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私達はエドガーさんの実家と言うか、王都でのお屋敷に泊めて貰う事になった。
あんまり実感が湧かないけれど彼は一応貴族なのだ。
領地が有って、そこにもお屋敷が有るらしい。
そっちの方は今、彼のお父さんとお兄さんがいるそうだ。
お父さんとお兄さんが今回の戦争に参加していないのは、彼等の領地がワーリン王国側とは反対側の別の国との国境付近にあってそこを留守にできないかららしい。
貴族とか領主とか大変そうだ。
とは言え、今回払ってくれた報酬とかからすると結構儲けているのかもしれない。
それなりに綺麗な客室に通された。
同格の貴族とかを泊める用の部屋ではないが、そういう人が来た時にそのお付きの人とかを泊める用の部屋だろう。
一つ余るがベッドが四つとそこそこの家具が置いてある。
別に私達なんかこの程度の部屋でいいだろうと思っているんじゃなくて、私達が必要以上に恐縮しない様に選んでくれたのだと思う。
確かに、この方が落ち着く。
私達は荷物を部屋の隅に置いて、ベッドに腰掛けて緊張から解放されていた。
「びっくりしたな、婚約者のロリアーネさんが『あんな人』だったなんて」
カレンがそう言った。
「そうそう、もしかしてエドさんて、ロリコン?」
リーナが相槌を打ち、みんなが当然思った疑問を口にする。
「違うんじゃないかな、彼より年上で確か24歳とか言ってたっけ・・・」
私がそう言う。
ちなみにエドガーさんは21歳だそうだ。
「いや、年齢はともかく、見た目がさ・・・」
なおもリーナがそう言う。
確かに、エドガーさんと彼女が一緒にいる所を想像するとアレな感じだ。
だが、暫く一緒に居た感じ、彼にはそんな変態的な所がある様には見えなかった。
別に小さい娘が好きだからロリアーネさんが好きなんじゃなくて、純粋に彼女の事が好きだから容姿的な事にも盲目的になっているんだと思う。
いや、そう思いたい。
色々考えていると、部屋のドアがノックされる音がした。
返事をすると、メイドさんがドアを開け、
「昼食のお時間ですが、どうなさいますか?」
そう聞いてきた。
お昼にはちょっと早いが、エリシアさんが気を利かせて、ここで食べてもいいが、街に出て観光がてら外食してもいいと言っているらしい。
「そうだな、外で食べようか?」
私がそう提案すると、他の二人も賛成した。
懐も温かくなっているし、なにか王都の珍しいものでも食べてみたい。
私達三人は貴族街を出て、庶民の繁華街のような所にやって来た。
流石に王都だけあって、トーラの街よりも大きくて人も多い。
あちこちから美味しそうな匂いがしてきている。
「ええと、アーネさんお勧めの店ってあれかな?」
お屋敷を出るときにロリアーネさんが外食するならと勧めてくれた店が繁華街の外れの方にあった。
彼女もエドガーさんの話を聞きたいから、夕食時にはまたお屋敷に来ると言っていた。
ともかく、そのお店に入ってみる。
結構流行っているのか、それほど広くないお店は満員状態で少し待つことになる。
待っている間、他のお客さんが食べている料理をちらりと見てみるが、
「ねえ、スープパスタのお店って聞いてたけど・・・」
リーナがそう言う。
「そうだな、これってどう見ても・・・」
カレンも同じ意見みたいだ。
「うどんだ、これ!」
そう、それはまぎれもなく『うどん』だった。
懐かしい出汁の匂いが店中に漂っている。




