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ユキの話を聞いて、リーナとカレンは少し暗い雰囲気になった。
二人もこっちに来てから色々あったから、自分の事と重ね合わせているのだろう。
がしかし、ユキ本人は割とあっけらかんとしている。
私は他二人より彼女と親しかったこともあるので、それが無理をして明るく振舞っている訳ではないと分かる。
元々こう言うサバサバした性格だった。
「あ、うどん美味しかったよ。あれ、自分で開発したの?」
雰囲気を変えるために、私はそう聞いた。
「ありがと、色々試行錯誤して大変だったわ。最初はラーメンを作ろうとしたんだけど、かん水が手に入らなくて挫折したんだよね」
かん水って、確か中華麺を作るときに必要な材料だったっけ。
私もユキも漫画や小説からそう言う雑学的な知識を得るのが好きだった。
そんな漫画の知識で何とかなるのかと思うかもしれないが、日本の料理系漫画って荒唐無稽なのもあるが、ちゃんとリアルなのもあるから参考にはなる。
もちろん実際に試行錯誤するのは必要だが。
「うどんに変更した後も出汁作りには苦労したな。でもその甲斐あって割と繁盛してて、おっちゃんとおばちゃんに恩を返せてる」
「でも、よく急に働き始めた君にメニューの開発なんかさせてくれたね」
私がそう聞く。
「それが、魔法学院を辞めるときに心配してくれた先生が私の料理の腕を知っててね、この店に紹介してくれたんだ」
「へえ、良かったじゃん」
「その先生、貴族のお嬢様らしいんだけど、割とこういう庶民の店で食事をするのが好きなんだ。ここ学院の近くでね、たまにその先生も食べに来るんだよ」
ん?貴族のお嬢様?
「もしかして、その先生って、ロリアーネさんとか言わない?」
私の言葉にユキはびっくりする。
「え?なんでちびっこ先生・・・じゃないや、アーネ先生の事知ってるの?」
やっぱりか。
どうやらアーネさんは魔法学院の卒業生であり、今は母校で非常勤の講師をしているらしい。
このお店、伯爵令嬢が勧めるお店としてはちょっと庶民的かなと思ったが、元教え子が働いているから売り上げに貢献しようと言う考えもあったのか。
もちろん、王都でも珍しくて美味しいからと言うのもあるだろう。
なんか、色々繋がってしまったみたいだ。
その後、私達三人のこれまでの事とかも話した。
「そんな訳で、これから私の山小屋に三人で暮らすことになったんだけど、良かったらユキも一緒にどう?」
私はそう誘ってみた。
彼女も一応ここでの生活基盤が出来ているが、あまり望んだ結果と言う訳では無さそうなので、誘ってみるのもありだろう。
こうなったら、三人が四人に増えるくらい良いか。
「分かった。一緒に行くよ」
ユキはあっさりとそう答えた。
「うどんの作り方はお店のおっちゃんとおばちゃんには大体教えてあるから、私が居なくても何とかなるだろうし。そうだな、三日もあれば細かい事とかも全部教えれるかな。それまでみんなは王都の観光でもしているといいよ」
という事で、三日後にユキを迎えに来る約束をして、私達はお店を後にした。




