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春日部てんこの異世界器用貧乏  作者: O.K.Applefield
4章
47/215

4-13


 西地区から戻って、ユキのお店に行ったら、ユキは居なかった。

「ほんのちょっと前なんだけど、五人くらいの娘さんの集まりが来て、あの子を連れて行ったのよ」

 お店のおばちゃんがそう言った。

「え?どういうことですか?」

 私が聞き返す。

「もしかして、誘拐?」

 リーナが慌てだす。

「いや、別に無理矢理じゃなかったわよ、あの子も渋々だったけど自分で付いて行ったみたいだし」

「相手は誰か分かりますか?」

 カレンがそう聞く。

「なんか、リーダーっぽい女の子はローゼス商会の名前を出していたわね。あと女の子たちはみんな魔法学院の生徒っぽかったかしら」

 ローゼス商会って、確か今朝会ったベティさんのお家だったような。

 と言うか、学生っぽい女の子の集団と言えば、彼女たちが真っ先に思い浮かぶ。

 どういう事だろう?

 アーネさん関係での嫌がらせ?

 としても、ユキとの直接的接点が思い当たらない。

 私達三人がエドガーさん側の人間だと思われていたとしても、ユキと私達が知り合いだといつどこで知ったのか?

 いろんな疑問が頭に浮かぶ。

「どうしよう、ケーサツとかなんかこの世界のそうゆうのに言った方がいいのかな?」

 リーナがワタワタし始める。

「落ち着いて、誘拐とかじゃないみたいだから、そう言う所は動いてくれないと思うよ。まずはアーネさんに相談した方が・・・、ああ、でも、何処に連れて行かれたのか確認が先か?ローゼス商会って何処だ?」

 リーナにそう言うカレンだが、彼女も同じようにワタワタしている。

 私は、何となく周囲を見回していた。

 特に意味のない行動だけど、焦る時ほど視野を広くしようとするのが私クセだ。

 お店の奥の方に何か違和感を感じた。

 庶民向けの食堂に似つかわしくない人物が一人、奥のテーブルに座っていて、私に向かって手招きしていた。

「エリシアさん?なんでこんな所に?」

 エドガーさんのお母さんのエリシアさんだった。

「みなさん、とりあえずこちらにお座りになって」

 私達にそう呼びかけてきた。

 他にどうしようもないので、言われるままに私達は席に着く。

「何から話しましょうか・・・」

 私達がかけうどんを頼んだ後、エリシアさんが話し始めた。

「実は先程の出来事、私最初から見ておりましてね。私の方には気づかなかったようですが、ローゼス商会の末娘さんは見知っておりましたし、多分あの連れて行かれた方が皆さんのお友達のユキさんなのでしょうね。少しばかり気にかかったので、執事のキースに彼女たちの後を付けるようにお願いしてありますの」

 そう話してくれた。

「あと、彼女たちがアーネさんの教え子だと言うのも知っておりましたので、メイドのアンジェにアーネさんにお知らせする様にも頼んでありますわ」

 なんて、手回しの良い人だろう。

「ところで、なんでこの店に居るんですか?」

「皆さんのお話を聞いたら、その噂のスープパスタが食べたくなったのですわ」

 それで、執事とメイドを連れてやって来たのか。

「とてもおいしゅうございましたわ。ところでこのお店、食後のお茶は出ないのかしら?」

 エリシアさんはのほほんと、そう言った。


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