四天王の中で最弱みたいな感じで・・・、リーナの方が良いじゃない!」

 私がワタワタとそう言うが、誰も賛同してくれない。

「私はリーダーとか向かないよ、何でてんこちゃんの方が良いかって言うと、うーん、何となく?」

 リーナがそんな事を言うが、何となくってどういう事?

「私もそう思うな、何となくって言うか、てんこちゃんが一番いざと言う時に肝が据わっている感じがする」

 カレンもそう言った。

「コミュ障とかそう言うのは気にしなくていいよ、てんこちゃんはデンと構えていれば、細かい事は私達がやるから」

 ユキがそう言う。

 何?私が無駄に体が大きい事を言ってる?

 思わず僻みっぽくなるが、

「そうね、それがリーダーにとって一番大事な事じゃないかしら、全体を見回して焦らずに物事を判断できる。仲間を信頼して仕事を任せられる事は大事よ」

 アーネさんが纏める様にそう言ってくれた。

 そうは見えないが、一応この場の中では一番年上の彼女が言うと重みが有るような気がする。

 はあ~。

 私は思いっきり大きな溜息をついた。

 どうやら、私がリーダーという事で決まってしまった様だ。

「決まった様だな。では、てんこ殿が村長という事で、あ、それと、一応領主なので、準男爵の位が与えられる。あくまで『準』なので貴族ではないが、それに準じる立場なので覚えておいてくれ」

 最後にエドガーさんがそう言ってきた。

 女なのに男爵?と言う疑問はあるが、貴族の位の中で一番下なのが男爵なので、しょうがないだろう。


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