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春日部てんこの異世界器用貧乏  作者: O.K.Applefield
4章
53/215

4-19


 三日後、私達は村まで戻って来た。

 途中、領主の館があるエストの街に寄って、徴兵に対する報酬も貰った。

 実はユキも冷蔵庫の修理でベティさんからの報酬が有るので、今の私達は結構リッチだ。

 まあ、この先何があるか分からないから、みんな貯金なのだが。

 村の人達はみな麦の刈り入れに追われている。

 収穫も大分終盤みたいだ。

 途中ジョージさんに会った。

「おお、今戻ったのかい?他の連中より大分遅かったじゃないか?」

「はい、ちょっと王都に寄ってましたので」

 私が答える。

「ほう、王都か、いいじゃないか。と言うか、なんか人数が増えてるな」

 カレンとユキを見てそう言う。

「ええ、まあ、色々有りまして・・・」

 私はあいまいに笑った。

「それはそうと、戻ってきてくれて良かった、実は今・・・」

 ジョージさんは深刻そうと言うか、ちょっと困ったと言う感じで話し出した。

 実は最近、村の周辺に野生の鹿が出没して麦や野菜が食べられる被害が出ているらしい。

 去年までは熊のモンスターが森の中の鹿などを襲っていて、数が調整されていたようだが、私が倒してしまったので鹿の数が増えたらしい。

 熊が食べていた分は私が捕まえていたが、ここ一月ほど居なかったので、森の中から人里に出没するようになったらしい。

 ジョージさんも亡くなったお父さんから狩りの技術をいくらかは習っていたらしいが、麦の収穫が有るので鹿狩りに行く暇は無い様だ。

 他の村人にも狩猟が出来る人は居るが同じように農作業優先だそうだ。

「分かりました。早速明日から鹿狩りします」

 私はそう答えた。

「ああ、悪いが頼む。狩った肉はまた麦と交換してもいいぞ。今年は豊作だから税を納めても、まだ余裕がある」

 そう言うジョージさんと別れて、私達は山小屋に向かった。


 山小屋に着いたら、私とリーナが作っていた畑も鹿に荒らされていた。

「あちゃー、カボチャが全滅だ」

 他の野菜は夏の終わりくらいで枯れてしまうものだから良かったのだが、唯一収穫前だったカボチャが根こそぎ食べられてしまっている。

「おのれ、許すまじ!」

 一緒に畑の世話をしていたリーナが怒りに震えている。

 まあ、一ヶ月も居なかったんだから仕方ないと言えば仕方ない。

 二本のリンゴの木は高い所の枝になっている実は無事の様だ。

 取り敢えず山小屋に入り、街で買ってきた食材で夕食にする。

 お風呂を沸かし、順番に入って、その日は早くに寝てしまった。

 二部屋ある寝室は私とユキ、リーナとカレンで別れた。

 ベッドは各部屋一つずつしかないから、二人で一台を使う。

 その内、新しく作らないといけないだろう。


 次の日、私とカレンで鹿狩りに出て、リーナとユキでリンゴの収穫をして貰う事にした。

 まずは、小屋の近くの罠を仕掛けなおす。

 カレンも狩猟のスキルを持っているが、罠はあまり上手くないらしい。

 なので、この機会に覚えてもらう。

 逆に弓のスキルは彼女の方が上なので、そのうち教えてもらうつもりだ。

 罠を掛けたら、次は森の中を歩いて獲物を探す。

 いつもなら森の奥へと向かうのだが、村の周囲に出没しているらしいので、そちらに向かう。

 暫く歩き回って、四頭ほどの群れを見つけた。

 私とカレンで同時に矢を放ち、二頭を仕留める。

 残りは逃げたが、暫くは人里には近づかないだろう。

 山小屋より村の方が近かったので、村の人を呼び、村まで運んでもらう。

 私とカレンと村の人で解体し、村の人でお肉が欲しい人とは小麦粉や野菜と交換することにした。

 今日全部は持って帰れないので、交換するものは後で山小屋まで運んでもらう約束をする。

 運ぶ手間賃の分はおまけしておいた。


 山小屋に戻るとリーナとユキがリンゴの収穫を終えていた。

 赤いリンゴと黄色のリンゴが作業小屋の中に山盛り積まれている。

 これだけあれば冬の間中食べられるだろう。

「アップルパイ焼いたよ~」

 山小屋の中に入ると、ユキとリーナがテーブルの上に焼き立てのアップルパイを出してきた。

 今はちょうど、おやつの時間くらいだ。

 四人で座ってアップルパイを食べる。

 春に一人で手入れしたリンゴの木に実った果実を、今は四人で食べている。

 熱々で甘酸っぱいリンゴの味が、なんだかとっても嬉しかった。


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