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春日部てんこの異世界器用貧乏  作者: O.K.Applefield
4章
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4-6


 席が空いたので座り、注文する。

 私はかき揚げ入りスープパスタ、リーナは卵入りスープパスタ、カレンは両方入りを頼んだ。

 お店のおばちゃんが運んできてくれたそれを、フォークとスプーンで食べてみる。

 食べてみたら、ほぼうどんだった。

 麺は少し柔らかめだが、ちゃんとある程度のコシがある。

 スープはこの世界には鰹節は無いだろうから煮干しと、昆布かそれに似た海草で出汁を取っていた。

 内陸にあるこの国だが、流石に王都ともなれば海産物も入って来ているか。

 それとシイタケではないが、乾燥させた何かのキノコも使っているか。

 醤油も無いのであっさりした塩味だが、しっかりとした出汁が出ているので十分和風の味がする。

 動物性の旨味成分イノシン酸と植物性のグルタミン酸が合わさると旨味が何倍にもなることを分かっている人が作ったスープだ。

 あとは甘みを出すためにじっくりと煮込んだ玉ねぎが入っている。

 元の世界のうどんとはちょっと違うが、明らかにうどんと言うものを知っていて、それをこの世界で再現したような料理だ。

 かき揚げもエビこそ入っていないが、細切りにした野菜が数種類サクサクに揚げられていて美味しい。

 卵は衛生的な問題なのか、生や半熟ではなく固茹での茹で卵だった。

「どう思う?」

 一気に食べ終わって、私は二人に聞いた。

「どう思うかって?これを作った人の事?」

 同じく食べ終わったカレンが聞き返す。

「そう。どう見ても私達と同じ転生者が関わってるよね」

 カレンと、まだ食べている途中のリーナがうなずく。

 私は隣のテーブルで食器を片付けているおばちゃんに声を掛けた。

「あの、すいません、この料理を作った人に会わせてもらいたいんですが」

 その言葉におばちゃんは少し警戒したような顔をした。

 しまった。お店の味を盗みに来た人のように思われたか?

「えーとね、この料理、私達の故郷の料理にすごく似ているから、もしかしたら同郷の人が居るかもって思ったんです」

 うどんを啜りながら、リーナがそうフォローしてくれた。

「あら、そうかい?それなら、ちょっと待ちな」

 そう言って、おばちゃんが店の奥、厨房の方に入って行った。

「ここはやっぱり、『シェフを呼べ!』って言うべきだったかな?」

 リーナがそう軽口を叩く。

 暫くして、厨房から一人の女の子が出てきた。

 なんとなく、そんな気はしていた。

「ユキちゃん!」

 私がそう呼ぶと、彼女も私の事に気付く。

「もしかして、てんこちゃん?それに、えーと夏木さんに秋元さん?」

 他二人とは違い、彼女は一目で私の事を言い当ててくれた。

 元のクラスメイトで数少ない私が親しかった子、冬野由紀だった。

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