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「そんな、アーネ様、私たちのような庶民にも優しく接して頂いて・・・、こんなにお慕いしていましたのに・・・」
ベティさんがアーネさんに縋り付いて泣いている。
「お嬢様・・・、ロリアーネ様の事を慕っているのなら、ここは笑ってご結婚を祝福してあげるものですぜ」
スキンヘッドの大男サムソンさんがベティさんを慰める。
やっぱり、いい人じゃん。
「あ、あの~」
ベティさん以外の女の子達がおずおずと声を掛けて来た。
「発表会で単位を頂けないと、私達、進級が厳しいのですが・・・」
どうやら、彼女たちはアーネさんの結婚とかはあまり気にしていなくて、ただ、ベティさんに付いてきているだけのようだった。
そんな事より単位の方が気になるらしい。
「と言っても、どのみち、この冷蔵庫、壊れてて発表会には出せないと思うんだけど」
ユキがそう言う。
「そうなんですか?ユキさん」
アーネさんが聞き返す。
「うん、私も手伝って、何度か試運転して上手くいってたんだけど、一度出力を上げようとして壊れたのが最後で、それ以降そのままになってるんだ」
ユキがそう言ったのを聞いて、アーネさんは少し考え込む。
「ユキさん、これの作動原理を理解しているのですか?」
「え?まあ、一応は・・・」
「これを修理することは出来ますか?」
「あ~、材料さえあればなんとかなるんだけど、ちょっとお金がかかるかな?あとは明後日までとなると人手が要るかな」
それを聞いて、アーネさんは一つ頷いた。
「分かりました、あなた達、ユキさんから習ってこれを修理しなさい」
ベティさんとその友達たちにそう言う。
「材料費は私が出します。その代わり、バーリン先生の遺作であることはきちんと言う事、作動原理をきちんと理解する事を条件に単位を貰えるようにしましょう」
その言葉に、女の子達は安堵の表情を浮かべる。
「ユキさん、申し訳ありませんがこの人達に指導していただけませんか?」
「いいけど、一年も居ないで中退した私が先輩たちに指導とかいいのかな?」
「構いません、バーリン先生の理論を理解できるだけで指導教官並みの実力です。発表会でそれを証明できれば復学することも可能でしょう」
「いやあ、魔法学院はもういいかな、てんこちゃん達と一緒に行くって決めちゃったし」
ユキはそう言って、私達の方を見た。
「そうですか。てんこさん、リーナさん、カレンさん、もう少しの間だけですが、ユキさんをお借りしてもよろしいですか?」
アーネさんが私達に聞いてくる。
「ユキがいいならそれでいいです」「分かった」「何なら私らも手伝ってもいいよ」
私達はそう答える。
ユキが床に座り込んでいるベティさんの前に来た。
「あんたもやるんでしょ、アーネ先生は今年いっぱいしか居ないみたいだけど、その間に少しでもいいとこ見せなきゃ」
そう言って、手を差し出す。
「ああ、ユキさん、あなたも優しくて、そして小さくて可愛らしい!」
その手を取って、ベティさんがそう言う。
危ないものを感じたのかユキはすぐさま手を引っ込めた。
このひと単にちっちゃい子好きなのか。




