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春日部てんこの異世界器用貧乏  作者: O.K.Applefield
4章
46/215

4-12


 その後、学院の中を色々案内してもらい、お昼の少し前に私達は学院を後にした。

 アーネさんは午後から授業が有るそうなので、私達三人だけで学院の門をくぐり外へ出る。

「お昼ご飯どうする?」

 私がそう聞く。

「午後は西地区の大聖堂を見に行く予定でしょ。そっちの方で食べようか?」

 リーナがそう答える。

「私としてはユキちゃんのうどんがまた食べたいかな」

 カレンはそう言った。

「それも捨てがたいな、そうだな、先に西地区で食事と観光をして、戻って来てからおやつ代わりにかけうどんってのはどうかな?」

 私の提案に、二人は賛成してくれた。


 大聖堂は中々の大きさだった。

 聖堂自体も大きいが、広い敷地内には幾つもの神々の像が建てられていた。

 七つの魔法に相当する神の像の他にも、農業の神、戦の神、商売の神などの像が有った。

 どうやら、この国と言うか、この国を含めた周辺諸国の宗教はある種の多神教の様だ。

 この世界の常識の範疇なので脳内神様が説明してくれた所によると、話は千年前に遡ると言う。


 千年前、この大陸には幾つもの国が有り、その国々は皆その国特有の神を崇める一神教であり、国王が神の代理として君臨していた。

 しかし、ある国の一人の農民が王に対して反旗を翻した。

 神の名を使い圧政を行う王に反感を覚えた彼は仲間を募り反乱を起こし、やがて王を倒した。

 ここまでなら、それ以前の歴史にも度々有った事なのだが、その先が前代未聞だった。

 普通、王を倒したものは新たな王になり、それまでの神か、または新しい神を造りだしその代理人を名乗っていたのだが、彼はいかなる神も信仰しなかった。

 神の名をかたり人々を苦しめる王を嫌っていたからである。

 その神を抱かぬ新王の誕生に、周辺の国々の王は恐怖した。

 自分たちの神の名を使った国の支配に疑問を持つ者が自国の中にも現れかねないからである。

 普段はいがみ合っていた国々がこの時は団結して、彼の国に攻め込んだ。

 だが彼は十倍以上の軍勢に臆することなく立ち向かい、各国内の反王派と協力して、次々とこれらを撃破していった。

 倒した敵の王や王族の神官を名乗るものは全て首を切っていき、やがて彼は『神殺しの魔王』と呼ばれるようになる。

 そして、この大陸にある神の名を冠する国は全て滅ぼされ、彼は大陸を統一し、史上初の皇帝となった。

 しかし、彼は配下の王侯が神の代理を名乗ることは禁じたが、宗教自体は禁じなかった。

 その為、各国が崇めていた神と宗教は分離集合を繰り返し、多数の神を祀る多神教として再編されていったのである。

 彼の帝国は三代で、百年と経たずに分裂崩壊してしまい、その後大陸が統一されることは無かった。

 それでも、神の名による支配に対する忌避感は残り続け、宗教は有るものの、その影響力はこの大陸ではあまり大きくない。


「だから、この大聖堂も厳粛な感じっていうより、なんかテーマパークみたいな感じなんだ」

 入り口で入場料を払って私達は中を見学している。

 壁や天井の宗教画は荘厳だけどなんか派手で、『お金払った分は楽しませてあげまっせ』と言う感じの商売っ気を感じる。

 見返りを求めない信仰心によって成り立っていると言うより、見返りをちゃんと用意するから信仰してくれと言うのがこの宗教の特徴みたいだ。

「完全に観光地だね」

「そりゃ、有神派と無神派の対立も緩い感じなわけだ」 

 一通り見て回って、大聖堂を出る。

 施設の周辺も、お土産物屋や食べ物の屋台でいっぱいだった。


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