4-ex
ベルドナ王国とワーリン王国の国境で始まった最初の戦闘。
ワーリン軍の伏兵による奇襲で、ベルドナ軍は壊走を始めていた。
その中で他のベルドナ軍の兵士と共に逃げている二人がいる。
黒井誠
火魔法:5
土魔法:8
槍術:8
金属加工:4
穀物栽培:3
果樹栽培:2
白鳥凛
治癒魔法:5
光魔法:5
生活魔法:6
短剣術:4
料理:5
穀物栽培:2
野菜栽培:3
「あっ!」
凛がつまづいて転ぶ。
敵兵が迫って来ている。
「リン!」
黒井が立ち止まり、振り向く。
「地壁魔法!」
凛を守るように地面が盛り上がり土壁が現れる。
黒井は彼女の手を取り立ち上がらせると、一緒に走り出した。
強固な土壁だが、敵に同じ土魔法使いが居ればじきに壊されるし、そんな事をしなくても多数の敵に回り込まれる。
今はとにかく逃げるしかない。
「カレンちゃんを見なかった?どこにも居ないの!」
凛が聞く。
「分からない、見失った!それよりも今は自分達が逃げることだ!」
黒井はそう返す。
二人はとにかく戦場から離れる方向に逃げ続けた。
味方の兵士も散り散りになる。
やがて二人は、敵兵から隠れるために山奥に避難する農民の一団に紛れ込んだ。
家畜を連れ重い荷物を背負った数十人の集団だった。
重い足取りで進む彼らの足が不意に止まった。
「ここを通りたきゃ、通行料を払いな」
武装した十人くらいの男達が行く手を塞いでいる。
武装と言ってもだいぶ粗末なものだった。
どうやら敵兵ではなく野盗の様だ。
「そんなものを払う云われはない!」
農民のリーダーらしき男が、きっぱりと拒絶する。
「なんだと・・・」
野盗たちが武器を構えて凄む。
しかしこちらも農民とはいえ、戦争から逃げている最中なので、男連中は木の棒を削っただけの槍や農具などで武装をしている。
数はこちらが多いが、半数以上が女子供なので守りながら戦うのは大変かもしれない。
普段は数人程度の旅人を襲っている野盗なのだろう、こちらがやる気を見せたら腰が引けたように見えた。
それでも正面からぶつかれば農民側にも被害は出るだろう。
「戦いはもうこりごりなんだがな・・・」
黒井が呟いて、前に出る。
「石礫!」
野盗たちめがけて土魔法を放った。
石礫が野盗たちに降り注ぐ。
「やべえ!魔術師が居るぞ!」
突然の攻撃に驚いた野盗たちが逃げ出す。
ちょっと脅して、何か手に入ればラッキーくらいに思っていたのだろう、命を懸けるつもりもなさそうだ。
「風盾!」
急に凛が魔法を発動させた。
野盗の一人が苦し紛れに放った矢が黒井に当たりそうになったのだ。
矢は風に阻まれてギリギリのところで外れる。
「あ、ありがとう、リン」
黒井が礼を言う。
「助かったよ、あんたら名前は?」
農民のリーダーらしき男が二人に聞いて来た。
「俺はクロイ、こっちはリンだ」
黒井がそう答える。
農民たちは山奥で十日ほど野宿をした。
二人は彼らの用心棒的立ち位置で一緒に居させてもらった。
やがて、ワーリン軍が敗走したと言う情報がもたらされると、彼らは村に戻った。
クロイとリンもそれに付いて行き、村に住まわせて貰う事になった。
農作業の手伝いをしたり、まだ安定しない村の用心棒などをして、食料を分けてもらう。
やがて冬になり、食料事情も厳しくなるが、王国から戦災に会った村に対しての援助も有ったので何とか暮らしていけた。
春が近付いてきた頃、ある話が舞い込んだ。
「今度の戦争で王国が隣の国から分捕った土地で、入植者を募集しているらしい」
クロイがリンにそう話す。
「新しい領主はエドガーとかいう人で、なんでも俺たちが居た第三魔法隊の新しい隊長だった人みたいだ」
「そこに引っ越そうって事?」
「ああ、ここで村の人の手伝いをするより、自分達の畑を持った方がいいと思うんだ。最初の一年は食料の援助もあるみたいだし」
その言葉にリンはうなずいた。
「そうね、その方がいいかも、もうすぐ二人から三人になるしね」
そう言って、彼女は自分のお腹に手を置いた。
ここまで読んでいただいて、ありがとうございます。
一応ここで第一部完みたいな感じです。
続きは冬になってから書き始めるつもりです。
当方リアル農民なので、秋は仕事が忙しくなるのです。
次からは毎日ちょっとずつ投稿ではなく、週に一度くらいある程度まとめて投稿になるかも。
では、また~。




